【大紀元日本11月13日】新疆ウイグル自治区ウルムチ市で5日、「陸海統一計画・海水西調ハイレベルフォーラム」が開催された。中国東北部に位置する渤海湾の海水を大陸を横断し新疆まで引くという計画が議題。「砂漠を潤す」と謳うこの破天荒なプロジェクトは中国で大きな物議を醸している。
中国の新彊日報によると、「海水西調」プロジェクトは、海水を渤海西岸から海抜1200メートルの内モンゴル自治区に送り込み、そこから北緯42°に沿ったサグ地形(凹状地形)を利用して新疆ウイグル自治区まで給水するというもの。最終的に海水を砂漠の塩湖や盆地に送り、人造の海水河や海水湖を形成させることを目的としている。
これらの地域に引かれる海水が蒸発することによって当地の降水量を増やし、砂漠地帯の劣悪な生態環境を改善することが期待できるという。水不足、環境破壊、さらに石油・天然ガスの有効開発という新疆が抱える3つの課題を一気に解決できる画期的な計画だとフォーラムで称えられた。
新彊経済報傘下の亜心ニュースサイトの報道によると、「海水西調」プロジェクトの一期費用は628億元(約7千800億円)で、そのうちの建設費用は567億元(約7千億円)という試算になる。プロジェクトの提唱者は、同計画は6年で実現できると主張している。
計画が報道されてから、専門家の間でさまざまな議論が広まった。「生態系に与える影響が計り知れない」「海水淡水化のコストは高く、サウジアラビアのような資金豊かな国でも慎重な態度をとっているのに、ましてや中国が」「毎年50億立方メートルの海水を調達しても、それによってもたらされる降水量は8億立方メートルにしかならず、新疆の年間降水量の1%にもならない」と疑問視する声が高まっている。
報道によると、海水の輸送には腐食しない「ガラス鋼管」を採用するとしているが、専門家は、ガラス鋼管は耐圧・耐摩性が弱いため、海抜差千メートル以上の水圧に耐えることは難しいとコメントをしている。一旦水漏れが起きると土地の塩化を引き起こし、生態系に大きなダメージを与えてしまうという。
「アラビアンナイトよりも奇妙な話」「かつてヒマラヤ山脈に穴をあけてインド洋から暖気流をもらって、チベットを暖かくしようとする提案もあったよね。今回の海水西調といい勝負かも」とネットユーザーはこの大計画を揶揄している。「渤海はすでに汚染しているのに、その水を引いてきても使えない」「海水が使えるなら、海に近い北京や天津の水不足はとっくに解決できているのではないか」「これでまた沿線住民の立ち退き問題が勃発する」と冷めたコメントが飛び交う。
中国では、水資源が豊富な南部から乾燥した北部に水を供給する、史上最大の水利プロジェクト「南水北調」計画も進められている。しかし、南部水源の枯渇や水質汚染のため、プロジェクトは難航している。
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