『アイスランドでの法輪功と中共の対峙』著者へのインタビュー(一)

2010/12/23
更新: 2010/12/23

 

2010年末出版『Arctic Host, Icy Visit
China and Falun Gong Face Off in Iceland』
(冷淡な受け入れ国、凍りついた訪問
—アイスランドで対峙する中国と法輪功)。
2002年の江沢民アイスランド訪問の事件を
詳細に記録・分析した冊(スクリーンショット)

【大紀元日本12月23日】2002年初夏、レイキャビクのアイスランド人権センターで「中国主席の訪問について」話し合いたいという二人の来客があった。この来客の口から、小国の民主主義国家アイスランドでは想像しがたい、 抗議デモ禁止、スパイ、いやがらせ、諜報行為などの言葉が飛び交った。さらには、中国で精神修養に励む穏やかな法輪功学習者が残虐に迫害されている事実が紹介された。
 

当時、EUの助成で人権問題の研究者として アイスランドに滞在していたハーマン・サルトン(Herman Salton)博士は、この二人の精神状態を疑うところだった。しかし、この禁止令が事実であることはすぐに判明し、予期せぬ事件が博士の目の前で展開されていった。

 世界同時テロならぬ世界の空港での同時足止め。アイスランドに入国した法輪功学習者は、その場で拘束。しかし、メディア報道により人々が抗議デモを行ったことで釈放された。法輪功学習者による抗議デモは静かなものだったが、法輪功学習者に圧力をかけたアイスランド政府に抗議した国民のほうが熱くなった。

 6月11日、国内紙Morgunbladidの一面を使って、与党議員を含む550名以上の市民が名を連ね、アイスランド政府の行為を非難し、法輪功学習者とアジア系の訪問者に対する取り扱いに対して謝罪した。同紙面では中国政府の人権侵害も強く非難している。

 中国の専制主義が遠方の民主国家に押し付けられた事実に危機感を覚えたサルトン博士は、一般の人々に知らせる義務感から、調査を積み重ね、精確な記録を収集し、この事件を一冊の本にまとめることにした。著書『Arctic Host, Icy Visit – China and Falun Gong Face Off in Iceland』(冷淡な受け入れ国、凍りついた訪問 — アイスランドで対峙する中国と法輪功)が、8年の月日を経て今年末ようやく出版に至った。
 

同著は、法輪功とは何かを解説し、中国政府が不法とする理由について考察した上で、これらの事件をアイスランド人の証言やテレビ局の映像をもとに記録する。さらに禁止令、ブラックリストの違法性を論議し、中国主席の他国訪問のケースとも比較している。最後の結論の章では、中国の台頭、現代中国と人権を論じ、抑圧のシステムを中国が国外に輸出できる事実を指摘している。

 人権問題研究者の立場から法輪功問題をとらえるサルトン博士に、 人権の出発点、政府と個人の関係、政府間の問題などについて語ってもらった。

 

 

中国当局に対する法輪功の問題を伝える、
アイスランドの新聞(スクリーンショット)

人権問題の出発点

 問:人権/反人権は一概に日本人には苦手な発想です。200年にわたるサムライ文化で、お上に従う習慣が染み込んでいるように感じます。

 サルトン:本来、人権は相手の権利を思いやるという人間の基本なんですが、専制的な政府では、向上すべき分野とはとらえず、やっかいなこととして切り捨てがちです。しかし、人権は人間本来の姿です。

 問:ご自身は、どのような出発点から人権問題を取り扱われるようになったのですか。

 サルトン:これまで実に様々なところに行き、様々な場所に住みましたが、どこに行っても人間は同じだということに気づいたのです。言語、文化、肌の色の違いは表面的なもので、その根底には何か、人間同士を密接につなげるものがあるという事実を発見しました。人間同士をつなぐ共通のものの現れとして「人権」があると考えました。

 問題は、人間がこの根底にある共通のものに気づかないことにあります。他の国を訪れる時、最初に入国審査官に止められ「この国に来る権利があるのかね」と尋ねられます。どこに行っても、ビザや多くの官僚的な手続きが求められます。地球の裏側に行くのに、なんらかの許可が必要なんです。政府や国家の観点からはこの行為は理解できますが、一つの人間という種の観点から見るとかなり問題があります。

 この観点には良いことと悪いことが伴います。私が人権に関心を寄せているのは、この両面があるからでしょうね。人間として、他の人間の権利に気を配ること、つまり思いやり、は「良い」ことです。しかし、これらの権利を侵害し、干渉する事実があることは「悪い」ことです。ここに「人権問題」が生じます。

 問:地球上のどこでも、田舎に行くと素朴な喜びを持った人に出逢います。この感覚をおっしゃっているのでしょうか。

 サルトン:そうです。有色人種が白人を見たら、肌の色の違いに気づきます。でも、3歳、4歳の子供は肌の色が違うから遊ばない、ということはありません。5歳、6歳、7歳と成長するにつれ、肌の違いの意味に気づくのです。問題は大人にあります。大人には人間の違い、多様性を認識する能力があるのです。

 政府もここで役割を果たします。政府はこの違いを都合のよいように利用します。特定の人種、特定の国家を「敵」として作り上げることは簡単です。こうすることによって、特定の人間のグループをあなたから引き離してしまいます。そして人種差別が始まります。この面で政府は大きな役割を果たします。法律、教育、メディアを通して、人種差別を強化したり軽減したりできるのです。

 中国共産党政権という専制主義政権が、 政府にとってやっかいな要素である法輪功学習者を排斥している現状も、この観点から説明できます。

 

 中国共産党政権はなぜ法輪功を迫害するのか

 問:著書の結論の章で、 精神性を意味する法輪功と 実利主義の中国共産党政権が対比されています。中国共産党はどのように「精神性」を扱っていいかわからず、恐れており、この恐怖心は不安と過敏性から生じていると指摘されています。どのようなところから中共の「不安」を見いだせますか?

 サルトン:いたるところにみられます。中国と隣国との関係、中国と自国民との関係。つまり誰に対しても不安なのです。「不安」は専制的な政府の典型的な特性です。

 民主主義は一概にきちんとしていないものです。取り扱いも厄介です。でも、不安感は伴いません。恐れるものがないからです。しかし、現在の中国政府のような独裁的なシステムでは、誰かが自分を転覆させるかもしれない、取り除こうとするかもしれないという恐怖感が常に存在するのです。中共が抱える多くの問題は、この恐怖心から生まれています。

 この「不安」は、自国民との関係に最も明確に現れています。例はたくさんあります。チベットに対する態度。法輪功に対する態度。専制的な政府は、現状を維持し生き延びることが第一義です。そのために、特定の行動にでます。

 法輪功の場合、法輪功は「精神性」を意味します。「イデオロギー」は追随するものですが、「精神性」は内面から来るものです。政策ではなく気持ちです。 法輪功は誠実であり精神性から発するものです。中共の場合はイデオロギーなので、ここで法輪功がトラブルにあってしまったと思います。権威主義政権にとって、自国民の教育管理を失うこと以上に悪いことはありません。精神性があるところには、管理できない要素が存在する。世界中のどの専制的な政府にとっても、自国民への教育や自国民が信じることに対してコントロールを失うことほどひどいことはないんです。

 法輪功は、中共とは異なる世界観をもち、多くの人に影響を与え、人々に支援されています。中共が実利主義に走り、経済成長を遂げれば遂げるほど、人々の心は空洞になり、道徳的な清らかさを求めるようになります。中共にとっては悪循環です。

 こういった観点に立つと、法輪功と中央政府との関係は特に異例なことではありません。 専制主義政府と精神性を求める個人の関係が中共と法輪功の関係に表されているのです。

 過去に中国で精神的な団体や気功がブームとなりました。国民にとっては有益なことですが、中央政府にとっては弱点として映るわけです。 1999年4月、1万人の法輪功学習者が、中南海にある中国政府の中枢を囲んで静かに抗議したことは、いかに平和的であれ、中共にとっては脆弱さを露呈されたことに等しく、国家管理の不備が提起されたという危機をことを意味します。

 1989年の学生デモで大やけどをした中共は、法輪功がコントロール不可能になり自分たちの生存が危うくなるのではないか、と危機を感じたわけです。

 実は、 中共は、ジャングルの中で威嚇された動物のように、筋肉を衝動的に屈曲させているに過ぎません。

 

 なぜ、アイスランドで対峙したのか

 問:中共は法輪功を恐れて迫害をはじめたとのことですが、この政策がアイスランドにまで及んだ経緯は何でしょうか。

 サルトン:中国経済が急成長したため、各国が、中国政府にきっぱりと物を言うのが難しい傾向になってきています。最近クリントン米国務長官が中国を訪れた際、特定の人権問題を中国に提起することは、中国とのビジネスを危険にさらす可能性があるため、助けにはならないと語っていました。 政府は常に貿易関係を意識しなければならず、いわゆる「バランス」をとって外交しなければならないわけです。

 中国のように成長している国は、国際関係において重要性を増しています。アイスランドのように中国に依存している小国は、自国への損失を考えると中国とトラブルを起こすことができません。

 アイスランドの人口は30万人で中国の人口は13億人です。世界でもこれほど対照的な二国はないでしょう。民主主義国家アイスランドの問題は、中国の経済・金融だけが大切であるというアプローチをとってしまったことにあります。仮にアイスランドがブルンジ共和国やルワンダ共和国などアフリカの国家首脳を招へいしたとして、相手国から法輪功学習者、もしくはアフリカの政府と相いれない人々の入国禁止を実行するよう要請があったとしても、わざわざ実行しなかったでしょう。アイスランド側は要請に対して「私たちは民主主義国家です。アフリカの国の首脳から、アイスランドの表現の自由を制約して欲しくはありません」と突っぱねることでしょう。

 しかし、あなたが小国の島国の首脳で、貿易相手国が多大な人口を抱えた経済大国だとします。この場合、自国の人権を主張することは、より難しくなります。これがアイスランドでの法輪功禁止事件が伝える悲しいメッセージです。

『アイスランドでの法輪功と中共の対峙』著者へのインタビュー(二)

 
(記者・阿部)

 

 

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
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