パキスタン首相訪中 中パ「称賛合戦」 南アジアに「中パ」対「米印」構図か

2011/05/21
更新: 2011/05/21

【大紀元日本5月21日】米国がパキスタン政府への通告なしにビンラディン容疑者の殺害作戦に踏み切ったことで、中国とパキスタンの急接近を促したようだ。パキスタンのギラニ首相は17日から4日間の日程で、中国を訪問した。米国との関係がきしむ中、ギラニ首相は中国を「もっとも信頼できる友人だ」と強調し、それに答えるかのように、中国の温家宝首相は「テロとの戦いに重要な貢献を果たした」とパキスタンの貢献を称え、「称賛合戦」の中で両国の蜜月関係をアメリカにアピールした。南アジア中パ米印が対立する構図が浮かび上がっている。

米に見せつける「友情確認」

「国際社会の風雲がどんなに変幻しても、中国とパキスタンは永遠に良い隣人で、良い友人、良いパートナーで、良い兄弟である」。18日、温家宝首相は北京を訪れているギラニ首相にこのように約束した。さらに、「パキスタンの独立と主権、それに領土の保全は尊重されなければならない」と述べ、アメリカ軍の軍事作戦に反発を強めるパキスタンの立場に理解を示した。

パキスタンのギラニ首相も中国政府に取り入るように、「中国が国際社会でリードする役目を果たす」ことを期待すると語り、「パキスタンにとって中国は最も信頼できる友人であり、外的環境の変化に左右されない戦略的パートナーだ」とアメリカを意識した発言で中国を褒め称えた。

一方でパキスタンは12日、中国の支援で建設されたチャシマ原発2号機(33万キロワット)の始動式を行ったばかり。同原発にさらに2基の中国製原子炉を増設する協議も締結されている。中パ間の「核」をめぐるこの取引きについて米国は反発しており、軍事力の強いイスラム国家パキスタンの核保有への懸念を高めている。

さらに今回のギラニ首相の訪中で、中国とパキスタンは軍事面での協力も強めた。パキスタンは両国共同で開発した戦闘機50機の早期納入を決めたと報じられている。また、金融やエネルギーなどの分野における協力促進でも両国は合意した。さらに、今回の中パ会談を通じ、ビンラディン容疑者を急襲する際に墜落した米軍ステルスヘリコプターの残骸に関する情報が中国側に渡ったのではないかともささやかれている。

中国とパキスタンの相互利用

18日付のドイツ紙フランクフルター・アルゲマイネでは、米国とパキスタンの関係が冷え込む中、北京は「漁父の利」を得ていると分析した。ギラニ首相の訪中をきっかけに両国が急接近し、パキスタンも中国との蜜月関係をアピールすることで、アメリカに「あなたたちに頼らなくても」というメッセージを送っている。

「パキスタンはインドと敵対関係にある。中国は、パキスタンと緊密な関係を結ぶことで、インドとアメリカのアジアでの影響力をけん制することができる。そもそも60年代に中国とパキスタンが接近した背景には、専制中国と民主インドの間に紛争が増えたことがあった」と同紙は分析し、南アジアで中パと米印の対立する構図が生まれる可能性を示唆した。

パキスタンは中国にとって経済的にも重要な「戦略的意味」をもつ。中国最西端のカシュガルからパキスタンのグワダル港に走る全長1300キロの「中パ友好道路(カラコルム・ハイウエイ)」は、中国にとってインド洋への抜け道となる。そのグワダル港で、中国が巨額の支援を行って港を建設し、中東からの石油はここからも中国に運び込むことができる。

一方、パキスタンにとっても中国は重要な貿易パートナーであり、最大の武器調達先である。中国からミサイル技術の供与を受け、核兵器開発についても支援が指摘されている。その上、中国は「内政に干渉しない」と謳っていることから、「パキスタンは人権問題で北京に警告されることもない」と同紙は指摘し、「そのため、ギラニ首相は、中国が国際社会でリードする役目を果たしてほしいと熱い期待感を示したのだ」

今回北京で開かれた中パ国交60周年を祝賀するレセプションについて、同紙は、「中国はここ2年間、北朝鮮やロシアとこのような祝賀セレモニーを開き、これらの国との親密関係をアピールしたが、今回はパキスタンもこのような、中国に大事にされる隣人の1人に仲間入りした」と分析した。

英フィナンシャル・タイムズは、中国とパキスタンは60年来の盟友であるが、この時期での「称賛合戦」と「友情確認」はお互いにとって好都合であると指摘した。ただ、中国は米国とも関係改善を目指していることや、テロ組織として指定したウイグル独立派がパキスタンと関係を保つことを懸念していることから、当面、米国とパキスタンの間で難しいかじ取りを迫られそうだ。

(翻訳編集・張凛音)