【大紀元日本12月23日】本人もこんなことになるとは思わなかっただろう。親の威光を借りて今までの人生は誰にも邪魔されなかったのに、この日は酒に酔って車を運転し、2人の女子学生をひいてしまったのだ。車から降り、取り囲んだ学生たちを睨みつけると、「訴えるなら訴えてみろ、おれのおやじは李剛だ」と言い放ったという。
10月16日、河北大学のキャンパス内で起きたこの飲酒運転死亡ひき逃げ事件の加害者・李啓銘の父親「李剛」は地元公安局の副局長。「おれのおやじは李剛だ」、すなわち、「俺は知らぬ者のいない警察トップの息子だ。なんか文句でもあるのか。俺に楯突くとろくなことはないぞ」と言いたかったのだろう。
「李剛」のような存在は1人ではなかった。今月1日、北京電子科技職業学院のある学生は、父親と親の友人2人を連れて学生寮に殴りこみ、学生らに暴力を振るう傷害事件を起こした。目撃者によると、加害者は暴力を振るいながら「おれのおやじは暴力団だ。今日はお前ら全員を殴ってやる」と叫んだという。この事件で計21人の学生がケガを負ったという。
同様な事件が相次ぐなか、ネット上ではこの頃、「おやじ自慢」を揶揄する書き込みが増えている。幼稚園の椅子取りゲームに勝つには「うちのパパは課長だ」、小学校でクラスメイトをいじめた者は「お父さんは主任だ」、高校で彼女を横取りした者は「おれのおやじは署長だ」、大学で女子学生を死亡させた者は「おれのおやじは局長だ」と、親が権力者であることを前面に出せばどんな理不尽なことをしても許されるという「官二代(幹部の2代目)」の問題が見事に露呈している。
また、今年5月に浙江省寧波市警察が麻薬取締まりで拘束した17人の若者のほとんどが富裕層の「80後」(80年代生まれ)。高級ブランドを身に付けた彼らが、高級車でホテルに集まって麻薬を吸っていたという。「官二代」に加え、「富二代(金持ちの2代目)」、「壟二代(大手国有企業経営者の2代目)」など、親の権威を笠にきた彼らの勝手な振る舞いはすでに社会の秩序を乱している。
「二代目」が注目される理由には、官僚に対する反発や縮まることのない貧富の格差への不満、さらに、不平等競争による特権階級の世襲化への憂慮が挙げられる。すでに公平さに欠ける社会は、二代目問題でさらにその不平等が増幅されるのではないかと危惧されている。
実際、このような不公平さはすでに現れている。中国の法制日報によると、近年、政府関係職の就職活動において、幹部子女は親の関係を利用する者が多く、募集時の選考条件に加えたところもあるという。