増資は既存株主に短期的に負担だが、長期的にメリットに=日航社長

2006/07/29
更新: 2006/07/29

日本航空西松遥社長は28日の定例社長会見で、今月実施した公募増資について、既存株主にとって短期的には負担だが、長期的にメリットにつながるとの認識を示した。株主総会直後に増資の実施を決定したことについては、既存株主など関係者に不快な思いさせ申し訳ない、と述べた。

調達した資金は、2006年度―10年度の中期経営計画で航空機の購入などに充てると説明して「既存株主にとって短期的には負担をかけることになるが、老朽化した機材ではビジネスチャンスを逃すのでかえって申し訳ないことになる」と語り、増資への理解を求めた。

西松社長は、ボーイング747型機や777型機といったジャンボ機に比べ座席数が約半分の787型機に移行することで「欧州路線1本につき年間15―20億円のコスト削減になる。燃油高が高騰しているため、燃費のいい機材に更新しないと競争に勝てない」と述べ、「今回のエクイティの意義は高いと確信している」と、自信を見せた。

<新株発行は当面ない>

日航は3月に発表した中計で、国際線の座席供給数を20%カットする計画や、09年度に羽田空港の発着枠が拡大することを受けて近距離の国際線を拡大する方針を打ち出している。大型機の小・中型機への入れ替えを進める考えで、10年度までに7540億円を投じて86機の機体を購入する考え。

今回の調達資金1386億円で不足する資金は「JBIC(国際協力銀行)の保証ローンなどを利用したい」と、西松社長は述べた。また、来春にも最大約1000億円規模の償還請求権が生じる転換社債(CB)については、CBの価値が売り出し価格を上回れば償還請求がないだろうとの期待を示して「エクイティ(新株発行)は当面ない」西松社長)とした。 

増資のタイミングが株主総会直後になった理由については「新経営陣が責任を持って(調達した)資金を設備投資などにつなげたいと考えた」と説明。また、新機材の導入にともなって乗務員の訓練など早期に体制を整える必要があるとして「新経営体制の発足後できるだけ早い時期にしたかった」と語った。

ただし「これほど批判を受けるとは、うかつだったと思う。既存株主など関係者に不快な思いをさせて申し訳ないと思う」との認識を語った。

増資の発表後、これまで社長が公の場で説明をしなかったことについては「コンプライアンスを意識しすぎた面があった」と述べた。米国では機関投資家向けに私募を実施したため、払い込み終了までに公で発言すると公募扱いになりかねないリスクがあったと説明し、株主などからの理解を求めた。[東京 28日 ロイター]