【大紀元日本9月17日】ジョージ・ワシントン大学の政治学者で中国問題専門家のディヴィッド・シャンボウ(David Shambaugh)教授はこのほど、同大学で中国のソフト・パワーについてのスピーチを行った。シャンボウ教授は「中国のソフト・パワーは限られており、その発展の空間を制限しているのは現在の政治体制だ」と指摘した。米VOA放送が伝えた。
「ソフト・パワー」という概念は米ハーバード大学教授のジョセフ・ナイが最初に提示したもので、その国が持つ文化や政治的価値観、政策の魅力などにより、国際社会からの信頼や発言力を獲得し得る力のことだと定義されている。
国際社会は中国の動向に目を向けるものの、受け入れてはいない
国際社会において多くの人の目を引くようになった中国の発展だが、「中国の動向に目を向けることは肝要だが、体制が悪く、モデルとして学べるケースではない」とシャンボウ教授は指摘する。また、注目度の高まりは中国のソフト・パワー向上と同義でないとも話した。
シャンボウ教授は1年間、訪問学者として中国社会科学院で中国研究をしてきた。滞在中、政府機関は、ソフト・パワーを政府の宣伝によって操作できると思い込んでいることがわかったという。また同時に、これらの機関は、外国人の見方を操作するには限りがある事もわかっていると、シャンボウ教授は話した。
また、教授はこんなエピソードも紹介した。中国国務院情報部の責任者と交流を図ったとき、「(イメージアップには)どうすればいいのか」と聞かれたシャンボウ教授は、「政府が内情を何とかしようとすることをやめたほうがよい。中国社会そのものはとても多彩で、奥深い。そのままの中国を見せればいいのに、外国人の見方を気にする政府の姿勢が間違っている」と答えたら、責任者は「何もしないだって? それはまさに私の仕事なのに」と言ったという。自分の話は無駄だったと教授は知った。
中国で難民庇護を申請する人はいない
近年、世界各国から中国へ留学する者が増えている。シャンボウ教授は、これは中国のソフト・パワーの一定の向上を反映した結果とする一方、中国から外国に渡った多くの留学生は、中国に戻らず外国に留まることを選択したことにも注目すべきだと指摘した。1978年から2008年までの間、中国から139万人が世界各地に留学したが、中国に戻ったのはその内の2割の23万人程度と、中国教育部のデータを引用して述べた。残りの8割の学生は帰りたがらないという事実を直視し、反省しなければならないと指摘した。さらに教授は、中国外交部に難民庇護を申請している人がいるかどうかを訪ねたところ、「いない」という答えが返ってきたという。
かつては「周囲からやや親中派と見られていた」と述べる教授は、1年間の滞在で、中国を「よりはっきりと見えるようになった」と話した。
政治体制は致命的な弱点
中国政府は「和諧社会(調和の取れた社会)」など、社会不安を抑制するスローガンを使い、ふさわしい態度を示すようにと各方面に要求してきた。国内にいる外国人も例外ではない。「態度を示すなんてことには慣れていない」とシャンボウ教授は話し、「しかし、いわゆる敏感な話題に中国政府と違う観点を述べると『中国の事情をわかっていない』というレッテルが貼られてしまう」と述べた。
中国はソフト・パワーに欠けている――。 国際社会の中で魅力を出せず、ソフト・パワーを貧弱化させた致命的な要素は、政治体制にあると教授は指摘する。この体制が続く限り、また宣伝によってイメージアップを図ろうとする考え方を変えない限り、中国のソフト・パワーの向上は望めないとシャンボウ教授は結論付けた。