【大紀元日本10月14日】中国の精神病医療の現行制度に重大な欠陥があると指摘した報告書が10月10日、北京で民間公益団体によって発表された。
報告書を発表したのは深圳(しんせん)市にある民間公益団体「深圳衡平機構」と医師、弁護士らによって組織されたボランティア団体の「精神病と社会観察」。10月10日は第16回世界精神衛生日に当たる。
報告書の中で、精神病医療現場で二つの混乱が存在していると指摘されている。一つは治療を受けるべき人が高額な医療費のために治療を受けられないこと。もう一つは健常者であるにもかかわらず、精神病院に送られ、治療を受けさせられること。
北京の精神病専門病院・回龍観医院の楊甫徳院長はインタビューで、現在中国の精神病患者の70%は治療を受けられず、その多くは貧困層だと述べた。
2009年に中国南部の海南省で起きた少女バラバラ殺人事件の犯人は事件前にすでに精神分裂病と診断され、2件の殺人前科があった。少女殺人事件後も治療を受けるのではなく、家族の元に帰された。報告書では、この現状は「すでに社会治安を脅かしている」と指摘されている。
中国疾病予防コントロールセンターの発表によると、2009年に中国の精神病患者数は1億に達し、うち1600万人が重度患者だという。
一方、健常者であるにもかかわらず、精神病院に送られ治療を受けさせられている人もいるという。典型的なのは、政府部門に陳情する直訴者。現行制度では、当事者の意思を問わず、治療費さえ払う人がいれば、強制的に精神病院に入れられてしまう。
病院では「連れてきた人に連れて帰ってもらう」というルールがあり、当事者が健常だと訴えても退院することができず、当事者の権利を守る機関はないという。
河南省在住の農民・徐林東さんは、たびたび陳情を行ったとして、2003年に居住地の政府部門から精神病院に送られ、電気ショックなどの治療を受けた。2004年に家族がその所在を突き止めたが、政府が治療費を支払っているため連れて帰ることができず、入院してから6年半後の2010年4月にマスコミの報道があって、やっと解放されたという。
さらに驚くことに、精神病治療の乱用は精神病専門家にも及んでいる。中国の有名な精神病専門家で、陝西省西安市精神衛生センターの紀術茂教授は、同センターの不正を上級機関に報告したため、精神病患者と診断され、同センターに入院させられたという。
東南大学法学院教授で、衛生法学研究所の張賛寧所長は、「精神病治療の乱用を止めなければ、誰もが被害者になりうる」と指摘した。