<上海マンション火災> 回避できるはずだった 原因発表「ずさんな管理」 遺族ら、座り込み抗議

2010/11/19
更新: 2010/11/19

【大紀元日本11月19日】上海で15日に発生した高層住宅火災事故で、政府公表では53人の死者を出し、依然として36人が行方不明となっている。事故原因について、調査チームは、法に違反する孫請けや、ずさんな工程管理と不合格の資材の使用であると発表した。

上海地元紙「新聞晨報」18日付けの報道によると、調査チームのリーダーである国家安全生産監督管理局の駱リン総局長は、「法に違反する生産建設行為により起こった重大事故で、完全に避けられるべき火災だった」と話した。

「新聞晨報」によると、火災当日、ビルの断熱材のリニューアル工事が実施されていたが、足場は可燃性資材が使用されており、溶接工の不注意で引火したという。安全規定に反する溶接作業をしていた無資格の溶接工は現場から逃げたという。

また、工事は政府から政府系企業の静安区建設総公司に独占で発注されたが、子会社に下請けされ、さらに次々と孫請けされ、溶接資格のない出稼ぎ労働者たちを雇うなどずさんな工事管理があったという。

遺族ら:溶接工に罪を負わせている

一方、火災翌日、当局は重大責任事故容疑として下請け先が雇った無資格の溶接工ら数人の身柄を拘束した。同日夜、遺族らは火災現場に座り込んで、当局は溶接工に罪を負わせて責任逃れをしているなどと主張して抗議を行った。

中国紙「東方日報」によると、当局が溶接工の身柄拘束を公表した当日夜、数十人の遺族が火災現場に座り込んで抗議を行った。彼らは、当局の消火対応の不備が悲劇をもたらした主要な原因であると訴えた。その証言によると、火災が発生してから20分後に、消防車がやっと現場に到着した。それもわずか2台だった。その後、消防車の数が徐々に増えたという。

抗議活動に参加した張さんは火災で母親を無くした。張さんの話では、事故の死亡者情報を公表する施設では、依然として多くの人が行方不明の家族の情報を待ち続けており、実際の死亡者数は当局の公表より多いという。

同高層住宅は28階建てで、150余りの世帯が入居する教員向けの住宅である。約1カ月前に始まった外壁改修工事は、静安区政府の主導のもとで行われていた。

中国国内紙「揚子晩報」の報道によれば、改修工事が始まった当初から、工事を監理する会社は、「安全施工のための特別項目は審査を受けていない」「一部では安全の欠陥が存在する」と指摘したが、しかるべき対策がなかった。関連情報は同監理会社の公式サイトからも確認できた。

火災発生翌日の16日午後、当局は、外壁改修工事の際、違法な溶接作業によって生じた火花が可燃物に引火したことが事故発生の原因として、重大責任事故容疑で無免許の溶接工ら数人の身柄を拘束した。

インターネットサイトでは、溶接工らに同情的な見方を示す書き込みが多く、「事故の裏に隠れているもっと深い問題について、だれも調査しない、そして、だれも報道しない。結局、社会的弱者層の溶接工に全責任を負わせることで終止符を打った」のような見方が少なくない。

香港のアップルデイリー(Apple Daily)は、「たとえ無免許の溶接工が事故の直接的な責任者であるにしても、彼らを雇った工事会社と工事を監督する区の幹部らは、なぜ責任を問われないのか」と疑問を投げかけた。

消防対応の遅れか

一方、出火から鎮火まで約5時間を要したことから、上海市の高層ビルの消防能力不足が指摘され、多くの死者を出した重要な要因とも言われている。

上海市メディアの報道によると、今回の火災事故で100台以上の消防車が消火に当たったが、90メートルの高さまで消火できる消防車は1台しかなく、ほとんどの消防車は50メートルまでしか対応できない。

「皮肉にも、火災発生1週間前の9日、上海市の消防演習が行われ、市消防局の陳飛・局長はマスコミに対し、その消防応急能力、特に高層ビルの消火能力を誇示したばかりだった」とネット利用者が指摘している。

一方、内部情報によると、火災事故直後から、メディアを管制する上海市宣伝部は市内の各メディアに対し、「事故現場のテレビ中継は中止。事実報道を控え、報道内容は市宣伝部の口調を基準にする」との内部通達を出した。それにより、上海市のローカルテレビ局の現場中継が止められた。

現場を取材したある撮影記者は自分のブログで現場の写真を公開しながら、「現在当局の発表は42人だが、私がみるかぎり、100人を超えていたとしても予測から大きくかけ離れてはいないだろう」「テレビで突然止められた中継から、すでに慣れた『仕方ない』という雰囲気が匂ってくる。しかし、真実はきっとある日世に明かされるだろう」とつぶやいた。

事実上、16日発売の上海市の主流新聞紙はほとんど、市宣伝部のこの圧力に屈せず、火災について大量に報道した。

(翻訳編集・叶子)