【大紀元日本6月2日】中国当局は最近、北京の大学生への思想教育とコントロールを強化し、専門機関を立ち上げて学生間の監視、当局への密告を推し進めている。「文化大革命に逆戻りしている」との声が寄せられている。ドイツ有力紙フランクフルタールントシャウが5月25日に伝えた。
「当局は大学生に情報の密告を要求している。北京市の大学生たちには同級生の名前が載った表が配布される。そして、個々の言動を採点する欄に評価コメントを記入しなければならない。大学側が把握したいのは、だれの愛国心と共産党への忠誠心が強いのか、だれがいつも社会を批判しているのか」
ある25歳の女子学生は同紙の取材で、「私たちはこのやり方に非常に驚いている」と語った。「同級生に悪いコメントを書かれてしまうと、深刻な結果を招く。いまの状況はまるで『文化大革命』の時代に逆戻りしたようだ」と洩らした彼女は、同級生の前で怖くてこのようなことを言えない、密告されてしまうからだという。
また、同報道は、「いま多くの(中国の)大学生は、極左時代の洗脳を受けているという。大学側は最近、イデオロギー教育をさらに強化し、共産党の路線から外れないよう強く警告している。中東地区のような大規模な民主活動を警戒しているのは明らかだ」と記した。
同報道によると、大学生も教師も、校内の雰囲気が著しく悪化したと感じている。学校側は専門の部署を設立して、体制への不満をもらす人を割り出して、歩調の一致を命じる。中国の大学に長年勤めてきたある外国人教授は、「以前は公で多くの話題を論ずるのはある程度できていたが、最近では、政治的に敏感なテーマに触れると、大学生らは非常に警戒する反応をみせている」と話した。
「多くの教室には堂々と監視用のカメラと音声マイクが設置されている。盗難対策だと学校は説明しているが、ほとんどの人はこの理由を信じていない」。
ある講師はフランクフルタールントシャウ紙に次のような事例を証言した。それによると、同講師の教え子は論文で、中国と欧米のメディアの報道の質について、批判的な比較を行った。「とても優秀な論文だが、幹部に知られてしまったため、問責会議が召集されて、採点を下げることになった」という。
同報道によれば、北京市はいま専門機関を立ち上げて、特別対象とされる大学生を事情聴取している。当局からの通達によれば、事情聴取を受ける特別対象には、「極端な思想」を持つ人や、「特別な立ち居振る舞い、個人行動を取る」人、ネット中毒者も含まれている。ネット上では、この通達は、自由な思考を禁止し、現代の知識社会へのまい進を阻止する行為だ、と怒りの声が殺到した。
同報道はシンガポール国立大学東アジア研究所の所長、中国人政治学者・鄭永年氏の見解も引用した。「批評的な意見への対応はますます厳しくなっている。中国当局の記憶に新しいのは、1989年春に発生した大規模な学生民主運動『天安門事件』である。それは、政治体制に対する最も直近の強力な挑戦だった」
中国の若い世代はインターネットから情報を収集しているが、これらの情報はまさに中国当局が国民に知られたくないものである、と同報道は綴った。
鄭永年氏は同紙のインタビューで、「外部からは、中国の経済は繁栄しているように見える。しかし、内部から観察してみると、中国は多くの問題を抱えている。所得格差が急速に拡大し続け、失業率は上昇する一方だ。特に新卒大学生の就職難問題は深刻である。社会の公平さの欠如は大きな問題であり、中東地区と同様だ。だからこそ、中国の潜在的な不安定要素をしっかり見極める必要がある」との見解を述べた。
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