教育長失脚により、収賄校長98人が集団自首=中国教育界の闇

2010/05/20
更新: 2010/05/20

【大紀元日本5月20日】5月10日、中国広東省検察院より、同院が管轄する省内で09年度に取り扱われた案件のうち、モデルケースとなる10件をまとめた「2009年十大典型案件」が発表された。

その第2位にランクされた案件は、広東省英徳市の教育長(当時)・頼来新の長期にわたる収賄と、それに関与した小・中学校の校長98人が集団で自首したというもので、中国教育界に蔓延する腐敗の一端を示した事件として注目されている。

教育局長の失脚

広州市の有力紙「羊城晩報」の5月16日付け報道によると、2008年の初め、同市検察院の反貪局(腐敗防止部門)へ複数の市民から通報があり、当局の捜査を経て頼教育長の収賄が発覚。同年4月16日に刑事拘留され、その12日後に逮捕された。頼来新に代わり、同市教育局長には現職の陳漢明氏が就任した。

人口約100万人のうち、15万人が学校の生徒・学生である英徳市では、学校用の制服が巨大な市場であった。2008年以前から、3人の学校制服販売業者が、英徳市の学校制服市場を牛耳っていた。特に、その中の2人である洪亜良と黄輝標は、制服販売における勢力範囲の拡大を互いに目論む競争相手であった。

その便宜を図ってもらうため、洪と黄は、2001年に英徳市教育局長に就任した頼来新にそれぞれ賄賂を贈って、自分に有利な「関係」を築こうとした。 2001年から2008年までの間に、洪と黄が合計20回にわたって頼来新に贈った賄賂は、総額29万5000元(約400万円)に上った。

その他にも、校舎建築業者をはじめ、内装、電気設備、緑化、修理など学校関係のさまざまな業者から賄賂を受け取っていた頼来新は、2008年11月4日、広東省検察院において66万5000元(約900万円)の収賄罪により、懲役4年、財産没収10万元の判決を受けた。

校長98人「集団自首」

頼来新は教育長の立場を利用して、自身と「関係」のある制服販売業者を採用するように、各学校の校長に対して働きかけていた。

また、その頼来新に関係して、業者側も自身に有利になるよう「労務費(ねぎらい金)」と称する裏金を各校長に贈っていた。

このような裏金の多くは、1回あたり1000元ほどの小額のものであったが、賄賂であることは変わりない。

英徳市検察院の調査対象となった校長は、かつて校長職にあった者も含めて100人以上に上った。

2008年7月、検察院がそれら調査対象者に罪を認めて自己申告するように促したところ、98人が裏金を受け取ったと「自首」してきた。

英徳市検察院の副検察長・陳先敬氏によれば、収賄罪として起訴される案件は一般的に金額が1万元を超える場合であるが、自首した校長の収賄額は概ね数千元以下であり、自首とともに該当金額を上納しているので、検察の最終判断として、1人を除く97人を不起訴処分とした。英徳市職業技術学校校長・朱玉坤だけは、収賄額が数万元であったため起訴されたという。

97人のうち、一部はすでに校長職を引退していたが、その他の多くは現在も「一校の長」として教育現場にいるという。

検察のアピールと庶民感情との乖離

この案件が「2009年十大典型案件」の第2位にランクされた理由は、司法担当者が正常かつ寛容に業務を進めた結果、主犯を懲罰するとともに100人近くの校長を自首させることに成功した「優れた案件」として、検察の業績を広東省全域にアピールする狙いがあると見られている。

一方、このような中国教育界の腐敗の状況に対し、「教育界といえども浄土ではありえない」「教育者が不正をして、どうして子供を教育できるのか」「起訴されなかったとは言え、道徳的観点からすれば、収賄校長が校長であり続けるのはおかしい」など、多くの人がネット上に驚きと批判の声を寄せている。

(牧)