【大紀元日本12月5日】厳寒の冬に向かう中国山西省の太原市で、崩れかけたある集合住宅に、約100戸の住民が住み続けている。2年前から、強制立ち退きの対象された住民らは、代替住宅と補償金の条件について当局と折り合いがつかないため、「自警団」を結成して自家を守る戦いをしている。「自警団」の中の最高齢者は70歳を超えているという。
中国紙「新京報」の11月28日付け報道によると、彼らは、すでに進められた取り壊しによって崩れかけた自家を守り続けて2年になる。山西省太原の冬は北京より寒く、最低気温はマイナス10数度まで達する。崩れかけたこれらの住宅は電気も水も暖房用のスチームも止められており、これから向かう厳寒の冬に住民らは不安を隠せない。
老母とともに「籠城」する住民の1人、徐海威さん(40歳、男性)は毎晩、着の身着のままの身体をソファに横たえ、汚れて元の色が分からなくなった綿コートを被って眠る。枕元には常に、護身用の剣を置いている。留守中に不審者が入ってくるのを防ぐため、徐さんは全く外出せず、生活は老母や身内の人が支えているという。
枕元に剣を置き、着の身着のままでソファに寝る徐海威さん(ネット写真)
「この2年、私と母が安心して眠れた日は1日もない。夏も冬も、服を着たまま寝ている。ここはまるで巨大な建設現場の中にいるようで、重機が建物を取り壊す轟音がいつでも耳に響いている」と、徐さんは語る。
中国の不動産バブルがはじけると言われて久しいが、中国各地では依然として、都市部の再開発や新興住宅地の建設など、大規模な土木・建設工事が盛んにおこなわれている。しかし、建設当該地の住民に対する十分な説明や補償もなく、地方当局が一方的に立ち退きを命じるケースも多い。
立ち退きを拒否する住民には、当局が不動産業者と結託して地元のヤクザ組織を裏で雇い、暴力的手段を用いて住宅の強制取り壊しをおこなうなど、その方法はますます過激になっている。地元の警察もヤクザ組織と裏でつながっている場合が多く、彼らの破壊行為を取り締まることはほとんどない。
太原市のこれらの100戸の住民は、建物を守るため毎日夜、巡回パトロールをしている。強制取り壊しは、昼間だけとは限らず、夜間に大勢で押しかけて一気に破壊してしまう場合もあるため、彼らは昼夜の別なく「籠城」して防衛に当たっている。
暖房のスチームが止められたため、お湯を入れたペットボトルで暖をとる張さん(ネット写真)
しかし、住民らが「籠城」して抵抗する周囲の地区では、強制取り壊しがじわじわと進められている。取り壊しの対象地区には10棟の集合住宅があったが、すでに2棟は壊されて廃墟となっており、残りの建物も、多かれ少なかれ強制取り壊しの被害に遭っているという。
ある建物の4階に住む張さん(女性)は、お湯を入れたペットボトルを抱えてわずかな暖をとる。足が不自由なうえ、階段の手すりが壊されてしまったため、階段の昇降は、壁をつたいながら、ゆっくり一歩一歩しているという。
住民らは、現住所に固執しているわけではなく、「面積が多少小さくても、安心して住める代替住宅が用意されればいい」と考えている。但し、「本格的な冬が来る前になんとかしてほしい」というのが、「籠城」する住民の切実な願いであるという。
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