【大紀元日本1月5日】 「中央アジア地区は神様が中国人に与えた最も美味しいケーキ」と、中国人民解放軍国防大学の政治委員・劉亜洲中将はかつてこのように発言したことがある。
この「美味しいケーキ」を何とか手に入れようと、中国は数年前から中央アジアにおいて、経済と文化の両面から影響力を強めている。キルギス、カザフスタンとタジキスタンで道路を整備し、カザフスタンで鉄道を建設し、トルクメニスタンとの間には2009年に全長約2千キロのガスパイプラインも完成させた。また、中国・中国文化を広めるための「孔子学院」も中央アジア各国の首都に開設された。中央アジアでの活動を活発化させたのは、安保や経済利益のためだけでなく、日米を中心とする対中包囲網を突破するための重要な一歩だと専門家は見ている。VOAが伝えた。
米セトンホール大学の教授で中国問題専門家の楊力宇教授は、劉中将の発言は政府の正式見解ではないものの、中国の同地区に対する野心を表していると分析した。
同教授はユーラシア大陸の真ん中に位置する中央アジアは、中国の安全保障、民族問題、経済問題にとって重要な意味を成していると話し、「中国はロシアと中央アジア4カ国による上海協力機構を通じて、同地区を中国網に収めようとしている」と指摘した。
また、新疆でウイグル人との間に民族問題を抱える中国にとって、中央アジアとの友好関係は軍事防衛においても不可欠である。
さらに、中央アジアには天然ガスと石油が豊富に埋蔵されており、経済成長を持続させるために資源の確保が急務となっている中国にとって、重要な戦略的パートナーである。
三菱中国研究所の理事・楊中美博士はVOAの取材に対し、経済力が急成長した中国にとって、拡張は必然的なことであり、ただ東へ向かうか西に向かうかだけの問題だと述べた。
同博士によると、劉中将が10年前に発表した論文「西部論」を読むと、太子党(中共高官の子弟グループ)をはじめとする一部の軍幹部はこのまま東へ突進すると、日米と正面衝突する恐れがあり、中国の台頭に不利な要素をもたらすため、東への拡張を避けるべきだと主張し、中央アジアの経済開発を利用して、西部地区と欧州を一体化させるべきとの考えを示している。
同博士は、中国の西への拡張は綿密に計画されたもので、新疆ウイグル自治区のカシュガルを中心に、改革開放の象徴である「深圳(しんせん)モデル」を援用し、ユーラシア大陸の一体化を図り、日米を「辺縁化」させることになるとして、次のように指摘した。「間違いなく、中国の上層部はこの方向へ向かっている。欧州とアジアは緊密な関係を築き、米国は欧州という重要な盟友を失い、日本と孤独な同盟を形成することになる」
また、中国は日米を中心とする「対中包囲網」に警戒を示しており、包囲網を突破することを試みている。その具体的な戦略は中央アジアとの関係を強めることだと見ている専門家もいる。
それを証明するかのように、内部告発サイト・ウィキリークスが暴露した米国務院の機密公電によると、中国がキルギスに30億ドルの経済援助を提供した見返りに、キルギスは同国のマナス米空軍基地を閉鎖したのではないと米国は疑っているという。
2009年2月13日付の同公電によると、米キルギス大使が中国大使にこの件について問いただすと、中国大使は「驚きのあまり、一瞬ロシア語を話せなくなり」、その後「強く抗議した」という
米の中央アジア問題専門家で、ジョン・ホプキンス大学中央アジア・コーカサス研究所所長のS・フレデリック・スター氏は、中国はまもなく中央アジアで主導権を握り、この「神様から与えられた美味しいケーキを独り占めすることになるだろう」と述べた。
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