【大紀元日本12月8日】米国議会の政策諮問機関「米中経済安全保障調査委員会」が11月に、今年度の年度報告書を議会へ提出。今年度8月までの8ヶ月間の対中国の貿易赤字額は1,734億ドルに達し、前年同期比20.6%増だったという。
報告書によると、米国の貿易赤字額は全体として下降する傾向にあるものの、対中国貿易赤字額は依然として四割以上を占めている。米国は一連の双務的、多角的交渉を繰り返してきたが、中国の「差別的」貿易政策の改善に功を奏することはなかったという。
一方、報告書は同時に、中国による巨額な米国債保有に対しては憂慮の必要はないという見解を示している。
対中貿易赤字の解消が雇用拡大へのかなめ
報告書の公表時期は米労働省の定期報告の公表時期と重なった。11月の失業者数は急増し、失業率は9.8%まで急騰。米VOA放送によると、米国で雇用拡大をはかるための最重要事項は対中貿易赤字の解消である、と同調査委員長のダニエル・M.スレーン(Daniel M. Slane)氏が明言した。
「米国は毎年6千億ドルの貿易赤字を解消しなければならない。その主要相手は中国である。貿易赤字はすでに米国経済、そして米国の金融問題の最大の懸念事項となっている。経済状況を転換するためには、改めてモノを生産しなければならない。そうでなければ新たな富を創造することができないからだ」と同氏は述べた。
米国政府の公式統計によると、2001年中国がWTOに加盟した当時、米国の対中貿易赤字額はわずか890億ドルだったのに対して、2009年は2,640億ドルにまで上昇した。
報告書は、中国の「自主創新」などの産業政策や、人民元相場操作といった差別的貿易手段を通じて、外資系企業と中国資本企業との公平な競争が制限されてきたことを指摘。米国政府は過去一年、中国との戦略的パートナーシップの対話やG20首脳会議の席で中国とこれらの問題を交渉してきたが、中国の政策転換を促すことはできなかったと述べた。
「為替操作国」認定を勧告
中国の国家外貨管理局が11月25日に発表した7~9月期の国際収支統計(速報値)によると、経常収支の黒字額は前年同期比103%増の1,023億ドルとなり、約2倍に膨らんだ。同時期の国内総生産(GDP)に対する比率は7.2%に拡大。貿易不均衡の是正を求める米国が、人民元相場を大幅に切り上げるよう中国への圧力を強めるのは必至だ。
今年6月に米財務省が国会に提出した為替相場報告とは異なり、今回調査委員会が提出した報告書では、中国は「為替操作国」にあたると明確に指摘した。7~10月の人民元対ドル切上げ幅はわずか2.3%で、これにより中国企業は輸出の面で不当な優位性をもたらしたと同時に、多くの米企業がその生産拠点を中国へ移転させる誘因にもなっていると報告書は分析している。
オバマ米大統領は今年3月、今後5年間で輸出を倍増し200万人の雇用を創出する「国家輸出戦略」の概要を発表した。これに対し、調査委員会のパトリックA.マロイ(Patrick A. Mulloy)委員は、輸出戦略はただ輸出の拡大を強調するのみであり、米国の貿易赤字の根本的な原因を軽視しているように見受けられると指摘した。
「50~70年代にかけて、米国企業は大きく成長し、富を蓄積したと同時に米国の労働者や社会全体がその恩恵を受けた。しかし、現下の問題は、米国企業がその生産拠点を海外に移転させた結果、企業や株主には多大な利益がもたらされることとなったが、米国の労働者と米国社会全体は望ましい状況にない」と同委員が反論。今後5年間で経常項目の均衡を実現させるため、今回の国家輸出戦略の行動目標にすべきだと提案している。
対中輸出制限は貿易の不均衡をもたらす要因ではない
一方、中国側は、米国がハイテク製品の輸出で保守的な態度を取る主な原因は米中貿易の不均衡にあるとして、米国にハイテク製品の対中輸出規制を緩和するよう求めている。VOA中国語サイト12月4日の報道によると、これに対しマロイ委員は、対中輸出制限が米国貿易の不均衡をもたらす要因ではないと反論している。
「ハイテクを理由に中国へ輸出制限している製品はわずかで、米国全体の貿易赤字に何らかの影響を与えるものではない。この一部の制限を緩和してはいけないと言っているわけではない。しかし、この問題が米中両国間の貿易不均衡をもたらした主な要因であるという考えは誤っている」と同委員は述べている。
中国は輸出志向型経済戦略を支えるため、人為的に人民元相場操作を行ってきており、それによりもたらされた巨額の外貨準備を以て、継続的に米国債の保有を拡大してきた、と調査報告書は指摘する。しかしユーロや円といったその他の備蓄通貨の債券市場での運用は限界があるうえ、ドルの大規模売却がもたらす中国経済への副作用を考えれば、中国の大規模ドル売却や保有する米国債が米国経済に与える悪影響を憂慮する必要はない、と報告書は示している。
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