【大紀元日本6月6日】「家の近くにあるバーのバーテンダーに上海総合株式指数の先行きについて聞かれた私は、2600ポイント台前後で推移していくだろうと答えた。しかし彼は、『違う!共産党は許さないだろう』と激しくリアクションした」
独立派エコノミスト謝国忠(アンディ・シエ)氏はブルームバーグに発表した評論記事で、「中国の株式市場はすでに貧しい人々のカジノとなっている」とコメントした。すでに歴史的低水準に落ちた中国の株価純資産倍率(PBR)は、どうしてまだ下がっているのか、その答えは、「お金持ちはすでに株式市場から撤退し、不動産市場に流れた。不動産市場が崩壊したら株式市場は少し救われる」としている。
中国国内経済ニュースサイト「財新ネット」がブルームバーグの英文記事から翻訳した中国語の記事が、謝国忠氏本人のブログを含め、中国国内経済紙など多くのメディアやブログに転載され、反響を呼んでいる。金融投資顧問でもある同氏は、元モルガン・スタンレーでアジア担当チーフエコノミストだった。2000年-2006年のアジアベストエコノミストとして、国際金融専門紙「Institutional Investor Magazine」で選出された。現在は上海市在住。
次は「財新ネット」の中国語バージョンを元にして翻訳した内容の続き。見出しは編集者より。
その後10分間、このバーテンダーは、政府は今後3年から5年の間に、必ず(上海総合株式指数を)8千ポイント台にまで急騰させると説得しようと話し続けた。
「香港市場はすでに2万ポイント台まで上昇しているから、上海総合が8千ポイントまで上昇するのは理屈に合う話だ」と彼はいう。
現在、中国株式市場の投資家人数は世界各国と比べて最も多い。上海と深センの両株式取引所の取引口座を持つ投資家の人数はすでに1.24億人に達している。私の観察では、投資家たちの熱い投資意欲は依然高い。
中国株式市場の時価総額は国内総生産(GDP)の53%を、そしてマネーサプライの31%を占めている。一方、株価純資産倍率(PBR)は2.5倍という歴史的低水準にもかかわらず、株価は下落し続けている。それはなぜなのか。
同時に負ける不動産市場と株式市場
中国政府が不動産価格抑制政策を打ち出したことで、多くの投資家は、これから投資マネーが不動産市場から株式市場に流れていくのを喜んでいる。現在、「投資マネーは不動産市場と株式市場の間で流動し、その他に流れるところがない」との見方は、一部の投資家の間で最もポピュラー。しかし、不動産市場には急落が見えてこないにもかかわらず、株式市場はすでに20%急落した。
政策と流動性が中国株式市場を左右する2大要因である。今現在、この二つの要因は株式市場にとって不利となっている。中国政府はソフトランディングを希望しているが、不動産市場に関するバブル論争が終息しつつある中、不動産市場の抑制政策の必要性については普遍の認識となっている。政府が不動産市場の流動性を強く握り締める時、株式市場の流動性も必ず影響されるだろう。すなわち、この二つの市場が同時に負ける結果となる。
株式市場はただ単に不動産価格抑制政策に付随した犠牲品ではない。不動産価格の高騰で、企業、特に金融企業に大きな利益をもたらした。現在、在庫の不動産物件、建設中の物件及びランドバンク(※)の価値はすでにGDPの3倍を超えており、不動産価格の上昇幅が20%に達した時、そのもうけはGDPの60%を占めることになる。
通常の経済体において、企業の収益はGDPの約10%を占めている。資本の増価が6倍となった時、企業は財務的な手法でその資本増価を会計上の収益に変えようとする。不動産価格が上昇しないで、さらに下落し始める時、これまで高収益をあげた企業は突然莫大な赤字に見舞われることとなる。
銀行株
中国の国有銀行は株式市場において総規模5千億元(約6兆7500億円)の資金調達を図るため、今列を作って並んでいる。そのうちの3分の2は香港市場で調達されるが、それでも残りの3分の1は国内のA株式市場の忍耐力を試すのに充分な金額であろう。2009年国内のA株式市場で調達された資金総額は4560億元(約6兆1560億円)に上った。
銀行関連株を購入する良いタイミングは銀行の危機が終わる直後である。しかし、銀行が不動産価格抑制政策の対応措置として株式市場から膨大な資金を調達する時、これは銀行関連株を購入する良いタイミングではないかもしれない。
これまで、バリュエーションは中国株式市場に投資する有力な根拠になったことがない。現在、株価純資産倍率(PBR)は低くないが、しかし国際的基準でみると合理的な水準にある。投資家に対して、株価収益率(PER)に注意を払い過ぎないようにと助言したい。資産バブルは真のPERを大幅にゆがめるだろう。また、バリュエーションの低下は中国株式市場の正常化プロセス中の一部であろう。
長い間、中国株式市場のパフォーマンスは流通量の少ないネット関連株のようなものだ。近年、株式市場における改革で中国株式市場は完全な流通を実現できた。現在、市場外の値引き取引の影響を受けないため、中国株式市場に関する評価は正常化している。これは進歩の兆しであろう。
しかし、多くの人々を失望させてしまうのだが、結論として、上海株式市場は直ちに6千ポイントの大台に戻ることはないだろう。
市場の崩壊
富裕層の投資家は今、株式市場に未練が残っておらず、不動産市場の投資に身を転じた。その中で、大部分の投資家は不動産価格は上昇する一方で、下落することはないと固く信じている。彼らには1997年の暴落の記憶がないのだ。
一方、中国株式市場は2007年から08年において、1年間も経たないうちに6千ポイントの大台から1700ポイントに暴落した。資金が潤沢な不動産投資家は株式市場が地獄であることに気付いた。これも不動産市場が2007年以来繁栄を持続してきた原因。株式市場はそれ以来低迷を続けてきた。
中国の多くの個人株式投資家は主要都市の不動産に投資する力を持っていない。彼らは株式市場でより多くの利益を設けてから、不動産市場で闘おうと望んでいる。これは、株価の下落ではなく、逆に上昇を抑制した。
先のバーテンダーの話に戻るが、最後に、彼に先行きの良い株を教えてくれと言われた。7万元貯めた彼は、車が買えるほどのお金を稼ぎたいと言った。
「仕事の収入では車は買えない。株式市場で20万元儲ければ、いい車を買えるのだ」
しかし、不動産価格が高水準に維持されている限り、一般投資家は株式市場から車を買えるお金を儲けたいという考えを捨てるべきだ。
※ランドバンク(Land Bank)とは、更地を購入して寝かせておくことによって将来高く売れて高い投資利益を得られる制度をいう。