江沢民訴訟:大阪地裁却下するも、スペイン判例を追い風に控訴

2005/10/29
更新: 2005/10/29

【大紀元日本10月29日】大阪地裁は10月25日、日本の法輪功愛好者が本年四月に中国大使館と江沢民・前中国国家主席らに対し集団虐殺罪(ジェノサイド)、名誉棄損で損害賠償を求めた訴えを却下する判決を下したが、原告団である愛好者らは、判決を不当とし控訴する構えだ。控訴の背景としては、スペイン憲法裁判所が時期を同じくして、1978年から86年にグアテマラで起きたジェノサイド(大量虐殺)や拷問などについて、これまで管轄権を認めなかったスペイン最高裁の判決を破棄し、管轄権を認める判決を下したことを追い風にしている。ジェノサイドのような「人権犯罪」については、被告人および被害者の国籍や犯罪行為の場所などにかかわらず、捜査・刑事訴追の管轄権を有するとする「ユニバーサル・ジュリスディクション(普遍的管轄権)」認める判断を下した判例は、世界15カ国で法輪功愛好者らが起こしている江沢民への訴訟などに大きな影響を与えるとみられている。

日本の法輪功愛好者ら5人と東京のNPO法人・日本法輪功大法学会(鶴薗雅章会長)は本年4月、徳永信一弁護士(大阪弁護士会)を代理人として、江沢民・前中国国家主席、李嵐清・前中国副総理、羅幹・中国共産党中央政治局常務委員、夏徳仁・中国遼寧省大連市長と中華人民共和国駐日本国大使館に対し、集団殺害罪、名誉毀損で総額6千万円の損害賠償を求める訴えを大阪地方裁判所に提出していた。

判決では、2つの理由から、この訴えが不適とされた。

まず一つ目は、原告らの主張する中国大使館のホームページ上での誹謗宣伝行為が、中国の宗教政策の一環として法輪功についての広報活動を行う行為であり、その活動の目的ないし行為の性質上、主権的行為であるといえるので、国際慣習法上、民事裁判権が免除され、そのため、わが国の裁判権は行使できないというものである。

二つ目は、原告らが主張する拷問・虐待行為が行われたとされる場所は中国であり、日本において原告らの法益について損害が生じたという国際裁判管轄を肯定するための客観的事実関係が認められないという理由からである。

一方、スペインでは時期を同じくして、憲法裁判所がジェノサイドや拷問について普遍的管轄権を認める判決を下した。

この判決は、1992年のノーベル賞受賞者、リゴベルタ・メンチュウ氏がグアテマラにおいて発生したジェノサイドおよび拷問に対し刑事訴追を求めたケースで、司法管轄権の前提として、被告人又は被害者がスペイン人(属人主義)であること、または犯罪行為がスペインで行われたこと(属地主義)を要件とするとしたスペイン高等裁判所およびスペイン最高裁判所の判断を破棄し、ジェノサイドおよび拷問の罪等の「人権犯罪」については、被告人および被害者の国籍の如何、犯罪行為地の如何を問わず、スペイン裁判所は、捜査および刑事訴追の管轄権を有するとする、いわゆるユニバーサル・ジュリスディクションを認める判断を下した画期的なもの。憲法裁判所はその判決の中で、ジェノサイドは「被害者だけの問題でなく、国際社会全体にかかわる問題である。犯罪者の刑事訴追および処罰は、個々の国の責任に止まらず、すべての国に共通する目的である」と判示している。

2003年10月、法輪功学習者に対するジェノサイドおよび拷問等を理由として、前国家主席・江沢民、中国共産党中央政治局常任委員・羅幹およびその他共産党幹部に対し起こされた刑事訴追において、被害者の法輪功愛好者を代理するカルロス・イグレシアス弁護士は、今回の判断は、1999年7月以来、中国共産党が行っているジェノサイドおよび拷問等に対する訴追に道を開くものであり、ジェノサイドおよび拷問に加担する中国共産党員およびその支持者等に対し、スペイン法制は、ジェノサイドおよび拷問に苦しむ法輪功学習者、並びにその他すべてのジェノサイドおよび拷問の被害者の側に立っていると警告した。

日本の原告・法輪功愛好者らの代理人である徳永信一弁護士は、訴えが認められなかったことを非常に残念に思うと話しながらも、裁判官が下したこの判決に対して、大切な論点の抜けがあることを指摘した。つまり、中国大使館のホームページ上での誹謗宣伝行為が、中国の主権的行為であり、国際慣習法上認められないとするならば、今後、この日本で中国と同様な人権侵害が行われることがあっても合法ということになる。日本には日本の法律があり、日本の法律に従って裁かれるべきである。さもなければ、中国の法律のもと、もっと酷い事件が日本で起こりかねないと指摘した。

原告団メンバーも、今回の判決について、日本が正義の立場に立ち、利益に誘惑されることなく、悪いものに対して悪いとはっきり言える国家になってほしいと願っていると語った。