危険すぎる建党記念映画 学生運動や暴動シーン 「いつ禁止か」と笑いものに

2011/06/21
更新: 2011/06/21

【大紀元日本6月21日】「打倒独裁、民主主義を人民に戻せ」と叫びながら、学生らがデモ行進し、暴動や流血があった。これは今中国各地で多発する抗議活動の光景ではなく、現在公開中の建党90周年を記念する国策映画『建党偉業』のワンシーンである。国民党による一党独裁を終息させた共産党の建党を謳いあげるはずの映画だったが、予期せず今の中国社会を反映した危険すぎる作品となった。予告編にある大量の学生運動のシーンがカットされ、本篇も「いつ上演禁止となるか」と、そのゆくえは早くも人々の気がかりとなった。

三つの禁じ手

1911年の辛亥革命から1921年の中国共産党建党までの10年間を描き、アンディ・ラウやチョウ・ユンファなど、108人にも上る人気俳優が勢ぞろいする大作で、予想興行収入は100億円と大見得を切っている。中国ではこういったプロパガンダ映画の場合、党員かどうかを問わず、入場券はほとんど職場から配られるため、100億円は不可能ではない。さらに保険をかけるかのように、中国日報など政府系メディアは、予定の興行収入に達するまで、「ハリー・ポッター」や「トランスフォーマー」などの人気外国映画の上映を延期させると報じた。

党への不満が高まる今、共産党賛美の映画は市民の受けが良くない。少しでも客足を伸ばそうと、毛沢東の初恋を取り入れるなど観客の興味に迎合する工夫も見られる。しかし、「俺のおじいさんがこんな女を好きになるわけがない」として、毛沢東の孫・毛新宇が初恋の相手を演じた女優が気に入らないという理由で、カットされたという。

現在放送中でやはり建党90周年の記念ドラマ「中国1921」で、毛沢東の妻である楊開慧は「結婚しよう。あなたの子供を生みたいの」と逆プロポーズしたシーンがあった。

人民日報傘下の環球時報はある中年女性の感想として、「革命の同志でもあるカップルの間で交わされるこの会話に耐えられない。私が今でさえ口にできないようなせりふを、あの時代の人が本当に平気で言ったのか疑問だ」という声を載せ、プロバガンダ映画のやりすぎた人工操作を異例に批判した。

米オンライン紙、クリスチャン・サイエンス・モニターのピーター記者は、この報道は中国にも言論の自由があることを証明するためのものか、それとも誤って管制を敷いた報道方針から逸れてしまったのかが分からないと評した。

人気俳優の大量起用、競争相手の排除、内容のアレンジ、この三つの禁じ手を駆使すれば、どの映画も興行収入上位の作品になる。

歴史なのか、現代社会なのか

しかし、国策映画を成功させるために障害物を一掃している最中に、中国人民銀行の公式サイトで6月14日、90年代半ば以降、1万8千人が10兆円近くの資産を海外に持ち逃げしているとの報告書が掲載された。党の偉業を称えるこの時期に公開された同報告書で当局の顔は丸潰れとなった。新華社通信は事実無根と批判し、3日後に報告書は取り下げられた。

さらに、映画が公開された6月は、中国各地で大規模な暴動が相次ぎ、政府の建物を狙う爆発事件など過激な事件も起きている。「一党独裁、自由がない、専制政権」、今の中国はまさに90年前の中国の再現と言っても過言ではない。

大量の学生運動のシーンが盛り込まれた予告編は一時上映が取りやめられ、再公開されたものからは学生運動のシーンが削除された。

時事評論家の楊恒均氏は自身のツイッターで「この映画は歴史の分からない五毛党に密告され、上映中止に追い込まれてしまうのではないだろうか。一党独裁政権下で、秘密結社した人は市民運動を行い、武力闘争を繰り広げたという内容だが、政府にとって耳障りな言葉ばかりだから」と揶揄した。

1949年以前、中国人の心を掴むため、共産党は、民主主義や自由、クリーン政治という建前を掲げ、国民党から政権を奪った。しかし、今の中国は当時の中国よりも自由がなく、共産党政権では国民党政権時代より腐敗がはびこっていると嘆く人が多い。

共産党の建党は偉業なのかそれとも罪業なのか、中国本土で議論され得ないこの命題は、海外では今でもホットな話題である。

「北京之春」の編集長で民主運動活動家の胡平氏は、次のように共産党を評した。

「革命を旗印に暴力で私有財産を公物化した共産党は今、改革を旗印に暴力で国の財産を私物化にしている。共産党はこの相反する二つの悪事を働いた」

しかし、意外なことに、映画を見に行きたいという書き込みもネットで見られる。

「もうすぐ映画の中の共産党員とともに“打倒独裁、民主主義を人民に返せ”をシュプレヒコールできると思うと、興奮して眠れない」

「予告編を見て、結党の衝動に駆られる」

「全員これを見て、どのように腐敗と戦うかを映画から学ぶべきだ」

(翻訳編集・高遠)