英ドキュメンタリー「中国のオリンピック虚言」

2007/11/01
更新: 2007/11/01

【大紀元日本11月1日】来年の北京五輪に備え、強引な都市整備と開発を進める中国。その陰には、家を取り壊され、立ち退きを余儀なくされた人々が150万人いるといわれている。支払われる保障金はわずかであり、また全くもらえないケースも多いという。政府の不当なやり方に対して「直訴」する人の多くは、裁判を起こすどころか、そのまま裏刑務所(black jail)」に送られてしまう。中国政府はその存在を否定しているが、イギリス人記者はこのほど裏刑務所の前で、そこに監禁されている直訴者たちを取材した。その模様は、英チャンネル4の人気番組「Unreported World(報道されない世界)」の「China’s Olympic Lie(中国のオリンピック虚言)」で放映された。裏刑務所が外国メディアで放送されるのはこれが初めてだ。

英チャンネル4のアイダン・ハートレイ記者による取材の概要は次のとおり。

*路頭に迷い、強制収容される直訴者たち

記者は、中国各地から数百人の直訴者が集まり、周辺に多くの公安警察および私服警察官が警備する国家信訪弁(民衆の陳情を受け付ける場所)を訪ねた。記者は、ここが正に毎日、人権侵害が行われている場所であると述べている。中国の法律によると、民衆は合法的な審判を受けることができなければ、直訴する権利があると定められている。しかし、信訪弁では直訴者の訴えに耳を傾ける者はいない。

信訪弁の前で記者に訴える直訴者たち (ネット公開写真)

記者によると、多くの直訴者は数千キロメートル離れた場所から長く苦しい旅をし、信訪弁まで辿り着くという。しかし、彼らの問題はまったく解決されず、絶望の淵に立たされているという。

記者が取材の最中に、公安警察が現れ、通訳に対して「国の裏切り者」と罵った。公安警察によると、外国人記者を信訪弁まで連れてきたからだという。

公安警察が現れ、直訴者が記者と言葉を交わすのを阻止した(ネット公開写真)

公安警察は、記者が写真を撮るのを阻止しようとし、また直訴者らが訴状を記者に渡さないよう遮った。どうやら、ここに配置された公安警察らの目的は、人々に直訴させないためのようだ。

記者によると、中国当局はこれまでに、外国人記者が北京市民に対して、取材をすることは自由であると通告していた。しかし、この時公安警察は記者に対し、信訪弁の前で取材する時は許可が必要だと警告した。記者は仕方なく現場を離れるが、多くの直訴者が次々と訴状を彼に渡した。直訴者らはもはや絶望しており、政府が彼らの問題を解決する見込みもないため、外国のメディアにすがるしかないからだ。

地下通路に寝泊りする直訴者たち(ネット公開写真)

記者は、強制的に立ち退きを命じられ、家を失った直訴者らが寝泊りする地下通路を訪ねた。彼らは記者に写真を見せながら、彼らの悲惨な境遇を訴えた。直訴者らの話によると、彼らは家を失ったばかりか、土地開発業者が雇ったヤクザから暴行を受けたという。彼らは結局、野宿するしかないのだ。

*162戸の住民が強制立ち退きに直面

五輪会場から僅か数百メートル離れた住宅区にある162戸の住民が、強制立ち退きに直面していた。住宅の1階には、出て行かなければ、2回目の警告が出され、その次は強制退去させるという告示がでている。この場所は五輪に関係する道路建設に使用するという。

住宅区に貼られている告示。そこから出て行かなければ、強制立ち退きさせるという内容だ。また、退去させた場所は五輪のための道路建設に使用すると記している。(ネット写真)

住民によると、武装警察官が強制立ち退きのために派遣されるが、立ち退きの補償金が極めて低いことから、残ることにしたという。彼らは立ち退きを止めさせるよう法的手段に訴える準備を進めていた。

情報筋によると、約150万人が五輪のために、立ち退きを余儀なくされ、彼らの権利を守る組織は一切ないという。

*立ち退きに抵抗したため、暴力を受け入獄させられた

記者は、劉安軍さん(音訳)から電話を受け、劉さんの古びた家に招かれた。

劉さんは土地開発業者に雇われた4人の男に暴行され、背中をナイフで突き刺され、頭にも大きな傷を負い、両足と片方の腕を骨折させられたという。

劉さんはその後も直訴を続けたが、「公共の秩序を掻き乱した」という理由で、2年の刑を言い渡された。刑務所で劉さんは、何度も警察からスタンガンによる電気ショックを受け、睡眠も食事もなく3日間ずっと立っていることを強要されたという。拷問に耐え切れず、意識を失って倒れた時も、劉さんは警察官から冷たい水を掛けられ、目を覚まさせられてから、拷問を引き続き受けたという。

*住民代表が襲撃された

記者は、ある住民からの電話で取材に出かけた。たどり着いた場所は、立ち退きが行われた1棟の雑居ビルだ。ここの住民の半数がすでに引っ越していた。土地開発業者は出稼ぎ労働者らを空いた部屋に入居させていた。彼らは部屋の外や窓の直ぐ下にゴミを捨てるため、環境は極めて劣悪だ。

土地開発業者は住民を追い出すために、電気と水の供給を断ち、汚水の排水管も破壊していた。そのため、汚水が部屋に流れ込み、耐え難い悪臭が部屋中に充満していた。住民らは入り口のところにレンガを積み重ね、汚水の流入を食い止めているが、あまり効果はない。

土地開発業者が雇った暴漢らに殴られた住民代表のウー・シー・グアンさん。(ネット写真)

住民代表のウー・シー・グアンさんは自宅に戻る途中、面識のない2人組から暴行を受け、腕と足に大怪我を負った。その後、他の2人の住民代表には、土地開発業者から、おとなしくしなければ、同じような目に遭わせるという脅迫の電話がかかったという。

数日前、70歳になる住民代表は朝の体操をしているとき、突然後ろから頭を殴られ、床に強く押し倒されシャツが血だらけになった。

*直訴者の葬儀

記者は、ちょうど1週間前に亡くなった李さんの葬儀を訪ねた。李さんは強制立ち退きを拒否し、5年間戦った。葬儀は、強制立ち退きに不満を募らせた住民らの集いとなり、抗議活動に発展することを恐れた当局は、多くの警察官を配置していた。集まったのは全員年老いた民衆で、まったく危険性のない人たちだったにも関わらず、何人もの警察官がビデオカメラで老人たちの顔などを撮り続けていた。

その場にいた女性住民は、自分の家も破壊され、

現場の老人たちをビデオカメラで撮影する警察官 (ネット写真)

暴漢らに耳が聞こえなくなるまで強く殴られたと語った。

記者は、「当局は如何なるメディアにもこのことを報道して欲しくない。住民が如何なる形でも自分たちの不満を表現して欲しくないのだ。強制立ち退きさせられた住民の葬儀だって、当局に不安を感じさせるのだ」と解説している。

記者は、亡くなった李さんの妻を取材しようと試みたが、警察がすぐさま通訳の腕を掴み、強制的にその場を離れさせた。

李さんは、外に大量の警察がいて、夫の葬儀はまったく出来ないと訴えた。更に、李さんは警察に「家の者がまた死ぬぞ」と脅かされたという。

記者は「新財富商業ビル」を開発した「新世界中国地産」社を訪ね、李さんは何故このような仕打ちを受けたのかと質問した。すると、強制立ち退き担当のリーダーが現れ、通訳に対して、李さんの件で来たのかと問いかけた。記者が今年の6月に李さんの自宅の一部を破壊したかと質問すると、リーダーは突然、録画をやめなければ、十人の公安警察が彼らの道具を押収するぞと語気を強めた。

記者はその後、地元の政府部門に今回のことを尋ねたが、関係者からは、強制立ち退きの話は聞いたことがないとの返事があった。

*北京近郊の裏刑務所

記者の北京での最後の取材は、近郊にある通称「裏刑務所」だ。すなわち、直訴者たちを拘束する場所だ。直訴者たちは近郊のホテルや宿泊先に拘束されてから、大型バスで地元へ強制的に連れ戻される。このような裏刑務所に、外国メディアが訪れるのは初めてだ。

記者は、鉄の門で遮られ、外へ出られない沢山の直訴者に対面することができた。ある直訴者は、拘束されている間、官吏らから首を絞められるなどの暴行を受けたと訴えた。ひどい暴行を受けて障害者になった者もいるという。また、一部屋に20~30人が詰め込まれており、環境は最悪だという。

「裏刑務所」の管理関係者らが現れ、記者をそこから離れさせようとした。記者は管理関係者らに対し、「何故彼らを監禁したのか」「彼らに対して暴力を振るったのか」「拷問をしたのか」と矢継ぎ早に質問した。その中の1人は、北京当局から直訴者を対処するように言われていると答えた。

後に現れた保安責任者は記者に体当たりし、カメラを破壊した上、記者とカメラマンを監禁しようとした。記者は直ちに警察に通報した。しかし、警察は現場に駆けつけてから、記者たちを逮捕し、6時間も拘束した。北京市公安局は裏刑務所に対する調査にはまったく興味を示さず、当日カメラに収められた内容をすべて処分したと思い込んで、ようやく彼らを解放した。

ビデオ:報道されていない世界:中国のオリンピック虚言

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(記者・周成、翻訳/編集・余靜、田中)
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