【大紀元日本12月31日】12月23日に中国訪問を終えた、国連のオリビエ・デシューター氏(食糧権利の特別報告官)によると、現在中国は耕地面積の減少や退化により、現有の農業生産能力の維持が厳しい状況に直面している。同氏はさらに、中国における「食の権利」を保障する「言論の権利」の欠如に懸念を示した。米VOAが伝えた。
ここ数十年、中国は世界人口の5分の1の食糧をまかなってきたが、近年の都市化や工業化、植林の展開や自然災害の影響により1997年以来、すでに820万ヘクタールの耕地を失ったと同氏は指摘している。現在、中国の37%の土地は退化し、一人当たり使用できる土地の面積は世界水準の40%ほどでしかない。その上、過度の化学肥料の使用、汚染、干ばつなどの要因により、土壌の質は低下する一方だという。
ワシントンD.C.のワールドウォッチ研究所のダニエル・ニーレンバーグ研究員はVOAの取材に応じた際、デシューター氏の憂慮に同調した。ニーレンバーグ氏は、中国の食糧生産の増加は雑交種子、無機化学肥料の使用、機械化農業や農場の工場化などの「緑の革命」技術を取り入れたためだとする一方、数十年の使用と共に、これらの「緑の革命」による生産は日に日に下降していると指摘している。
デシューター氏によると、最近の中国における食糧価格の高騰は将来にとって重要な予兆効果を持っている。この1年、中国の米価格は13%、小麦は9%、鶏肉は17%、豚肉は13%、鶏卵に至っては30%も上昇している。
この先、気候変動に対し緩和行動が採られない場合、農業生産性は2030年までに5%から10%落ち、食品価格も更に高騰するものと予想されている。中国が現在の生産レベルを維持しようとするならば、持続可能な栽培方式を採用する必要があるとデシューター氏は語った。
また、拡大の一途をたどる都市と農村の収入格差も中国の食糧供給と需要に影響を与えている。西部農村地区の住民が衣食のために毎日必死であがいている一方、東部の住民は糖尿や肥満などの「ぜいたく病」の心配をしている。
これらのことから同氏は、中国に対し農民の土地使用権と獲得権の更なる保証を呼び掛けている。中国では依然として数億人が農村地区の住民で、そのほとんどが農業で生計を立てている。だが、農民の土地は収用され続けており、不動産開発業者が違法に耕地を占有している場合も少なくない。これは国家の農業生産能力維持にとって脅威であり、食糧の自給自足という理想レベルに影響を及ぼす問題だとデシューター氏は指摘した。
デシューター氏はまた、08年、乳児6人の死亡と30万人近い中毒患者を出したメラミン入り有害粉ミルク事件の被害者家族代表・趙連海さんの拘束事件に対し強い関心を示した。
被害者家族を取りまとめ、政府に保障を求めた趙さんは今年11月に社会秩序破壊罪で懲役2年6カ月の有罪判決を言い渡された。
趙さんの有罪判決は食品の権力を守る全ての人々を驚かせたと同氏は話す。「言論の自由がなければ、『食の権利』を守ることは出来ない」と懸念を表明した。
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