【大紀元日本5月9日】米海軍特殊部隊がアルカイダ指導者ウサマ・ビンラディン容疑者を殺害した後、パキスタン北西部にある潜伏先が国際社会の注目の的となっている。メディア報道の中では、アボッダバードでの潜伏生活に関する様々な説が飛び交っている。また、潜伏情報を知らなかったというパキスタン当局の説明について、懐疑的な見方も少なくない。
AP通信は隣人らの証言を引用して報道。それによると、周辺の住民はこの邸宅で生活する人たちについてほとんど知らなかった。しかし、中の2人はどうやらビンラディンの使いであって、定期的雑用または葬式などの隣近所の集まりに参加していたという。2人の名前はタリック・カーンとアーシャード・カーン。パキスタン北西部出身のいとこ同士と自称しており、パキスタンとアフガニスタンの政府公用語を含む数種類の言語を話せる。2人は週に2回ほど買出しに出かけ、野菜や、果物、ビスケット、フルーツジャム、蜂蜜、アイスクリーム、キャンディなどを大量に買っていた。店の店主は英紙デイリー・メールの取材に対し、2人は「いつも礼儀正しくて、よく質問をしてきた。例えば、地元のニュースや見知らぬ人がいるかどうかなど」と証言した。
米国政府関係者は、ビンラディン容疑者がここで6年間も潜伏した事実は摩訶不思議だと認識している。ここは米国が支援するパキスタン軍の鼻先であるからだ。パキスタン軍は、同容疑者の逮捕に尽力すると言ってきた。
現地の住民によると、ビンラディン容疑者が住む3階建ての家は約7年前に建てられた。最初の頃、周辺住民はこの警備の厳しい邸宅(塀の高さは約5.5メートル、棘つきの金属網が張られている)に興味津々だった。そのうち、この家の住人はただ宗教を信仰しており非常に保守的であると受け止めるようになったという。
隣人の証言によると、謎の邸宅に住む人たちは、あまり外に出て散歩することがない。外国人が住んでいたことを、ほとんどの住民は知らなかった。70代の女性ホルシド・ビビさんはAP通信の取材に対し、ある雨の日に、邸宅に住む1人の男性が車で彼女を市場まで送ったと話した。
また新聞配達員の証言では、この邸宅にいた男性1人は必ず月末に新聞代を払っていた。また、生きた羊を乗せた赤色の小型トラックがよく邸宅に出入りしていたという。
一方、農家のマスド・カーンさんは、「皆が文句をこぼしている。こんなに広い邸宅に住んでいるのに、まったく貧しい人々を招待したり、布施したりしなかった」と語った。
モハメド・カシムさんの自宅は謎の邸宅に隣接している。彼は英紙デイリー・テレグラフの取材に対し、「訪ねてくるお客様をみたことがない。地元の人と顔合わせもしない」と語した。また、毎朝、数人の女性は複数のこどもを赤色のスズキ自動車に乗せて出かける。しかし、学校に向かっているかどうかは不明だという。
アイスクリームの露天商タンウィル・エハメドさんは、「もし、遊んでいるこどもたちがサッカーボールをこの邸宅の庭に蹴りいれてしまったら、庭に入ってボールを拾うことは許されない。その都度、中の住民が100~150ルビ(約2~3ドル)の金をボールの賠償金として払ってくれる」と証言した。
12歳の少年ザラル・エハメド君はこの邸宅に入ったことがあると称した。「玄関の門には監視カメラが設置されている。僕は入ったことがある。彼(ビンラディン容疑者)には2人の妻がいる、一人はアラビア語、一人はパキスタン語を話していた。また、3人の子どもがおり、女の子1人と男の子2人だ。僕に2匹のウサギをくれた」という。
1人の隣人はBBCの取材に対し、一家は地元の人間の1人を家政婦として雇っていたと話した。現地の病院関係者によると、米国の今回の襲撃で負傷し、病院で治療を受けている2人の女性は、家政婦である可能性が高いという。
これまでの4年間、パキスタンの大半の地域でテロ組織の襲撃が発生したが、アボッダバード地区は例外だった。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、長い間、欧米諸国は、パキスタンの安全部隊に対し、アフガン戦争に加担したテロ組織と癒着しているのではないかと懐疑的な見方をしていた。一方、アルカイダは従来から、パキスタン国内の数十件のテロ攻撃に犯行声明を出してきた。攻撃の対象は主にパキスタン軍や政府の幹部である。パキスタン政府がビンラディン容疑者の潜伏を黙認し、逮捕や殺害に踏み切らなかった理由は、米国からの支援と武器供与を引き出すため、と一部の評論家は見解している。
また、パキスタンのメディアや国民の間でも、疑う声が上がっている。アボッダバード地区の新聞販売員のジハンジル・カーンさんは、「あの邸宅は明らかに怪しかった。わが国の情報機関が完全に職務怠慢になったのか、あるいは、彼らは本件と関連している。この二つしか考えられない」と話した。
英紙デイリー・テレグラフは4日、CIA長官が3日米議会の内部会議でビンラディン容疑者死亡の詳細状況を説明したという内容の記事を掲載。同報道によると、ビンラディン容疑者は自らの情報収集ネットワークに、かなりの自信を抱いており、米国からのいかなる攻撃をも事前に知ることができると信じていた。また、同容疑者の所持したユーロや電話番号も、この見方を立証した。このことは、米国政府がパキスタン政府に事前に攻撃を知らせなかった原因の一つであるという。
また、現金と電話番号のほか、突撃部隊はこの邸宅から複数のパソコンや、ハードディスク、ファイルを押収した。米国側はこれから分析・解明を始めるとしている。