【大紀元日本5月12日】隣人の失踪を起因とする殺人疑惑で、死刑(執行猶予2年)を宣告され、11年間服役した河南省商丘市柘城県在住の趙作海さん。今年5月に、死んだはずの被害者が突然、姿を現したため、趙さんは無罪となった。釈放を告げられたとき、趙さんは「刑務所の長年の管理と教育に深く感謝する」と一礼した。事件を報道した中国メディアのほとんどの記事に書かれており、インターネットユーザーからはブーイングを浴びている。
「刑務所での暮らしは安定」
中国メディアの報道によると、趙さんは取り調べを受けている期間中に、9回も罪を認める発言を繰り返したという。死刑判決を言い渡されても、一度も上告しなかった。その理由は、「逮捕前貧しい生活に比べて、刑務所での暮らしは安定している。落ち着いて服役すれば、刑期が短縮され、早く出られる」と答えたという。
一方、「新京報」は、趙さんの実姉が趙さんに「どうして罪を認めたのか」と聞いたところ、趙さんは「そうしないと殺されるから」と答え、姉に頭上の傷を見せたと報道している。
5月4日、無罪釈放と知らされたとき、趙さんはしばらく沈黙、そして号泣した。そして、少し落ちついた趙さんは、刑務所の長年の管理と教育を感謝する言葉を口にした。「年寄りの私に刑務官はやさしくしてくれた」という。服役中の態度が良かったため、二度にわたり刑期を短縮された。また、無罪判決を正式に言い渡されたとき、「遅すぎた公正な司法判断の前に、趙さんは思わず一礼した」と中国メディアは報じた。
四人の子どもを持つ趙さんが逮捕された後、妻は一人の子どもを連れて再婚し、残りの三人の子どもは親戚の家を転々として育てられ、学業も中断せざるを得なかった。土地も手放したという。
皮肉にも、当時裁判に関わった公安局の幹部はいずれも昇格した。
釈放後「旅行させられた」
釈放日の9日、趙さんを待っていた親族は、公安局からの電話を受け、趙さんは県の幹部たちと一緒に旅行に出かけたと告げられた。親族が同行の幹部らの携帯電話に掛けても電話は繋がらなかった。その日の深夜になっても、趙さんの姿は自宅に現れなかった。
メディアの報道によると、釈放された趙さんに対して、柘城県は「しばらく旅行させる」と言った。これ以上発言させないようにする県の思惑は明らかだった。
翌日深夜、失踪36時間後、趙さんはやっと親族の家に就いた。その後、メディアの取材を一切断ったという。
ネットユーザーが反発:「させられるばかりの中国人」
政府に感謝した趙さんの発言に、インターネットでは一斉にブーイングが起こった。
あるユーザーは2009年の「今年の漢字」に選ばれた「被」(中国語で受け身を示すことば、市民に権利がなく、抵抗することもできず、受身のまま過ごすという意味)を使って、「殺人者にさせられ、罪を認めさせられ、求刑され、無罪にさせられ、旅行に行かされ、人民は果たしてこの国の主なのか?」と不満の気持ちをぶつけていた。
「趙さんをしっかり教育すべきだ。国に感謝し、共産党に感謝し、この英断がなければ、釈放されることもないだろう。当時の右派らも(自分たちを迫害した共産党に)深く感謝したのではないか」「まず共産党と政府に感謝、そして親に感謝、あなたの人権は共産党と政府によって守られたのよ」と皮肉るコメントも見られる。
「趙さんは北京五輪で金メダルを取った小娘よりずっと頭がいい」と皮肉の書き込みも相次いだ。今年2月に、バンクーバー五輪で金メダルを獲得した女子ショートトラック選手の周洋さんはインタビューで「両親に感謝したい」とコメントしたが、「まず国に感謝すべきだろう」と政府幹部に一喝され、コメントのやり直しをさせられ、話題となった。
「9回にわたる罪を認める自白はどうやって手に入れたのか。彼らは一体どういう手段を使ったのか」と、取調べの違法性を問題視する書き込みも目立っている。