【大紀元日本6月13日】本文の著者Bill Xia氏は有名な反ネット封鎖専門家で、ダイナミック・ネット・テクノロジー社の総裁である。本文は、英文雑誌『中国人権論壇』2004年第3期からの翻訳で、著者の同意を得たものである。
序
中国の多くのネット利用者は、中国政府の審査や抑圧によって、論議を呼びそうな話題を避け、単なる基本的な人間の欲望に関わる話題に限らざるをえなくなっていた。ただ、たとえそうだとしても、新たな科学技術によって新しいパイプが提供され、中国のネット利用者は、政府が禁止した情報を見ることができるようになり、それに伴って、真相と知識を知りたいと思う気持ちがますます強くなった。そして、これらの真相は、政府全体のコントロールシステムを脅かすものとなっているのである。
この青いピルを飲んだらこのストーリーは終わる。そして目が覚めたら何を信じようと自由だ。この赤いピルを飲んだら仙人の世界に残ることになる。そうなればあなたの前にいろいろな不思議な世界が現れる。―――モフェス・マトリックス
中国政府のネットに対するコントロールは、テレビ、新聞、雑誌などの伝統的なメディアに対するものに比べて、決して少なくない。その上、厳しいネット監察システムも使用されており、ネット、メール、旅行などの、政府行政機関にマークされていない海外からの情報も、組織的に中国に流れてくる事はほとんどない。そこで、もし封鎖されているネットを見たければ、FreegateやUltrasurfなどのソフトをダンロードして利用しなければいけない。アメリカにある中国系の新聞の75%は直接的、間接的に中国政府にコントロールされているため、ネットを通して、あるいは口伝えの情報伝達も抑えられている。
中国政府は、科学技術や行政的な手段によって、情報の操作やコントロールを行っており、まるで、映画「マトリックス」の世界に入り込んだようなものである。その世界では、多くの人の神経系統が一つのシステムに繋げられ、コントロールされ、幻の世界に生きており、現実世界に戻ると、自分が目にした全てのことが信じがたくなり、その現実世界を受け止めることができなくなる。その結果、再び幻のシステムの世界へ戻る人さえいる。
もし本当の情報が中国に伝達されたら、人々はこれと同様の状態に直面することになる。一部の人は、まず驚くか恐れをなすだろうが、政府の審査を受けていない情報を探ろうとする人がどんどん増えるであろう。幻の世界から抜け出し、真相に直面したとき、政府に捻じ曲げられた現実を選ぶ人もいるだろうし、その現実に二度と戻ろうとしない人もいるであろう。多くの中国人がこの政府の情報コントロールを突破したとき、そのマトリックスの世界ではすさまじい爆発が起き、その世界はあっという間に崩れ去ってしまうことになる。
中国のマトリックスから伝わってくる声
2002年3月、ダイナミック・ネット・テクノロジー社(以下DIT)は、代理ネット“ダイナミック・ネット”を起動し、中国に向けてサービスを始めた。中国政府がネットに対する厳しい監視を行う中、ダイナミック・ネットは情報封鎖を突破する技術を提供した。
過去二年間、DITに寄せられた典型的なフィードバックは民族主義的感情を伴っており、人々は海外の情報を信じようとはしなかった。「おまえたちは反中国分子だ」「嘘をつくな、中国はお前たちが言うほど悪くない」「中国は確かに多くの問題を抱えているが、全てを公にすると混乱が起こる」「法輪功学習者は精神がおかしくなって、殺人を犯したりするのに、なぜ法輪功のネットの存在を許しているのか」といったものだった。これらの言論は、国家主義を煽り、捻じ曲げられた情報を注ぎ込もうとする中国政府宣伝部のたゆまぬ努力の現れなのである。
しかし、時間が経つにつれて、DITに対して、もっと確実な多様な情報がほしいという意見が多く寄せられるようになった。例えば、「本当にすばらしい。あなたたちのネットは希望に満ちている」「実に驚くべき情報だ。天安門事件と法輪功の真相がやっと分かった」「このネットによってはじめて本当の中国を知ることができる」「中国共産党はもうだめだ。中国人がこれほどの苦難をあとどのくらい耐えられることだろうか」といったものである。
この二種類の異なる言論とも、中国の事に非常に関心があってのことなのだが、これは、異なる情報に対する異なる反応にすぎないと言える。情報のコントロールと政府による脅迫のせいで、人々は初め、「危険な」言論を目にしたと思うのであるが、そのうち、未審査の情報を目にできる機会を大事にし、感謝するようになる。
ダイナミック・ネットを初めて訪れた人は、まず恐怖を感じ、多くの人が「これは安全ですか?」と尋ねる。中国の多くのネット利用者は、政府に迫害されるのを恐れている。中国では、民主を呼びかける文章や「政府の転覆」に関する話題を討論するのは危険な行為である。そこで、初めてダイナミック・ネットを利用する人の多くが、ニュースのタイトルをいくつか見ただけで消してしまう。彼らは、ネット警察に知られ、逮捕されるのを恐れているのである。
あるダイナミック・ネット利用者は次のような詩で自分の恐怖心を表した。「強権の理不尽を嘗め尽くす。今日忠臣でも明日は裏切り者。人を罪に陥れるのに何の罪名が要ろうか。なんで庶民がいざこざを起こしたりできようか」こういった恐怖は、大躍進、文化大革命、六四天安門事件大虐殺、法輪功や地下教会に対する弾圧など、過去50年間に数千万人の死者を出しながら繰り返された周期的な人災によるものである。
60年代の大躍進による凶作の中、人々は餓死しないように木の皮を食べた。ところが、毛沢東が地方巡視に行った際、そこの人々は皮の剥ぎ取られた木を茶褐色に塗り、まるでユートピアであるかのように見せかけた。1989年の民主化運動後、政府が人々に、天安門事件について意見を書くように求めた際、学生の民主化運動を弾圧した政府自身が「お上の見本」を作り、それを天安門事件に対する理解として人々に押し付けた。
自分の記憶の中の歴史と政府が作った状況が全く異なっているということから、中国人は、政府は多くの事を人々に知らせたがっていないということが分かっている。そのため、嘘の背後に隠された真相を探るという行為は、無用で危険なことなのである。人々は、政府がコントロールしているメディアが提供した情報は捻じ曲げられているということが分かっていても、嘘と真実の間の距離が実際にはどのくらいあるのかということを追及する人はほとんどいない。
長い間嘘の世界で生活して来た多くの中国人は、議論を呼びそうな言論について、冷淡で世間をもてあそぶような態度で接し、その上、もっぱら物質的世界に注目している。調査によれば、中国人がネットを使う目的のほとんどは、官能的な欲望に関するものや、ゲームなどの娯楽である。
しかし、気楽な生活に慣れた中国のネット利用者にしても、命に関わる時にはやはり冒険もしたくなる。2003年4月、中国の指導者にSARSを隠さないよう呼びかけた時、ダイナミック・ネットのアクセス数は50%増え、その拡大が抑えられた後でもこの状態がしばらく続いた。記録によれば、その95%は中国大陸からであった。ネット封鎖を突破する技術を提供しているもう一つの会社―Ultrasurfでも同じ状況が見られた。
マトリックス世界に入ったひび
SARSの他、香港の“23条反転覆法”に反対する大規模な抗議行動や2004年3月の台湾大統領選挙などでも、多くの新たな利用者がダイナミック・ネットを訪れた。このような個人の自由に関わり、時には生死に関わる話題に対しては、多くの人が、恐怖を克服し、心理的な障害を排除し、技術的な障害を克服して、政府の審査を経ていない情報を探そうとするのである。海外の批判的な情報や言論と自分が目にした現実の状況を比べ、ネット利用者は次第に国内の言論をますます信じなくなり、徐々に海外のネット上の人権団体や異議団体から外来の情報を受け入れるようになるのである。
海外のメディアや異議団体は、現在の時事に関して、タイムリーな報道や洞察力のある見解、また中国共産党の統治下で繰り広げられる人権に反する歴史に関する報道を提供している。このような情報が中国に入ってくることによって、打ち立てられてすでに数十年の歳月が経つこのマトリックス帝国に何本ものひびが入った。ダイナミック・ネットではすでに、法輪功の教科書ともいえる『転法輪』の電子版と張良の『六四の真相』が中国の人々に提供されている。長期にわたって情報をコントロールし、人々に政府の情報だけを与えてきた中国政府にとって、これらの情報は間違いなく大きな打撃である。
最近、中国の論壇で興味深い討論が繰り広げられている。イラクにおける囚人虐待スキャンダルに関する中国政府メディアの報道と、最近カナダ国境で中国人女性がアメリカの移民官から被害を受けた報道である。中国政府がメディアをコントロールして反米の宣伝を行ったとしても、多くのネット利用者は、これらの事例から、中国政府は人権についてもっと学ぶべきであるということに気がついた。アメリカのメディアによる報道と中国の報道は強烈な対象をなしているのである。中国はしばしば、人権を著しく侵しているのであるが、人々がそれに対して補償を求める術はない。
ここ数年、中国では、ますます多くの人がネット上で活動しており、人権に反する様々な事に対していろいろな反応が出される。これは、中国のますます多くの人が行動のために立ち上がろうとしていることの現れであり、マトリックス帝国のひびにさらに衝撃が加えられたことになる。いくつかの成功した事例によって、迫害を恐れながらも変化を望んでいる人々が勇気を与えられている。ダイナミック・ネットのアクセス数が増えているのもその現れと言える。
マトリックス帝国の帰着点―崩壊
海外のメディア、政府、中国専門家、情報技術専門家、民主活動家や人権組織は、中国政府のネット監視・コントロール政策と、情報封鎖突破技術に対する反応を観察している。中国政府は、法輪功と六四天安門事件に対して、依然として自らの見解を堅持しており、これらの話題について独自の報道や討論を許していない。しかし、政府のこのような強硬な立場は、結局は関連する独自の情報がいっそう多く中国に流入するのを招くだけであり、その結果、このマトリックス帝国を崩壊に導くことになる。
マトリックス帝国崩壊の展望
中国共産党の第一の臨界点は、中国のいかなる人も、審査を受けていない情報を得ようと思えば、友人に尋ねることによって、結局は手に入れることができるようになるということであり、これには、およそ、30~50万人が恒常的に海外の情報を見る必要がある。第二の臨界点は、ネット上の活動と関係がある。去年新浪新聞に載った“孫志剛事件”の報道は、約100万回のアクセスがあったわけであるが、第二の臨界点には数百万人必要だと考えられている。これまでの発展から見て、これはおそらく数年のうちに達成されるであろう。もちろん一旦達成されれば、この嘘で塗り固められたマトリックス帝国は、再びSARSのときのように公然と嘘をつき、その結果、崩壊の日が到来することになる。
中国政府はすでに、巨額を投じてネット上の情報をコントロールしようとしている。しかし、中国の人々が別の種類の情報を得たいという願望と、中国政府の審査制度が直接対立している。情報封鎖を突破する技術が絶えず発達するにつれて、最後には政府の情報コントロールシステムは崩壊するであろう。
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