日本製紙グループ本社は3日、王子製紙による北越製紙の株式公開買い付け(TOB)成立を阻止するため、北越製紙の株式を三菱商事への増資後の議決権比率ベースで10%未満の範囲内で取得すると発表した。これにより増資後は三菱商事(24.09%)と日本製紙あわせて3分の1超の議決権を保有することになり、王子製紙の北越に対するTOBが成立しても、株主総会で王子製紙と北越の統合に反対することができる。
日本製紙は、市場で北越の株式を買い進め、現時点で増資前の議決権ベースで8.49%の株式を保有していると発表した。4日に大量保有報告書を提出する。7日払い込みの三菱商事への増資による希薄化を踏まえてさらに買い増す。
この日会見した日本製紙グループ本社の中村雅知社長は「王子のTOBを阻止するのが(目的の)1つ」としたうえで、他にも多くの製紙メーカーが存在するなかで「王子の強行TOBに(こうした製紙会社は)不安を募らせており(王子のTOBは)製紙業界の秩序を乱す」と不快感を示した。
王子の北越買収が成功すると、連結売上の規模で日本製紙と明確な差をつけられ「著しく不利益になりかねず看過できない」と説明した。
中村社長は、北越紙の株式取得は、経営支配権の獲得を目的とせず、三菱商事による北越紙への増資が完了した後には、三菱商事、北越との間で「緩やかな協力関係を築くため協議に入る申し入れをしたい」としている。中村社長は、業界再編を否定するわけではないとしたが、本来は「時間をかけて話し合いのもとお互い納得して経営統合や合併をするべき」と述べ、TOBで株主に意向を問う王子のやり方はそぐわないとの考えを示した。
日本の製紙業界が今後成長していくためには、頭打ちの国内市場ではなく海外に成長を求めるべきとの認識を示したうえで、海外進出する際は「ナショナルプロジェクト的に緩やかなアライアンスをやり、国内は乱さないで、海外に日本連合軍的な格好で出て行く形を組み立てていければいい」と語った。中村社長は「こういう提案を北越に限らず、他にもしていきたい」と話した。
今回の北越株取得の資金は自社のコマーシャルペーパー(CP)で調達し、財務上の影響はないとしている。ファイナンシャル・アドバイザー(FA)はモルガン・スタンレー証券を起用した。
王子製紙は、日本製紙の北越株取得の発表を受け、王子の経営統合案は、北越製紙の株主、従業員をはじめとするすべてのステークホルダーにとってベストな提案と確信しており「公開買付けの成功に向けて努力を継続する」とのコメントを発表した。
北越製紙は、日本製紙による株式取得の発表を受け「自主独立経営、中長期的視点による効率的な経営、地域社会への貢献等に理解、賛同をいただいた」と歓迎するとともに「今後も自主独立経営による企業価値の確保・向上に努めていく」とのコメントを発表した。
三菱商事は、日本製紙による北越株取得について「コメントする立場にない」としている
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