【大紀元日本7月9日】死亡が報じられてから18時間経って、「権威筋」の否定により江沢民・中国前国家主席が「生き返った」。84歳の老人の生死をここまで神秘化させる中国当局に、世界のメディアが困惑し、「ブラックボックス政治」への批判が高まっている。中でも江沢民の「訃報」を報じた香港では大手新聞社各社が評論を出している。
明報:噂の否定にいろいろなメッセージ
記事は情報筋の話として、現職あるいは引退した指導者の健康状態についての海外メディアの報道に対して、中国政府は反応しないことが多いと指摘。しかし、今回香港ATVが報じた江沢民の「死」の情報は瞬く間に世界に広がり、中国政府としてなんらかの形で「噂」に対応しなければならなくなった。その中国政府がとった措置は英文報道で否定声明を出すことだった。これにより海外で広まる「噂」の収束がはかられる。また、香港中国通信社(中通社)を通じてATVへの抗議文書を流したのは、香港メディアをけん制するためであり、「ATVを真似するな」という警告の意思が窺えるという。一方、国内では「噂」さえ知らない人が多いことから、国内向けメディアや通信社はいっさい江沢民に触れないことにしており、中国外務省の記者会見でも「新華社がすでに報じた通りだ」と言葉を濁した。
記事は、噂への否定声明は、江の健康状態に言及しなかったことと「訃報」との間に18時間のタイムラグがあったことに注目した。「もし江沢民の健康状態に重大な問題がなければ、もっと早く、もっと詳しく否定していただろう」と分析した。
東方日報:死亡のルール
記事では毛沢東や_deng_小平といった中国の前指導者らが死亡した時の様子を紹介した。
毛沢東の死亡時間は1976年9月9日深夜0時10分。それについての公式発表は16時間後に行われた。毛沢東が死亡後も、原稿準備や政局の調整など、すべてを手配してからの発表だった。
また、_deng_小平が死亡したのは1997年2月19日夜9時8分だったが、新華社が死亡発表したのは5時間半後のことだった。
「死は多くの人にとって天意であるのに対し、国情が他国と永遠に違う中国では、死は人間の意思で操作されている」と記事は批判した。
「ATVが本当に嘘を言ったのか」。記事はこうつづく。「一党独裁体制のもとで、死亡『計画』が立てられるまでは、むやみに言わせない。違反者は国家機密を漏えいしたことになる」
「指導者の健康状況に関心があるのか?なら辛抱強くお上が準備し終わるまで待とう」と記事は揶揄した。
明報:ブラックボックスにする限り、国の運営は「正常」ではない
明報8日の社説では、江沢民の生死へのさまざまな憶測は本来は避けられるものだと主張した。当局は平常心で指導者の生老病死に対処し、ブラックボックスをオープンにすれば、国や社会は複雑な事態に陥ることなく、正常な運営を保つことができると指摘した。
社説では、中国政府が指導者の健康と生死を国家機密にすることは昔から変わっていないと批判。同紙の他の評論は、中国政情に精通する人の話として、中国の指導者の健康と生死は個人の問題ではないと指摘し、本人や親族にさえ決定権がなく、「すべて党の命令に従わなければならない」という。江沢民のような国家主席級の指導者の場合は、脳死や心肺停止などの状況に陥っても、生命維持装置によってしばらく「生存」させ、親族や共産党政治局の高官との最後の対面を果たさせる。さらに訃報に書き入れる党と国家への功績についての文言を慎重に「推敲」し、葬儀の準備も進める。すべてが整ってから「懸命な救命もむなしく」、と死の公式宣言を行うという。
引退して6年も経つ前指導者にこれだけの注目が集まるのは、彼がいまだ人事に発言権を持ち、彼の生死で中央の人事までも変化しかねないという中国のブラックボックス的な「人治政治」に起因するのだろう。政治局の9人の常務委員のうち、胡錦涛と温家宝以外、全員が江派とも言われる。18時間経っても江沢民を「生き返らせる」謎はこれと関連するだろうが、その内幕は中南海にしか分からない。