中共宣伝部、報道禁止令連発 混乱状態の中国メディア

2010/08/19
更新: 2010/08/19

【大紀元日本8月19日】「甘粛舟曲禁止令:彼らは動き出した。何通もの通達を出した。今夜9時までに、現場にいる記者は全員撤退しなければいけない。違反者は厳罰に処するという」。これは、上海在住のジャーナリスト曹国星さんの13日付けのツイッターでの発言。8月8日甘粛省舟曲県で起きた土石流災害において、中央宣伝部が各地のメディアに報道規制に関する禁止令を出したことについて、数人の仲間と議論をしている時のつぶやき。

フォロアーらのプロフィールから、このツイッターに集まったのは、中国各地の記者たちが多いようだ。上述のつぶやきをフォローした湖南省地方紙「瀟湘朝刊」のある記者は、次のような発言をしている。「今、(舟曲から)蘭州に戻った。現地のテレビの土石流災害ニュースを見たところ。政府の功績や美談を褒め称える内容ばかりで、アナウンサーのポエティックな表現にちょっと違和感。記者になったばかりの頃、どんな些細なこともニュースだと思っていたが、十年のキャリアを通して今は、重大なニュースであってもニュースとして報道しないということがやっと分かった」

中共宣伝部内部の通達を披露するブログ「真理部」に掲載された情報によると、8月、中国各地で続発した事件や災害に比例して、中共中央宣伝部からの報道禁止令も相次いでいる。「聖元」粉ミルクによる乳児の性的早熟の問題や、34周忌となった「唐山大震災」などに関するネット評論を削除するようにとの命令が、各地のメディアやポータルサイトに通達されたという。その他、吉林省の洪水災害に関して各メディアの独自取材を禁止し、一律に新華社通信の報道を転載するようになど、数多くあると指摘されている。

これについて、北京のあるメディア関係者は、米RFA放送局の記者にこのようにコメントした。「これらの事件はいずれも敏感な話題。聖元粉ミルクの問題はきっと三鹿粉ミルク事件と同様、多くの不正がこれにより摘発され、社会へ不安をもたらしてしまう。(長沙の)爆発事件は模倣者が続出することを恐れて報道規制しているのかもしれない。山東省の(幼稚園児殺傷)事件も政府への不満につながるため、絶対報道は許さないだろう」

中共中央宣伝部は、宣伝や言論を管理する部門で、日頃報道規制や情報統制を厳しく行っている。一方、インターネットの普及に伴い、その情報規制が今までになかった挑戦を受け、国民から一層その信用度を失っている。

7月28日に起きたガス爆発事故で、ある幹部が、事件現場から中継していた地元記者に「誰が中継していいと言ったのか」と厳しく叱る場面が視聴者の目に留まり、市民から当局の死者数の発表統制や真相隠蔽に不満の声が噴出した。世論の影響を恐れたのか、最近、南京市の葉皓・宣伝部長が中共機関紙「人民日報」に文章を発表し、「突発事件が起きた時、メディアやネットによる報道を封殺してはいけない」と論じた。しかし、同記事で、7月28日のガス爆発事故の中で、「南京市は即座に事件の真相を発表し、世論を有効にリードしていた」と同部長がアピールし、読者の更なる反感を買った。

報道の操作に伴うのは、情報の混乱と不一致。三峡ダムの洪水対応力について、ネット利用者が過去の政府系メディアの報道文を見比べ、当局の情報統制について指摘している。2003年の三峡ダムの関連報道で、「1万年に一度の洪水でも防ぐことができる」としていたが、

ネットユーザーが、かつての三峡ダム宣伝の記事から、当局の情報操作を指摘。

4年後の報道では、「千年に一度の洪水を防ぐことができる」となった。更に翌年の報道では、「百年に一度」に変更した。今年の7月になり、大規模な洪水が三峡ダムに迫った7月20日、報道は、「今年の洪水防衛対策は、三峡ダムに全部頼ってはいけない」とのスタンスに切り替えた。

また、同じ事件や人物の発言について、同じ政府系でありながら、全く相反する内容の記事を報道するケースもしばしばある。中国地震局研究員・孫士鉱氏が今年2月に世界各地で相次いだ地震についての発言について、人民ネットは、同氏が、「世界が地震活動頻発の時代に入った」と発言したと報道したのに対して、「国際在線」は、「世界は地震活動頻発の時代に入っていない」と孫氏が発言したと報道した。

大衆誌「百姓」の前編集長・黄良天氏は、中国のメディアの現状について、「中国にはメディアがない」とコメントした。「新聞やテレビなどはいずれも宣伝道具にすぎず、独立したメディアはない」と指摘している。

一方、ネット作家・昝愛宗氏は、インターネットの発達により、官制のメディアが日増しに民衆から信頼を失っているとコメントした。最近の中国国内ネットでもよく見られる現象だが、官制メディアが報道または主張を出したら、ネットの草の根たちは直ちにこれに反撥したり、是正したりするのである。

「国民にとって、中宣部はもはや『耳をおおって鈴を盗む』(自らを欺く)ようなものになっている」と昝氏はコメントしている。

(日本語ウェブ翻訳編集チーム)
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