温家宝談話の報道に見られる陰と陽

2010/09/16
更新: 2010/09/16

【大紀元日本9月16日】8月下旬、温家宝首相は、中国の改革開放のモデル都市・深圳市を視察した際に、封印された政治改革に言及したが、この談話を回避するメディアもあれば、報道するメディアもあり、歩調が乱れている。

温家宝の言論に対するこれまでの報道方針

これまで、温家宝の言論に関しては、当局の一貫した姿勢と一致しないものがあると判断されれば、情報管理の大権を握っている中宣部が踏みにじってきた。これはすでにひとつの定式だ。米VOA放送は、近年、報道を遮断されている温家宝の言論の例をいくつか紹介した。

1、今年5月、学校や幼稚園などで児童無差別殺傷事件が相次いで発生した。5月13日、温家宝は香港鳳凰TVのインタビューを受けた際に、中国にはより深い社会的な矛盾があり、ますます深刻化する社会矛盾や社会的な不公平などが事件発生の根本的な原因だと述べたが、大陸のメディアは報道しなかった。

2、今年5月4日、温家宝は北京大学を視察し、学生と交流する機会があった。温家宝はすぐそばに座っている大学生に、「あなた達はみな、特別に配置されたのでしょう」とズバリ言ったが、この直言はネットで大々的に伝えられたが、政府系報道機関は一切触れなかった。

3、08年末、温家宝は米国CNNのインタビューを受けた際、天安門事件、インターネットでの情報規制、人権問題およびチベットなど多数の深刻な問題に言及したが、国内メディアにほとんど報道されなかった。ごく一部のメディアは報道したが、肝心な部分はいずれもカットされ、片鱗しか見られない。

4、08年10月、チベット騒乱後に温家宝がアセアン会議に出席した際、中共の一貫した「ダライ集団」という呼称をやめて「ダライラマ」と敬称をつけたが、世界から注目されたこの呼称も、報道からは抹消された。

5、07年3月、温家宝は全国人民代表大会の記者会見で、「民主、法制、自由、人権、平等、博愛。これらは資本主義特有のものではなく、長い歴史の中で形成された全人類文明の成果であり、人類が共に追求する価値観である」と述べたが、新華社が配信した記事ではカットされた。

温家宝の最新発言に対する報道上のずれ

温家宝の政治改革についての発言が国内外で非常に注目されているが、深圳TVが温家宝の深圳での活動を報道した特別番組の中で、政治改革についての内容はカットされた。その後、温家宝の深圳での活動を報道する長文「歴史の新たな出発点に立つ」が掲載されたが、温家宝の政治改革についての言論は回避された。

CCTV(中国中央テレビ)は、温家宝の深圳での活動を報道したニュースの中で、「温家宝首相は、改革開放を続けることこそ明るい前途があると述べる」に留まり、温家宝の政治改革についての言論を回避した。

一方、新華社の8月21日報道では、温家宝の政治改革についての言論を避けたが、8月26日付けでは「温家宝は深圳で視察した際に、経済体制の改革を推進するのみならず、政治体制の改革も推進しなければならないと述べ、改革を進化させる兆しとして注目されている」と報道している。

(翻訳編集・小林)