【大紀元日本11月1日】10月26日、三峡ダムが行った試験的貯水の水位が設計最高水位の175メートルに達した。この貯水により地滑りの誘発や地質災害、ダム底の土砂堆積問題がさらに深刻な問題となっている。
30メートルの水位変動は地滑りを誘発
三峡ダムは、常時満水位と洪水期制限水位との水位変動差が30メートルに上る。世界の大型ダムの中でも最大の水位差とされる。ブラジルとパラグアイの国境を流れるパラナ川に建設された有名な水力発電用のイタイプ・ダムですら、その差はわずか1メートルしかない。
「三峡ダムは毎年、水位145メートルから175メートルまで貯水して再び145メートルに戻る。作り出される落差30メートルの貯水は100年に一度と言われる長江の洪水の規模に匹敵する。言い換えれば、過去100年に一度しか起きない30メートルの落差が今では1年に1度起きているということだ。この事実から貯水池周辺への負担の大きさが理解できるかと思う」と長江水利委員会の匿名の職員は話す。
武漢大学土木建築工程学院の李愿軍教授は、貯水水位が毎年周期的に145メートルから175メートルに調節されることで、周辺に大量に存在する古くからの地滑り地帯と新たに誘発される地滑り地帯の活動が、ますます活発化すると指摘している。
実際、先月21日に、貯水池周辺の「巫山望峡」で2万立方メートルの土砂崩れが起きていた。当局は三峡貯水との関係を否定しているが、これまでの調査で貯水の周期性と地滑りの発生との相関関係が確認できているという。
また、長江三峡集団公司の曹広晶理事長は、水位変動に付随する生態環境の悪化と地質災害は世界的な課題であると述べている。
史料によると、三峡地区では、これまでも中国で深刻な地質災害が多発してきた。歴史上、地滑り事故は100件以上発生しており、大規模な事故は40か所余りにのぼる。崩壊した土砂は数十万から数千万立方メートルで、長江を塞ぎ止め、航行に影響を及ぼしたものは5回以上を数えるとされる。
航路になったアジア最大のアーチ橋の「隠れた危険」
08年三峡ダムが初めて175メートルの試験的貯水を行った際、重慶市の多くの橋や道路の水没、多くの地滑りなどの地質災害を誘発し、21億元にのぼる直接経済損失を出した。この貯水で、航路の安全面でも深刻な問題が存在することが明らかになった。重慶市万州区の長江大橋はアジア最大の一連アーチ橋だが、今や長江航路上の「隠れた危険」となっている。
1997年に建設された大橋のアーチは長さ420メートル。当時は橋と水面が140メートル離れていた。貯水が175メートルになった後、アーチの幅は240メートルに狭まり、実際の有効航路はわずか80メートルに狭まった。橋と水面の距離もわずか30メートルとなり、背の高い船はマストを倒さなければ通行できなくなってしまった。
現在、橋の両側にある橋脚は水面下十数メートルに沈み、アーチ橋の両側の一部はすでに河の中だ。アーチ橋は、垂直荷重を重点的に考慮して設計されており、横からの衝突には非常に弱いという。強風により、数百トンか数千トンの船が舵を失い、橋にぶつかれば、想像に堪えがたい結果になるだろう、と重慶航路局航路所の聞光華主任は話した。
現在、重慶交通大学と清華大学が橋の衝突防止策を講じているが、中国国内では同領域の研究が白紙状態であるため、現在の暫定的な解決案も問題が多いという。同市奉節県の長江大橋でも同様の問題が発生している。
土砂堆積50メートルの難題
聞主任は10月25日、「第一財経日報」に対し、三峡ダムの土砂堆積が最も深刻な場所はダム前の区間で、その厚みは50メートルに達していると明かした。特に、秋は上流からの水流が多く、川底が水流により多く削られるため、その土砂はダム前での堆積をさらに深刻化させている。土砂の堆積により、多くの場所で航路の変更が迫られている。
また、175メートルの貯水後、霧の発生にはもはや季節性がなくなり、規則も見出せなくなっていると同主任は指摘している。
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