【大紀元日本6月9日】台湾の前総統・李登輝氏(86)は9日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で滞日中最後の講演を行った。今回の来日は「これまでの最高」と振り返り、訪日の実現に尽力した関係者に感謝を述べた。講演後の質疑応答では、台湾の政局や靖国問題など、李氏の政治的影響力に注目する記者らの質問に対し、国家の進歩を決めるのは、政治制度ではなく「精神文化」であり、その国の未来を決めるのは「そこに住む人々」であると主張し、靖国問題については「中国や韓国などで作り上げられたもの…国のために亡くなった人々を弔うのは人間として当たり前」と語気を強めて訴えた。
講演では、後藤新平賞受賞や芭蕉の「奥の細道」探訪、秋田の国際教養大学での特別講義など、今回の訪日を振り返りながら、日本文化を「世界でも独創的な高い文化」と位置づけ、「伝統文化が、進歩した社会でも失われていない」と高く評価した。
また、国家や社会に対する日本人の態度が変わったことについても言及し、経済発展だけでなく「アジアの一員」としての自覚が生まれてきていると評価した。高い精神性と「美学的な考えを生活に織り込む」文化により、日本は今後「もっと創造的で、生命力を持った国になる」と述べた。
講演後の質疑応答では、記者らの質問に対し、国の進歩には「文化が必要」とし、台湾の民主化を無血で果たした自らの経験から、国家的な問題は、「チャレンジ(挑戦・対立)」という姿勢ではなく、「静かな、落ち着いた」対応が重要と示し、安倍首相の就任直後の訪中を囲碁にたとえ、外交政策上「常套な布石であり、この布石がなければ定石は置けない」と支持を示した。一方で、「日本は中国のことをあまり知らない」と注意を促した。
李氏の訪日や靖国参拝に対し、中国外交部が不満を表明していることについては、「中国の指導者は何も言っていない。騒いでいるのはその下の者たちだ」と、メディアがことさら問題を大きく報道することをたしなめた。
李氏が東京入りしたのは、22年ぶりで、講演や記者会見なども初めて実現した。この日の夕方、成田空港から台湾へ戻った。