【大紀元日本4月22日】「幸福感」-今年3月に開かれた中国の国策決定の場である両会で、最も頻繁に使われた言葉である。今まで胡温政権が唱えてきた「調和社会」に代わり、今後5年間の中国の目標は国民の「幸福感」を向上させることにあるという。当局が「調和社会」を唱えた背後には、社会の不調和が顕著であった。これと同様に「幸福感」を重視することを当局が唱える裏には、中国社会では国民は幸せを感じていないと両会が考えていることが読み取れる。
GDPが世界第2位に躍進した中国で、国民が幸せを感じていないという現実は、今週、米国の世論調査会社であるギャラップ社が発表した2010年度世界幸福度調査「Gallup Global Wellbeing」の結果からも裏付けられる。中国人はお金で幸福を買うが、多くは希望を抱けないでいる。
調査は世界124カ国で行われた。対象者に自分の生活にあてはまる言葉を尋ねたところ、中国人回答者のうち12%が「向上している(Thriving)」と答えたのに対して、71%が「ぎりぎりのところ(Struggling)」、17%が「苦しんでいる(Suffering)」という言葉を選んでいる。
他国と比較すると、飛躍的な経済成長を成し遂げ、生活をポジティブに感じている国民の割合は、アフガニスタンやイエメンとほぼ同じで、イラクより少ない。一方、苦しんでいると感じる国民の割合は、スーダンやイラクよりも高い。
また、2009年12月には、米ミシガン大学社会調査研究所が幸福指数の調査を公表している。それによると、中国人の幸福感は下がり続けている。
しかし、中国の官製メディア「人民日報」オンラインでは、今年2月、7.5割の中国人が幸せを感じていると報道している。その一方で、幸福感重視が打ち出された今年の両会の前に同じ官製メディア「中国日報」が発表した調査では、幸せと感じている中国人は6%に過ぎないという。両会後、中国ポータルサイト「網易」で報道した「幸せは中国人からどれほど離れているのか」という記事に対して、1899件にのぼるコメントが寄せられているが、大半の発言は「見えないほど遠く離れている」、「実現の可能性はない」、「生活費を稼ぐために商売を始めようと思ったら罰金にされ、ヤクザに脅かされたりした。警察に通報したら調査費を要求された。物価は高くなる一方で金儲けもできない」といった否定的なもので、これらの発言を支持するコメントも9割以上に上る。
中国人の「幸福感」の欠如を表す一連の統計は既に存在している。うつ病患者数は2600万人。大学生の9割が就職難。国民の7割が薬品の安全性に対して不安を感じている、8割の世帯は子女の学費を支払えない。7億人が職業による精神・身体のストレスに苦しんでいる。
そのほか、貧富の格差も一要因と思われる。「中国日報」は、中国のジニー指数(社会における所得分配の不平等さを測る指標)は近年上昇する一方で、現在は収入の不公平分配を感じる警戒線0.4を超える0.5に至った」ことを報道している。また、今年の両会で、中国人民大学による国民の収入差に関する調査の結果が発表された。それによると、中国では10%の富裕層が80%の財を占めており、富裕層家庭と貧困家庭の収入差は40倍という。
さらに、高騰するインフレ、社会的な格差の激増、食品安全の欠如、強制土地徴用による衝突事件が多発しており、国民の不安と政府への不信感は日増しに増大する一方だ。コンサルティング会社Bain & Companyによる中国の富裕層についての最近の調査では、中国の富豪の半数は海外に移住する準備をしていることが明らかとなった。中国の株式市場や不動産市場などのバブル経済に不安を感じる中国の富豪は、相次いで中国から離れようとしているという。
「豚が太ったら殺される日も近づいて来る」-中国人の富豪たちを海外移民ブームに駆り立てる他の要因として、不法ルートによる蓄財が当局に目を付けられていること、汚染環境、食品の安全性などが挙げられている。幸せに最も近いはずの中国の富豪さえも幸福感から遥かに遠いのであれば、中国社会で生き抜く上で最も大切な金も権力もない一般国民が、幸せから「見えないほど遠く離れている」と感じることは当然であろう。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。