中国高官らのスパイ事件、ネット流出 原子力元トップや元駐韓大使も

2011/09/02
更新: 2011/09/02

【大紀元日本9月2日】中国の高官8人が近年、米国や日本などの情報機構に買収され、機密情報を提供していたという一連のスパイ事件の情報がインターネットに流出した。その8人の中には、元駐韓国大使や中国原子力工業グループの元トップも含まれる。

一連のスパイ情報が流出したきっかけは、中国国防大学教授の金一南少将が今年3月に地方幹部向けに行った講演内容にある。「苦難輝煌」と題するこの講演の中で、金氏は過去に起きた8件のスパイ事件についてスライドを使って詳しく解説した。その時の映像がユーチューブなどに投稿され、国際社会から注目を集めている。

多くのスパイ事件の背景について、金氏は「共産党内部ではカネと権力以外、信条や信仰がない」と指摘し、「このような裏切りは共産党建党当時から頻発しており、今も変わらず広範囲に存在する」と断言した。その事例として、8人の高官によるスパイ事件の解説を行った。

 康日新・原子力工業グループの元トップ

名前が挙がった8人の中の1人は、2009年まで中国原子力工業グループの元総経理兼党委書記を務めていた康日新。2010年11月には康は収賄の罪で無期懲役を言い渡されたが、金氏の話によると、康は経済犯罪よりも遥かに厳重な罪がある。それは原子力工業グループのトップという立場を利用し、外国に中国の原子力工業の機密情報を提供していたことだという。

「康の案件が発覚してから、政府は神経をとがらせ、内部を全面精査するよう指示した」と金氏は明かし、「経済損失よりも機密漏えいのほうがよっぽど致命的だったが、対外的には経済犯罪としか言えない」と述べた。

康氏は2006年に「ビジネス機密」をフランスとアメリカの原子力企業に漏えいさせた。この事件が発覚したのは2009年で、同年8月7日付けの国内紙・重慶時報によると、絡んだ金額は18億元(約220億円)に上ると伝えられている。

李濱・元駐韓国大使

2001年から駐韓国大使を務め、さらに2005年には外交部アジア局副局長に昇進した李濱は、ソウル駐在当時に韓国の情報機関に買収され、中国に帰国した後も韓国に情報を提供しつづけていた。北朝鮮の核開発をめぐる6者協議において、中国の戦略的利益が大きく損なわれた、と金氏は指摘する。

李濱は北朝鮮の金正日大学を卒業しており、金正日総書記と個人的な親交があったという。2006年1月に金総書記訪中した際、李は同行したが、その時の金総書記の詳しい日程はすべて韓国と日本のメディアに掌握されていた。同年12月、李は北京当局に逮捕され取り調べを受けることになった。

しかしながら当局は「面目を保つ」ため、経済犯罪の名目で7年の懲役刑に止まった。「世界中を見渡しても、他国のスパイになる大使がほかのどこにいるのか」と金氏は批判した。

 蔡小洪・中央駐香港連絡弁公室の元理事長

中央駐香港連絡弁公室の蔡小洪・元理事長は、2003年までの10年以上の間、イギリスに機密情報を提供していた。1980年代、香港の主権問題で中英が交渉していた際、中国は内部にスパイがいるのではないかと疑っていたが、見つけ出すことはできなかったという。

蔡の父親は中国司法部(日本の法務省にあたる)の元部長の蔡誠氏で、かつて周恩来のもとで国民党内部に潜入しスパイ活動を行っていた。「数十年前に共産党のために働くスパイの息子は、今度は他人のスパイになっている。こんなにも変化が速いのか」と金氏は嘆いた。

 童達寧・社会保険基金会弁公庁の元主任

社会保険基金会弁公庁の童達寧・元主任は、台湾に、人民元の為替レートの変動を含む重大な情報を提供し、「台湾に2000億台湾ドル(約5300億円)の損失を免れさせた」と金氏は述べた。童はそれにより25万ドルの報酬を手に入れたといわれ、2006年には童は死刑判決を受け、執行されている。

 徐俊平・大佐 国防部(省)元米州局長

「軍部からも問題が出ている」。金氏は、国防部(日本の防衛省にあたる)元米州局長の徐俊平・大佐が米国に亡命したことを紹介した。徐は長年、中国の軍部トップらの外遊に同行し、彼らのことを熟知していたという。「徐俊平が米国に提供した情報は、ミサイルの数や技術関連の情報ではなく、われわれの指導部の性格や意思決定のスタイルといった情報だった。これらは何よりも致命的な情報となる」と金氏は述べた。

徐は2000年12月に米国を訪問した時に亡命。彼の亡命を受け、中国の軍部は対米機密の漏えいを危惧し、その後、軍部の情報機関に携わる人員の整理を行ったと伝えられている。

 王慶簡・大佐 在日大使館で軍の渉外担当

日本絡みのものもある。在日中国大使館で軍の渉外担当をしていた王慶簡・大佐は2007年に国家機密漏えいの罪で執行猶予付きの死刑を言い渡されていた。金氏によれば、王は在任中、駐在武官の執務室に盗聴器を仕掛け、定期的に大使館の窓を開けて日本が監視装置を使ってのぞけるようにしていた。

この他にも、空軍雑誌社の賈世慶・元副社長は、機密情報を記録したUSBメモリを体内に入れ、香港に提供していた。中国社会科学院の公共政策研究センターの副主任を務める陸建華は、5カ国に機密情報を漏えいしたため、20年の懲役刑に服している。陸はかつて「肌着でも1万元以下のものを着ない」と豪語していたという。

講演を行った金一南少将は、中国国防大学の戦略研究所で所長を務める人物。同講演動画は中国国内の動画サイトでも公開されていたが、すでに削除されている。「金少将は何らかの責任を負われることになるだろう」と香港の軍事評論家・馬鼎盛氏は見ている。

 (翻訳編集・張凛音)