「季節外れ」の電力不足 裏には送電会社の1828%の利益増=専門家解読

2011/05/18
更新: 2011/05/18

【大紀元日本5月18日】中国の電力不足はかつてから囁かれているが、今年3月から全国のおよそ半分の省に広がる「季節外れ」の停電は異例である。今年の電力不足は2004年以来の深刻な状況になる可能性が伝えられる中、原因を究明する専門家は、送電会社の1828%の利益増に注目している。

各地に広がる電力不足

中国国内メディアによると、電力不足は現在、華中地区を中心に10数省で起きている。浙江省では、企業に対して「3日通電、1日停電」、「週2回の停電」といった電力供給制限が課せられており、湖南省長沙市では「エアコンを26度以下に設定してはならない」、「市街地の街灯半減」、「公共施設のエレベーターは4階以下には止まらない」などの緊急節電措置が決められている。鉄鋼最大手の宝鋼集団は、上海地区の電力管理者から、6~9月に電力消費の制限が求められたことも明らかになっている。

電気需要は発電機容量の4割に過ぎない

中国電力企業連合会によれば、2010年の中国全土の発電機の総容量は9.6億キロワットなのに対し、同年の全国の電気需要量は4.19億キロワット。つまり、電気需要は供給能力の4割に止まり、6割の発電能力は発揮されていない。

また、政府系紙・中国青年報は、電力不足が深刻な湖南省と河南省の発電機の未稼働状況を伝えた。それによると、湖南省は、容量計1417万キロワットの発電機のうち、現在稼働しているのは700万キロワット分で、半分以上の発電機は運転を停止し点検に入っている。河南省の5000万キロワットの発電機のうち、2割以上を占める1200万キロワットの発電機は「点検中」だという。

政治経済評論家の張経綸氏によると、中国が1年間の発電に使う石炭は16億トン、うち2.1億トンは発電所の自家産石炭で、7億トンは政府が価格抑制を行っている「計画石炭」、残りの7億トンは「市場石炭」だという。「計画石炭」に関しては、当局が4月2日に発行した関連規定により、昨年と変わらない1トンあたり520元と決められている。しかし、「市場石炭」は現在1トンあたり700元となっており、「計画石炭」との価格差は200元近くに上っている。

現在、発電所が発電に使っている石炭はほとんどが安い「計画石炭」だと張氏は指摘する。「市場石炭」は、ガソリンの値上がりなどによる輸送コストの増加で今後もさらに価格が上昇すると予想される。一方、発電所が送電会社に電気を供給する卸値は政府によって決められているため、発電所が「市場石炭」を使って発電する場合、発電すればするほど損失が大きくなるという事態に陥りかねない。多くの発電所が「点検中」である理由はここにあると張氏は分析する。

発電会社の赤字は、送電会社の暴利の目隠しか

一方、13日の中国広播ネットが引用した中国統計局の発表データによると、2010年1~11月の送電会社の売り上げは2.19兆元、前年同期比20.84%増で、電力業界総売上の65%を占めている。利益は業界の42%を占める592億元で、前年同期比1828%と大幅に伸びている。

それに対して、電力企業連合会が発表した「2010年度電力監管報告」では、2008年からの3年間、中国の5つの火力発電会社(華能・大唐・華電・国電・中電投)のそれぞれの合計損失は85億元以上を記録しており、5社合計の損失が600億元以上に上っていることが明らかになった。発電会社は毎年政府に電気卸値の値上げを要請しているが、棚上げ状態が続いているという。

中国では2002年に、国家電力会社を発電事業と送電事業に分離した。発電事業は5つの独立した発電会社に再編成し、送電事業は「国家送電会社」と「南方送電会社」に分け、「国家送電会社」の傘下に華北、東北、華東、華中、西北の5つの地域のグループ企業を設立した。

巨額損失を出している発電会社は、送電会社の巨額利益をねたんでいるかというと、答えは「ノー」だと張氏は主張する。発電会社の損失は、むしろ送電会社の利益の目隠しになっていると指摘する張氏は、5つの発電会社も、2つの送電会社も李鵬・元首相一族や曾慶紅・前副主席一族などの指導部メンバーが深く関わっており、全体が1つの利益共同体だという説明で裏付けた。電気卸値を低く設定することで、発電事業で赤字を出すものの、石炭価格の上昇は有効に抑えられる。その結果、送電事業の部分で巨額の利益を上げることができ、利益共同体全体がそれによって潤う、と張氏は両者のカラクリを分析した。発電コストの7割を占める石炭の価格を抑えることは、発電・送電共同体がより多くの利益を稼ぎ出すためのもっとも有効な手段だと張氏は指摘する。

経済学者「電力自由化が糸口」

経済学者・茅於軾教授は本紙の取材に対し、電力の需要と供給のズレは、市場の調節機能が働かなかったことに起因すると分析した。政府が電気料金をコントロールしている一方、石炭価格が市場機能で調節され上昇しているため、間にいる発電会社が発電を控える事態が起きている。「電力と石炭市場の自由化が問題解決の唯一の糸口だ」と茅教授は指摘し、「政府が電気の卸値を抑えるのは、消費者を惑わすやり方だ。結果的に消費者が被害者になる」と批判した。

(翻訳編集・張凛音)