【大紀元日本7月2日】中国の農村部では、学費を払えないなどの経済理由で、多くの子供が学校に通えず、教育を受けられないでいる。日本政府の開発援助(ODA)や、民間の慈善募金はこの問題を改善するため、これまでに多額の学校建設資金などを提供してきた。一方で、このような極貧地区では、現地政府が巨額な資金を投じ、豪華な庁舎を建設している。「貧困地区であればあるほど、幹部の汚職が横行」という指摘が聞かれている。全国有数の貧困地区・安徽省のケースにスポットを当てた。
貧困地区の中国安徽省阜陽市穎泉区の楊庄・小学校は、1996年に日本の政府開発援助(ODA)で建てられた。粗悪な建築材料を使ったため、校舎の老朽化が急激に進み、危険家屋となった。そのため、現地政府が駐上海日本総領事館に再度立て替え資金の援助を申請したという。
産経新聞は6月20日、貧困地区として有名な同穎泉区の区役所は、まるで「ベルサイユ宮殿並みの豪華さ」「小学校の建て替え程度なら何百件も可能ではないか」と報じ、日本の関係者からも、「果たして支援が必要だったのか」と疑問視する声が上がっているという。
現地を視察した日本の政府関係者に対し、現地政府は、「庁舎建設と教育費は全く別予算」と説明した。最終的に、日本外務省は8万ドル(約1千万円)の援助を決めたが、「釈然としなかった」という。
産経新聞のこの報道を受け、関連情報を調べた結果、中国当局の機関紙「人民日報」のホームページなどで、この貧困地区の豪華な役所を紹介する写真と文章を見つけた。写真の紹介欄には、「建築物全体は欧州風格で、外観は富んだ変化を含みながら、格別に整然としている」と説明した。米国VOAの記者が実際に現地を訪れ、「高さ十数メートルの柱は高貴と優雅さが溢れ出し、巨大な建物が白色の塀と緑色の芝生に囲まれる中、その巨大な白色の半球状屋根も小さく見えてしまうほと゛…」と形容した。
また、国内の「農村農業農民雑誌社」のホームページの記載によると、この穎泉区役所の敷地面積は42ムー(約8500坪)、総建設費用は3000万元(約4億2千万円)。同穎泉区の年間財政収入は1億元(約14億円)。正面入口にある高さ約3メートルの大理石の階段だけで、50万元を費やしたという。現地の農民は、建物全体が白色で、外観が米国のホワイトハウスに似ていることから、「ホワイトハウス」と名づけたという。
そのような豪華な区役所と対照的に、安徽省は全国有名な貧困地区である。現地農民の年間収入は1人当たり2千元(日本円3万円)も満たない。
人民日報の「強国論壇」に掲載された文章は、安徽省を「汚職幹部の温床」と名づけ、安徽省の貧困は、現地幹部の深刻な汚職によるものと指摘した。
同阜陽市の元市長・肖作新とその妻、同市社会事業保険局の周継美・副局長の収賄汚職案件は、「安徽省始まって以来の巨額な不正流用の幹部汚職案件」といわれている。その元市長は、収賄罪などの罪で無期懲役が科され、その妻は収賄罪や汚職罪、土地違法売買罪などの罪で、執行猶予2年の死刑判決を受けた。
今年3月に、全国人民代表大会(全人代)で温家宝首相は豪華庁舎の建設を厳禁すると発言、4月には、中共中央指導部は関連の通知書を公表し、公的資金、場合によっては借金、貧困地域の救済金、災害支援金などを使って、役所を建設するのを禁止すると通告した。その後、中国当局の政府メディアは、「通知書の強制力が限られているため、これまでの中央の命令と同様で、地方政権にとって、雷の音が強いが、大した雨が降らない」と形容し、豪華役所の建設は全国各地で依然横行している、すでに「治癒できない難病になっている」と報じた。
倒壊寸前の教室とホワイトハウス並みの豪華役所、このような対照的な光景が貧困地区の安徽省に留まらず、全国各地で見られている。上海や、北京などの大都市の林立する高層ビル、地方政府の豪華庁舎、学校教育すら受けられない農村の子供、まさに、中国社会の明暗を鮮明に映し出している。
専門家からは、「中国はすでに格差社会ではなく、大差社会になっている」との声が上がっている。
また、統計によると、日本政府はこれまでに、累計3兆4360億円の対中援助を実施してきた。2008年の北京オリンピックを境に、有償援助を中止する予定だが、小学校建設などの慈善プロジェクトについて、これからも無償援助を続けていく見通し。日本社会からは、対中国経済援助の必要性を疑問視する声が上がっている。