映画祭ボイコット騒動 北京、台湾との関係修復意識 「責任は日本にある」

2010/10/28
更新: 2010/10/28

【大紀元日本10月28日】23日に始まった東京国際映画祭で、中国代表団が、映画祭に参加した台湾の名称について主権問題侵害を理由に「中国台湾」に変更するよう突然要求、開幕イベントをボイコットした事件が起こった。それにより台湾の映画関係者も開幕イベントに参加できない事態となり、関係者と台湾各界に大きな衝撃を与えた。

一方、事件後、北京側は台湾との関係修復に乗り出した。27日の新華社ニュースサイトでは、中国当局が台湾との関係改善を「中華民族の全体利益のため」だと謳い、一連の騒動の原因を主催者側の日本に押し付ける動きを見せている。

「中台映画関係者が主催者に抗議」

新華社によると、中国国務院台湾事務スポークスマン・楊毅氏は27日の定例会議で、東京国際映画祭におけるトラブルは各方面の意思疎通が十分に図られていないことに起因すると述べた。「双方(大陸と台湾)は対外関係のなかでの内部消耗を避けるべきで、共に中華民族の全体利益を守るべきだ」と発言し、台湾との関係は「内部問題」だと強調し、団結して対外関係を築くよう呼びかけた。

また、今回台湾の名称を「中国台湾」などに改めるよう突然要求した中国代表団の江平団長は25日、中国紙・環球時報の系列英字紙グローバル・タイムズの取材に対し、トラブルは「台湾の同胞とは関係がない。東京の主催者の間違いだ」と、責任は日本の主催者にあると主張した。

事件が起きた直後の中国国内の報道でも、大陸と台湾の映画参加者が共に主権を守るために、開幕イベントをボイコットし、日本側に対して抗議を行なったとの内容を載せ、尖閣諸島問題を巡る日中間の対立を連想させるスタンスをとっている。24日の「東方早報」は同事件に関する報道で、台湾代表団に対する表記を「中国台湾」とすることを日本の映画祭主催者側が拒否したため、中国と台湾代表団とも集団辞退の形式で主催者に抗議したとしている。

25日の産経ニュースも台湾関係筋の話として、中国側は、尖閣諸島の領有権問題を持ち出し、中台の映画関係者が連帯してグリーンカーペットを歩く「ミニ反日デモ」まで提起したと紹介した。

開幕イベントボイコットは日本への抗議であるとの発言は、中国代表団の江平団長が直後の記者会見の中で行った。「中国代表団をなおざりにし、または我々の要求を尊重しない東京国際映画祭主催者の一部関係者に遺憾の意と抗議を表したい」と述べていた。

名称変更を主催者と交渉するなかでも江平団長は、「中国人の感情を傷付けるようなことが一旦起きると、修復するには非常に困難だ」と、尖閣諸島問題との関連を窺わせるような発言をし、主催者側を脅したという。

中国団団長主導の単発的な事件か

中国側のこうした一連の動きから、今回の映画祭ボイコット騒動の意図は、矛先は台湾に対するものではなく、領土争議摩擦が起きている日本に向けられたもようだが、開幕イベント直前の台湾代表団に対する「君らは中国人か」などといった江平団長の発言と行動が、台湾代表団の反発を招く事態となった。

今回の騒動は台湾本土を大きく揺るがした。各界から抗議の声が相次ぎ、「各党派がこんなに一致したことはない」という。中国の江団長の突然の要求や、台湾代表団に対し、「あなたたちは中国人じゃないのかい」「あなたたちの映画は中国で売りたくないのかい」などと大声で詰め寄った言動について、台湾当局は、「横暴」で「台湾の人々の感情を傷つけた」と批判した。呉敦義・行政院長(首相)は、「明らかに、中国代表団の団長は重大な間違いを犯した。われわれはこれまで何年も『台湾』の名称で、東京も含めた映画祭に参加している」と訴えた。

一方、台湾の中央研究院の徐斯俭・研究員は米VOAに対し、中国の政策決定プロセスは透明性に欠けるため、今回の騒動は江平氏主導の単発的な事件なのか、裏に中国政府の操作があるのかは、今の段階では判断できないと述べた。

「もしそれが中国政府の操作であれば、北京と台湾が今まで構築した暗黙の了解を破ってしまい、馬英九(総統)が作り上げた(両岸間が同じ認識を持つ)話は完全に壊滅した」と徐研究員は指摘し、「もし江平氏主導の単発的な事件であれば、両岸の共通認識の基礎はいかにも衰弱で、偶発的出来事で崩れてしまうことも意味する」という。

(翻訳編集・張凛音)
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