【大紀元日本5月25日】中国国営新華社通信は24日、近年深刻化する汚職幹部の海外逃亡問題を論じる記事を掲載し、ここ30年間で約500億ドルにも上る資金を伴う逃亡劇の背後に、国際化した「利益の連鎖」が存在すると報道した。深刻な汚職幹部海外逃亡の事態を受け、当局は先月、2項目の暫定規定を出案、汚職幹部の海外逃亡による資金流出の管理を強化しようとしているという。
中国当局の機関紙「瞭望」が今年1月に発表した数字によると、ここ30年間で外国に逃亡した中国の汚職幹部は約4千人で、彼らが海外に持ち逃げした資金は約500億ドルに上るという。
汚職幹部による逃亡劇の幕開けは、自分の家族を海外へ移住させることから始まる。彼ら自身はしばらくの間、1人で国内に残り幹部職に従事し、さらなる資産を築き上げる。いったん汚職が発覚すると、家族が待つ国外へすばやく逃亡し、家族と共に海外で豪奢な生活を送ることで幕を降ろす。
この逃亡劇のスムーズな運行には「サポート体制」が必要とされる。資産の海外移動には地下銀行の存在が不可欠であり、02年に香港で突き止められた汚職幹部「御用達」の地下銀行案件では香港の「宝生銀行」の高級マネージャーも起訴された。08年に逮捕された江蘇省「銭氏地下銀行」の主犯・銭子程の供述によると、6年間で海外に移動した資金は85億元(約200億円)に上るという。
汚職幹部逃亡劇の立役者である地下銀行以外にも、海外渡航時の資産の持ち出し役、幹部親族の留学・移民手続きや移民後の生活の世話役など、きめ細かいビジネスが国内外に存在することを、24日付け新華社通信は示唆している。
ここ数年、香港やマカオを含む国外へ移住した高級幹部の親族は108万人に達し、彼らを取り囲む汚職資産の「利益の連鎖」は多方面にわたる。金額は膨大で、ビジネスは国際化の様子を呈しているという。
深刻な汚職幹部による海外逃亡の事態を受け、中国当局は先月23日、中国共産党中央政治局の定例会議で、「党幹部個人の所得公表についての規定」「国外に移住した配偶者又は子女をもつ公務員の管理強化についての暫定規定」が審議された。今まで曖昧な記載が可能だった所得の申告制度が、住宅状況、投資状況、親族の職業、出国状況などを含む詳細な記載内容が求められるようになった。
一方、海外に逃亡した汚職幹部の数や持ち逃げ資産の金額についての認識の食い違いも浮かび上がる。新華社通信の報道によると、上述の「瞭望」紙が発表した数字は中国商務部の統計によるものとされ、各メディアに引用されて来たが、先月25日、商務部スポークスマンは商務部がこの種の調査をしたことはないと言明した。
また、同報道によると、4年前の06年5月に、中国公安部が公表した数字では、海外逃亡中で汚職の疑いがある幹部は約800人で、320人が逮捕され、持ち逃げ金額は約100億ドルに上るという。「瞭望」紙の4千人、500億ドルとは大きな食い違いがある。しかし、先月28日北京大学が発表した汚職実態の調査研究の結果は、概ね商務部が否定した数字と一致しているという。
数字の認識の違いのほか、中国と犯罪人引き渡し条約を結んでいる国が少ないことも汚職幹部の海外逃亡の抜け道となっている。アメリカ、カナダなどの先進国は逃亡組の楽園となり、一旦逃亡を果たすと案件の審理が極めて難しくなるという。
(翻訳編集・張YH)