【大紀元日本5月8日】社会保障基金から数百億元の資金が株式市場に投入された。しかし、そのさざ波は小さく、あたかも大海に石が沈むように、瞬時に消えていった。
また、国外投資機関のA株購入限度額を引き上げることが吹聴されたが、投資家の購買意欲に対する刺激とはならず、国外投資機関自身も興味を示さなかった。
さらに、国有銀行の不良債権を切り離し、国家の資金を大量に注入して海外市場に上場させ、外国人の資金を囲い込もうとしているが、アメリカはこれを敬遠している。
国家政策によってマーケットメークが行われる中で、株式市場においては、かつて“ガス噴出式”から“報復式”にいたるまでの反発が見られたが、その後すぐにもとの静寂へと戻っていった。最近の取引量は、2001年の半分にすぎない。今後、どんな煽動的なうたい文句を発明して投資家を市場に誘惑するのかは分からない。
証監会は様々な改革を行い、投資家の自信を取り戻そうとした。4月初めに5つの朗報が発表されたが、市場は上昇しなかった。投資家は株式市場に対して絶望の境地に立っているが、この心情は理解できる。株式市場の最近のパフォーマンスから明らかになってきたことは、これは投資家の資産を騙し取る罠だということである。かつて中国の証券業界で権勢をふるった南方証券は、救済むなしく4月29日に倒産を宣告された。また、この前日、上海証券取引所の指数は、過去6年で最低の1135.7ポイントを記録した。南方証券の倒産は、大連証券、新華証券、ジャムス証券等に次ぐものである。最近では、この他にも数多くの証券会社が危機に瀕している。
昨年、損失を被った投資家は90%に及んだが、経済は9.5%の高成長であった。深せん証券取引所に上場している500余りの企業が作成した昨年の事業報告によると、損失を出した企業数は20%増加しており、その損失額もまた20%の増加であった。これはどうしたことなのであろうか?
《Fortune》誌で世界の500強企業に選ばれている鉄鋼会社である上海宝山鋼鉄は、資金にゆとりがあるにもかかわらず、4月中旬に50億株を発行し、250億元の資金を調達した。その結果、当社の株価だけが上昇し、その巻き添えで全体の価格が下落した。このことから明らかなのは、市場を通じ、あらゆる機会を捉えて病狂的な掠奪が行われんとしているということであるが、上層部はこれを許可しているのである!こうした行為は、中国市場に対する投資家の自信を損なうものであり、株式市場の崩壊をもたらすであろう。
腐敗した中国の国有企業は、株式市場における資金の囲い込みと銀行からの借り入れでその存在を維持している。株式市場が一度資金を騙し取る機能を失うと、その負担は全て国有銀行に移ることになる。例えば、上記南方証券の抱えていた80億元の穴は、これを接収・管理する中国建設銀行が引き受けることとなっている。これが意味するところは、不良債権を切り離した後に、新たな不良債権が発生するということである。しかし、国有銀行は実質的に破綻しており、民衆の預金でかろうじて息をつなぐほかない状況にある。しかるに、不良債権を接収する国有会社もまた、形を変えた国有銀行で、不良債権を専門に扱う国有銀行である。これも同様にして国家が面倒を看ることになるが、その資金はどこから来るのであろうか?やはり、民衆の預金となるのではないだろうか?
中国銀行の海外上場前に大腐敗官僚である王雪氷が逮捕され、上場後にも劉金宝が逮捕された。昨年、国は建設銀行に対して225億ドルを拠出し、その財務を見映えよくした上で、今年香港・アメリカで上場することとしている。しかし、ウォール街はこれを拒否し、監督が緩やかなロンドン証券取引所からも未だ回答がない。こうした中で、当銀行の腐敗官僚である張恩照会長が今年の3月に逮捕されたが、巨額の注入資本のうちいくらが彼の懐に入ったのであろうか?最近、財務状況がさらに悪い工商銀行にも150億元の資本注入が行われたが、これは第一段階にすぎず、今後の注入額がいくらになるのかははっきりしていない。農業銀行にもまた資本注入が行われようとしている。ある信用評価機関の推計によると、中国最大規模の両銀行に対し、政府は1100億ドル~1900億ドルもの資金を投入することになるという。しかし、資本注入後に両銀行が収益を上げることができるという保証はない。資本注入の資金は、外貨準備から拠出されるが、問題は、中国もまた返済すべき外債を抱えているということであり、中国人民の血と汗の代償である外貨準備は、こうして中共の特権集団によって浪費されていくのである。
困ったことに、中国の不動産は、地方政府が掠奪を行うためにバブルを作り出したが、これも既に危機に陥っている、バブルが最も大きい上海では、4月中旬以降投げ売りの状態が発生しているが、これを買い取る者はほとんどいない。不動産事業者と投資家がどれだけ市場を支えられるかを見るに、もし銀行の資金チェーンに断絶が発生すれば、新たな値崩れが直ちに起こり、銀行もまた損失を被ることになる。
中共もまた、国内の民衆や外国投資家からお金を騙し取ることが今や困難であることに気づいているが、こうした中で、株式市場、銀行、国有企業を如何にして救済するのであろうか?最近、不思議なことが起こった。以前、アメリカは人民元の切り上げを求めていたが、中国はこれに対して“(アメリカは)中国の内政に干渉せざるを得ない”という姿勢、ひいては、切り上げを求めるならば切り上げをしないという姿勢を示した。しかし、今年の3月から切り上げを待っていたホットマネーが失望して中国・香港から流出し、中国・香港の株式市場が暴落すると、中国の官僚と御用学者の話に変化が起こった。官僚の議論に“柔軟性”という言い振りが多くなり、学者が切り上げ又は為替が自由変動となる日は遠くないとコメントするようになった。これは、明らかにホットマネーを呼び戻そうとするためのものであった。ホットマネーは滞留せず、適当な投資機会を求め、株式市場や不動産などに向かっていくものである。このため、香港の株式市場と不動産は活気を取り戻していったが、中国市場には動きがなかった。結局のところ、投資家は相対的に安全な市場を求めていったのであった。
先週金曜日、中国の金融市場において奇妙な現象が発生した。中国外貨取引センターにおいて、1ドルを8.274元とする小額の現物取引が出現したが、これは、98年の金融危機以来、政府の許容範囲と見られてきた8.2760元-8.2800元の範囲を超える高さの取引であった。このニュースは香港ドルと香港株式市場を上昇させたが、人民銀行が為替政策に変化がないことを明らかにすると、市況は落ち着いた。しかし、期待は依然として存在しており、今週になって欧州市場が始まると、ヘッジファンド主導のもとで、人民元の投機が行われ、1ヶ月物のレートで8.18元という高い数字が見られた。中国は5・1の長期休暇に入っているが、休み明けの中国金融市場の動きに注目が集まっている。しかし、これが国際ホットマネーを騙して市場を支えようとするものであるならば、それは疑いもなく火遊び的な行為である。今回の金融危機においては、自らを守ることを身につけるべきであり、中共の特権集団に対して如何なる幻想も持つべきではない。
(RFA特別論説員・林保華)