ユリシーズ国際報告文学賞、中国人作家2人入選

2006/10/11
更新: 2006/10/11

【大紀元日本10月11日】ルポルタージュのアカデミー賞と言われるユリシーズ国際報告文学賞(2003年、独・ベルリンで創設)はこのほど、ベルリンで2006年入選発表および授賞式が行われた。かつて、中国人作家・陳桂隷氏および呉春桃氏夫婦の共同著作「中国農民調査」が2004年にこの賞のトップを飾った。

この賞は毎年、優れた報告文学を選出し表彰するもので、国際的有名な作家10人からなる審査委員会が作品を審査・評価し、順位を決める。1位から3位までそれぞれが5万ユーロ(約755万円)、3万ユーロ (約453万円)および2万ユ-ロ (約302万円)の賞金が授けられる。今年の審査委員会には、英国に在住する中国系詩人・楊煉氏が含まれている。

賞の創設以来、審査委員会は大きく変化を遂げた中国に注目をしている。2004年「中国農民調査」が1位を占めてから、中国の社会問題が再び注目の焦点となった。実際、今年の5月に独メルケル首相が訪中した際、「中国農民調査」の著者夫妻や民主活動家らと面会し、中国農民の現状等について話し合った。

今年は、「中国青年報」=中国共産(中共)党の下部組織、共産主義青年団の機関紙=が発行する週刊誌「氷点」の前編集長・李大同氏の著作「氷点停刊の裏舞台」および周勍氏の著作「民は何を食すれば良いのか―中国食品安全を透視」が入選した。

今年の1月に、中共の歴史を批判する文章の掲載で解任された李大同氏は、中国社会の深層部、もっとも真実な部分に触れている報道は、中共上層部の統治に影響を及ぼすと見なされることから、報道者を対象に懲罰を与えると指示した。しかし、同氏は、記者の責務とは真実を報道し、中国の一般民衆の生活実情を報道することであると強調し、これまで、メディアの主役だった高官から一般民衆にスポットライトを当てることであると主張した。

「民は何を食すれば良いのか―中国食品安全を透視」の著者・周勍氏(ユリシーズ国際報告文学賞サイト)

一方、調査報告を2年の時間を費やして作成した周勍氏は、報告は取材して分かった事実のすべてを記録したとし、例えば、デイクロルヴォス(殺虫剤)が添加された「四川おしんこ」、ケシが添加された「貴州の酸魚スープ」、素手素足で作った不衛生なところ天などを上げた。同氏は、調査報告は、あらためて食品安全問題を提起したいからではなく、制度そのものにメスを入れることが目的であると強調した。同氏は、ウソ偽りは専制制度の特質であるとし、専制制度を終結させることこそ、中国が直面している恐ろしい現実を具体的に初めて改善できるとの見解を示した。

ドイツ雑誌「世界文学」の編集長フランク・ベアベリシ氏が構想した世界各国記者および作家が見た各国社会深層現状を集結し、人類社会の新しい道しるべを、構築するものの創設に同調したアベンティス(Aventis)製薬グループは、2003年に同構想を実現するために、「世界文学」誌、アベンティス製薬グループおよびドイツ・ゲーテ学院がユリシ-ズ国際報告文学賞を共同創設した。

今年のユリシ-ズ国際報告文学賞の1位は、英国作家リンダ・グラント氏の「この町の住民―ある作家が見たイスラエル」で、フランスの作家エリック・オルセナ氏の「棉の郷紀行―グローバル化冊子」およびコロンビア記者ジョアニタ・レオン氏の「弾丸の国―戦争日記」がそれぞれ、2位と3位を占めた。

(記者・田宇)