【大紀元日本4月22日】中国初となる改造中の空母「ワリャーグ号」をめぐってこのほど、改造作業がすでに最終段階を迎えているとの報道が飛び交い、多くのメディアや専門家は同空母の試験航海がこの夏にも始まるとの見解を示していた。これに対して、中国国内の一部の専門家は、ワリャーグ号が今年中に進水する可能性は低いと指摘し、それに関する報道は一部メディアの誇張の可能性が高いと分析した。また、進水後の第一段階は中国海軍の空母操作の訓練に使用するのが目的で、戦争型空母としての装備が揃うまでには少なくとも5年以上かかると見ている海外の専門家もいる。
ワリャーグ号は前ソ連が1985年に建造した、6.5万トン級の航空母艦で、滑り台型飛行甲板を採用している。ソ連崩壊時には70%しか完成しておらず、その後ウクライナに渡ったが、ウクライナでは建造を継続できなかった。1998年中国資本創律集団が、海上カジノにすると称して約2000万米ドルで購入した。しかし2005年になって、ワリャーグ号を中国初の航空母艦に改造する説が報道された。
今月6日、中国の国営新華社はウェブで、改装後のワリャーグ号の写真を掲載し、「航空母艦の大型艦橋(主動多段配列レーダーシステム以外)完成まじか」と報道した。また、新華社系の「国際先駆導報」は14日、ワリャーグ号について、今夏にも試験航行を開始するとの観測記事を掲載した。その翌日、中国軍部紙・解放日報傘下の「新聞晨報」は、ワリャーグ号は中国共産党創立九十周年に当たる今年7月1日に進水すると推測されていることを報じた。これまで国産新型戦闘機や空母の話題を控えてきた国営メディアがこのような記事を掲載するのは異例で、空母保有を既成事実化する狙いがあるとみられる。
同じ見方は海外でも報道されている。米軍太平洋戦区ウイラード司令官は、12日に米国上院軍事委員会公聴会に出席した際、同航空母艦は早ければ2011年夏に試験航海を行うと証言した。
しかし一方、上海国防戦略研究所研究員、中国国内軍事誌で編集長を勤める趙楚氏は、「ワリャーグ号航空母艦の建造技術などの条件から考えると、2011年進水の可能性は高くない」と見ている。同氏は、今夏進水説はメディアが意識的に作り出したものだと指摘した。
また、米国海軍戦争学院の中国防衛アナリスト、エリクソン氏は米RFA放送に対して、ワリャーグ号に空母搭載機の装備ができるのは少なくとも2年後であり、護航艦艇ができるのは5年から10年後になるとの見方を示している。
中国の軍事情報に詳しいカナダの軍事専門誌「漢和防衛評論」の編集長・平可夫氏は中国メディアに掲載された写真から、ワリャーグ号の武器装備とメンテナンスはメインのレーダーシステムを除きほぼ完成していると分析しており、進水の時期は遠くないと考えている。しかし、ワリャーグ号の戦争型空母としての役目は限られており、次の空母の製造の予備であると見ている。
「戦うための空母として使用するのは難しいでしょう。この船はすでに海上で、しかもいかなる防衛もない状況で10年も漂泊した。中国に売った当初も船内の戦争型としての空母装置が破壊された。中国がワリャーグ号を購入したのは主に、国産の空母製造の研究目的であろう」と平可夫氏は指摘する。また、中国軍にとってのワリャーグ号の役割について、操作の訓練が目的で、空母使用の経験を積むためである、と同氏は考えている。本当の戦闘機と部隊の装備が揃うまでには少なくとも4~5年かかるという。