本間氏辞任で士気下がる官邸、結束なき「側近政治」

2006/12/23
更新: 2006/12/23

政府税制調査会の本間正明会長による官舎使用問題で、安倍晋三首相が本間氏を擁護し切れず、辞任を了承する最悪の事態となった。内閣支持率の低下は避けられず、官邸内の士気は低下している。また、この問題では、複雑な組織構造が官邸内の意思疎通を妨げていることも露呈された。

本間氏の辞任を受け入れてから一夜明けた22日も、官邸内には重い空気が広がったままだ。ある官邸関係者はロイターの取材に対し「(この問題で)士気が下がっている」と打ち明ける。本間問題では、安倍首相がちぐはぐな態度をとった挙句、本間氏を更迭したとの印象を与えており、官邸の対応のまずさを浮き彫りにした。雑誌報道の直後、本間氏更迭に踏み切るべきとの意見もあったが、首相周辺に退けられたという。

安倍首相は、就任直後に中国と韓国を相次いで訪問。両国首脳と会談し、一気に評価を高めた。しかし、その後はタウンミーティングの「やらせ問題」や郵政造反議員の自民党への復党問題で指導力を発揮できず、さらに本間氏の辞任によって安倍内閣の支持率低下に拍車がかかりそうな展開で、首相の求心力にも疑問符がつきかねない情勢に直面している。 

9月の新内閣発足から約3カ月で、早くも支持率低下の乱気流に巻き込まれつつある中、官邸の構造に問題があるのではないかとの見方が出てきている。その構造とは、官邸機能の強化のために発足したはずのいわゆる「チーム安倍」のあり方だ。

最も大きな問題点は、安倍政権の目玉として導入された5人の補佐官の役割が、いまだに定まっていないようにみえることだ。例えば、経済財政担当の根本匠補佐官は現在、「アジア・ゲートウェイ」構想を手掛けている。これはヒト、モノ、カネ、文化、情報の流れの中で日本がアジアと世界の架け橋の役割を担うという施策だ。 しかし、空港や港湾の輸送インフラの再整備といった性格で、「これまでのインフラ整備とどこが違うのかわからない」といった声が、国土交通省首脳から聞こえてくる。

また、「5人の補佐官が、それぞれ独立の個人商店のようになっている」(政府関係者)との見方もある。このためゲートウエイ構想にしても、他の4人の補佐官と連携することもなく、官邸の外に対するメッセージの発信も弱くなっているのが現状だ。来年度予算編成作業の中で、アジアゲートウエイ構想が、各メディアで大きく取り上げられることもなかった。

安倍首相と5人の補佐官の間に高い壁があり、直接的な接触が予想以上に少ないとの指摘も、官邸関係者の中から出ている。先の官邸関係者は、こうした動きを認めつつ「側近政治になっているのは事実だ」と述べ、官邸スタッフ間にあまり求心力が働かず、結束した動きになりづらくなっている現状をほのめかした。

安倍首相は21日夕、本間氏辞任について「本人が一身上の都合で辞任したいということだったので、やむを得ないと判断した」と、辞任を了承した理由を説明した。首相自身の任命責任を問われても同じ発言を繰り返し、記者団をうんざりさせた。「安倍首相の責任にしてはまずい」との秘書官の意向から、「やむをえない」とバリアを張って記者団の質問をかわした。

「チーム安倍は、言葉がだめだ」−−。ある与党幹部はこう指摘する。例えば、毎日行われるぶら下がり会見では、記者の質問に対し「いずれにしても」で切り出し、質問には正面から答えない。この言葉は「政治家が失言し、ごまかす時に使うものだ」(与党幹部)と指摘する。首相は「闘う政治家」を標榜しているが、口ぐせの「先ほど述べたように」は、言外に「何度も答えさせるな」と逃げの姿勢を表している、との批判もある。

[東京 22日 ロイター]