【大紀元日本5月3日】中国長江の水源は深刻に枯渇している。氷山と雪山が減少し続けると同時に、砂漠化も深刻に進み、自然環境が著しく悪化しているという。このような情況の中、中国当局は北部地域の水不足を解決するための「南水北調」(※)プロジェクトを推進しているが、西部ルートの工程では、長江の日々悪化している水資源がさらに打撃を受けるとの憂慮する声が専門家から上がっている。
シンガポール「聯合早報」の報道によると、南水北調プロジェクトの西部ルートは、長江上流の水を黄河に引くもので、長江上流の通天河、支流の通天河と支流の雅礱江、大渡河の上流地域にダムが建設される。ダムの地点は海抜2900メートルから4000メートルで、長江と黄河の分水嶺であるバヤンカラ山脈にトンネルを掘り、黄河に水を引く。
中国の著名な環境保護活動家である楊勇氏は、昨年夏から今年の春にかけての180日間、長江の水源及び流域において総行程2万キロに及ぶ調査を実施した。
楊氏は20年前、長江漂流探検隊の主力隊員だった。同氏によると、20年前に見た長江の水源と比較して、今日の長江水源の自然条件は、驚くほど悪化しているという。今回の長江水源調査で発見した最新の状況を中共中央の担当責任者に報告する考えだ。
楊氏は独立した立場を取っているため政府と円滑に意思疎通するルートがなく、たとえ意見を述べても、特定の利益や政策に抵触するために、往々にして無視される。しかし、それでも、長江の保護のために奔走し、呼びかけを行うつもりであるという。
また「長江の水源は哀れなまでに枯渇している。夏季においては、広大な河床の中に細々とした水流があるだけで、その周りは大きな砂漠に包囲されている。また、多くの場所で永続的な断流が発生しており、死湖を形成している。死湖はゆっくりと塩水に変わっていき、それに伴い、これらの場所もゆっくりと死んでいく」と指摘した。
揚氏によると、長江の水源地区にある一部の都市は、水不足のために退去しており、川沿いの町は、既に死の町となっているという。また、新都市も水不足の困難に直面している。しかし、これだけ悲惨な状況となっている長江の水源に、更に7つの水力発電所が建設されるという。
実際のところ、落成した発電所の多くは、水不足のために休眠状態となっている。長江水源の氷河が後退し、砂漠が拡大している状況の下で南水北調プロジェクトの西部ルートを進めれば、既に脆弱となっている長江水源の生態系に壊滅的な災難をもたらし、ひいては長江下流の安全を脅かすことになる。
揚氏と長江漂流探検隊は20年前、長江の水源に一つの記念碑を立てた。昨年、水源を訪れると、現在の水源が、記念碑の場所から300メートル後退していることが分かった。長江上流の通天河において、彼らは2日間水を見ることはなかった。掘り起こした雪が融けた後に残ったものは、半分が黄砂であった。
揚氏は「万源の流れである長江がここまで悪化しているとは、人々には想像しがたいことだ」と述べた。
(※)「南水北調」プロジェクト…「南部の豊富な淡水資源を北部の水不足の地区に引く」という中国史上最大の水利プロジェクト。2002年12月に朱・前首相が着工を宣言。東部、中部、西部の3ルートを3期に分け、2050年に完成する予定。
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