中国共産党による核恐喝もしくは統治危機転化の作戦(上)

2005/08/26
更新: 2005/08/26

【大紀元日本8月26日】戦後60年を迎えるにあたり、原爆の被害を受けた日本を始め、平和を愛する地球村の人々は、人類の平和を祈りつつ未曾有な勢いで核廃絶を呼びかけている。戦後の還暦を迎えた今、核廃絶によってこそ世界の真の平和を守ることができるという認識は、人類の共通な価値観となりつつある。

しかし、戦後60年を迎えた直前の7月14日に、中国人民解放軍の国防大学防衛学院長である朱成虎少将が、香港が主催した国際記者取材団のインタビューに応じた際に、中国の核使用について次のように語った。もしアメリカが台湾海峡の紛争に介入すれば、中国はアメリカに対し核の先制攻撃を行うのだ。中国は西安以東の全地域を犠牲にすることを覚悟するが、その代わり、アメリカは百あるいは二百乃至より多くの都市が廃墟にされてしまうはずだ。

こういった朱氏の発言は、中国のこれまで唱えてきた「核の先制攻撃をしない」という公約を破ってしまい、中国の新しい核政策として世界に発信したのである。この発言は、核不使用や核廃棄の意識がますます高まっている世の中に波瀾を巻き起こし、今もっとも注目されている問題の一つとなっている。しかし、中国外交部のスポークスマンは朱氏の発言についてただ「彼の個人の考えだ」とだけコメントした。

周知のように、中国共産党(以下「中共」)は世論の管理は緻密できわめて厳しい。一般的に、マスコミの取材に応じる際に、特に「外事」関係について発言するなら、必ず事前に関係の部門から発言の内容について認可してもらう必要があり、勝手に放言することは断然許されない。ましてや朱氏が少将の肩書きをもって、外国の記者団の前で責任重大と思われる中国の核政策について独断で「個人の考え」として言及できることは如何にしても常識外れだ。したがって、その内容と形式からすれば、朱氏の発言は私的な場を借りて事前に作られた台詞を述べ、一定の公の目的に達しようとしたのだろうとしか考えられない。

それでは、従来の核の先制攻撃をしない公約を変えた原因は何だろうか、何故今にそれを世界に宣言しなければならないのか。

核の先制攻撃を宣言した原因は複雑でさまざまあるが、その中で、ナショナリズムの膨張が、根本的な素因の一つと思われる。

_deng_小平時代では、国内の経済優先路線をとり、国際において臥薪嘗胆を主張していた。改革開放で外資の導入により、中国の経済は著しく成長してきた。さまざまな社会の問題も起きているにもかかわらず、現象論的に言えば国力が改革開放前に比べてはるかに強まってきた。前独裁者江沢民の時代になると、権力・専制統治を維持するために、_deng_小平の経済優先路線を継続しつつも政治改革を終始拒んでいた。それのみならず、共産党従来の専制統治をより一層強める一方で、共産党官僚の腐敗等もずっと放任していた。そのため、ますます深刻化している共産党の腐敗問題を含め、政治、経済、道徳、文化、社会、環境等あらゆる面において、さまざまな問題が現れ、危機がひしひしと迫ってきた。これらの問題は、抜本的な政治改革を行わなければ、如何にしても解決できないことは誰も知っている。しかし、中国問題評論家が指摘したように、中共にとって、「政治改革を行わなければ死を待つのみだが、政治改革を行えば自殺になるのだ」。 

ますます溜まってくるマグマを疎開するために、江沢民は、「愛国主義」という看板を掲げ、国民のナショナリズム意識を煽ることを対策の武器にして大々的に行っていた。「愛国主義教育」の内容として、当然ながら反米や反日等の「対外的」な科目はその利器とされていた。この愚民政策により、江沢民が政権を執っていた13年の間に「天安門事件」のような虐殺事件も日増しに風化するし、特に共産党の歴史を知らない若世代の間にナショナリズム意識がだんだん膨らんできた。長年にわたり煽られてきた結果、ナショナリズム意識は、若衆に限らずマインドコントロールされている一般国民の間にも広がり、しかも、インテリ階層や国家の政策を決定する階層にまでも浸透していった。近年来ますます高まってきた反米運動や反日騒動や、「反国家分裂法」の成立や、また国際舞台における覇道や潜水艦の日本海域侵犯等の一連の事件は、その慣性による自然的な到達点である。

(つづく)