【大紀元日本10月6日】下村博文官房副長官は4日昼に臨時記者会見を開き、安倍晋三首相が8日に中国、9日に韓国をそれぞれ訪問し、両国首脳と会談すると正式に発表した。中国当局も温家宝・総理の招請を受け、安倍首相が中国に訪問すると公表した。小泉政権に激しい反発をみせていた中国当局が、突然、安倍新政権に軟化した姿勢を示す背景には、鞭が待ち構えているのではと懸念する声も浮上している。
首相は8日に中国・北京入りし、胡錦濤国家主席、温家宝首相、呉邦国全人代常任委員長とそれぞれ会談。翌9日午前にソウル入りし、韓国の盧武鉉大統領と会談、同日中に帰国する。日中首脳会談は昨年4月にジャカルタで行われて以来約1年半ぶり、首相が訪中するのは平成13年以来。日韓首脳会談は昨年11月以来になる。
安倍首相は4日夜、首相官邸で記者団に「日中関係、日韓関係は極めて重要な二国間関係だ。発展のためにも全力を尽くして参りたい」と強調したと共に、「(戦争の)反省の上に立って日本は戦後、自由で民主的な、基本的な人権をしっかりと守り、平和に貢献をする国を造ってきた。戦後の日本の歴史についても話をしたい」と語った。
中国も安倍首相訪中を正式発表
中国外務省の劉建超・報道局長は4日、安倍首相が8日に訪中して胡錦涛・総書記、温家宝・首相と会談する日程を正式に発表した。発表文の中で、「中日双方は、両国関係を影響する政治的障害の克服と、両国の友好協力関係の健全な発展の促進で一致した。そのため、温家宝総理の招請に応じ、日本の安倍晋三内閣総理大臣が8日と9日、中国を公式訪問する」と談話を発表した。
また、中国当局の政府メディア新華社通信は、安倍首相の2日の国会答弁を一部引用、『安倍首相が、「村山談話」を引用して、日本の植民地支配と侵略は多くの国々に、特にアジア諸国の人々に多大の損害と苦痛を与えたと述べた」と報道、国連が日本のA級戦犯を裁いた極東軍事裁判(東京裁判)についても、安倍首相が「サンフランシスコ講和条約により、裁判を受諾しており、国と国との関係において、この裁判に異議を述べる立場にはない」と述べたことも伝えた。
一方、安倍内閣の閣僚からは、「中国はすべての条件を取り下げ、ベタ降りの状態だが、利用されないように気をつけないといけない」との声も上がっている。小泉政権に対し、むき出しの憎悪を示してきた中国当局がなぜ、安倍首相の「訪中」を急がせ、ここまで態度を柔軟化させたのか。歴史認識や靖国神社参拝などでどのような対応を迫ってくるのか。「片手で握手する、片手で相手にビンタを打つ」という中国当局の外交術に、安倍首相がどう毅然(きぜん)とした姿勢を貫けるか、政治手腕が試される。日本のあるメディア関係者からは、「中国当局自体が両国間の問題について柔軟化になったのではないことを重ねて理解しておく必要がある」「当局の思惑は見えない中、歴史認識などの問題について、一方的に中国当局から譲歩を引き出される形になれば安倍新政権へのダメージは計り知れない」との声が上がり、「就任のあいさつに訪れた日本の首相に対し、中国首脳が歴史認識などを叱責(しっせき)した上で友好を誓わせた」という形で中国当局が一方的に主張を流布することが十分に考えられると指摘、そうなると政権のイメージダウンは避けられないとの見解を示した。