【大紀元日本7月16日】1950年代末、数千万人に上る餓死者を出したとされる中国の「大躍進運動」。その真相を記した著作『MAO’S GREAT FAMINE』(毛の大飢餓)がこのほど、優れたノンフィクション文学に授与される賞として権威ある英国のサミュエル・ジョンソン文学賞を受賞した。
同書の著者は、オランダ人の歴史学者フランク・ディコター(Frank Dikotter)氏。長年、中国史を研究している同氏は、現在、香港大学で歴史学を教える教授であり、同大学人文学院の院長を務めている。
英国での授賞式に参加した後、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材に応じた同氏は、大躍進運動で餓死した中国人は4500万人を超えており、これは第二次世界大戦での各国の死亡者総数に匹敵するとした上で、「これは毛沢東が招いた最大の人災である」と述べた。
同書は、今年9月に中国語の翻訳版が出版される予定。その中国語版の出版者である香港の新世紀出版社の鮑朴氏によると、著者のディコター氏は、大躍進運動の情報を収集するため中国の中央政府や各地方政府の内部資料を調べたり(これらの資料は一時公開されていた時期があるが現在は非公開)、同時期の中国社会の状況を徹底的に調査・研究したという。
鮑朴氏は同書について、歴史的事実に基いた著述だとして高く評価するとともに、「多くの中国人、特に当時を知らない中年以下の世代にとって、自国の歴史を知る上で貴重な資料になるだろう」と述べた。
大躍進運動とは、1958年から60年にかけて、中国共産党を率いる毛沢東が発動した全国規模の政治運動である。その内容は、農業および工業の大増産運動であり、「総力を挙げて鉄鋼を精錬する」「英国を超え、米国に追いつく」とのスローガンを掲げ、数年間で米英を経済的に追い越すと吹聴した。しかし、それは現状を顧みない極めて無謀な政策であったため、農地は荒廃し、農村経済を大混乱に陥らせた結果、深刻な食糧不足をもたらして膨大な数の餓死者を出した。
中国政府の公式見解は、大躍進運動で餓死した国民は1千万人だとしている。しかし、その関連情報の多くは公開されていないため、国内外の研究者の間では、餓死者数について1千万人から5千万人までと様々な見解がある。
鮑朴氏は、「ディコター氏の出した4500万人という餓死者数については、まだ議論の余地があるだろう。しかし、少なくとも同氏の研究成果が、この領域に切り込む第一歩になったことは間違いない」と述べた。
鮑朴氏の父親は、故・趙紫陽総書記の元秘書であった鮑彤氏である。1989年の六・四天安門事件の後、民主化を求めた学生らに同情した趙紫陽氏は失脚。趙氏の秘書でありブレーンであった鮑彤氏も7年間投獄されている。
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