目を健康に保つ毎日の習慣 80歳の中医学医師が実践する方法

タブレットを何時間も使う子どもたち、パソコンの画面を見続けるオフィスワーカー、そして老眼鏡を手にする高齢者まで、現代の生活はかつてないほど目に負担をかけています。その結果、近視、デジタル眼精疲労、ドライアイ、加齢による視力の変化がますます一般的になっています。

視力には遺伝や加齢が大きく関わっていますが、日々の生活習慣も長期的な目の健康に影響を与える可能性があります。80代となった中医学医師の胡乃文氏は、現在でも老眼鏡なしで小さな文字を読むことができます。その秘訣は、長年続けてきた目に良い習慣、ツボ押し、食生活、そして生活習慣にあるといいます。すべての目の病気を防ぐ万能な方法はありませんが、胡氏は毎日の習慣を組み合わせることで、生涯にわたって目の健康維持に役立つと考えています。
 

現代の視力トラブルは「近くを見続けること」から始まる

多くの人は、スマートフォンやパソコンが現代の視力低下の原因だと考えています。しかし胡氏によると、本当の問題は画面そのものではなく、「近距離を長時間見続けること」にあります。

読書や勉強、メッセージのやり取り、ノートパソコンでの作業など、近い距離に何時間も焦点を合わせ続けると、目のピント調節を担う筋肉に継続的な負担がかかります。子どもの場合は、近視の発症や進行につながる可能性があります。大人では、眼精疲労、かすみ目、頭痛、ドライアイを引き起こしやすくなります。

また現在の研究では、屋外で過ごす時間が長い子どもほど近視になりにくいことも示されており、近くを見る作業と屋外活動のバランスを取ることの重要性が明らかになっています。
 

目に良い習慣は幼い頃から始まる

子どもの目はまだ発達途中であるため、毎日の習慣が将来の視力に長く影響する可能性があります。

胡氏は、特に次の2つのよくある間違いに注意するよう勧めています。

  1. 鉛筆を持つ位置がペン先に近すぎること。幼い子どもは鉛筆やクレヨンを先端近くで握ることがあり、その結果、自分が書いている文字が見えにくくなり、顔を紙に近づけすぎてしまいます。
     
  2. 本を近づけすぎて読んだり、寝転がって読書をしたりすること。どちらも目に必要以上に近い距離で長時間ピントを合わせ続けることになります。

読書や書き物をするときは、本やノートと目の距離を約30~40センチに保つのが理想です。また、十分な明るさを確保し、右利きの人は左前方から光が当たるようにすると、余計な目の負担を軽減できます。

こうした習慣を早いうちから身につけることで、将来にわたって子どもの視力を守る助けになる可能性があります。
 

疲れた目のための簡単なピント調節エクササイズ

胡氏は、学生やデスクワークをする人など、近くを見る作業を長時間行う人に、ピント調節のエクササイズを勧めています。

方法

  1. ペンを目の高さに持ち、ペン先にしっかりピントを合わせます。
  2. ピントを保ったまま、ゆっくりとペンを遠ざけます。
  3. その後、ゆっくりとペンを目のほうへ近づけます。
  4. この「近くから遠くへ、遠くから近くへ」の動きを数回繰り返します。

胡氏によると、この運動はピント調節を担う毛様体筋をやさしくほぐし、鍛える効果が期待できます。

胡氏は、重度の近視だった患者が約1年間この運動を継続した結果、遠くが以前より見えやすくなったと話していたことを紹介しています。ただし、現在の科学的根拠では、このようなピント調節運動が真の近視を改善することは示されていません。一方で、長時間近くを見る作業をする人では、眼精疲労を軽減し、目のピント調節機能の柔軟性を高める可能性があります。

また、バドミントンやテニス、野球など、近くと遠くを繰り返し見分けるスポーツでも同様の効果が期待できるといいます。
 

眼精疲労を和らげるツボ押し

中医学では、目は全身の健康と密接につながっていると考えられています。中国最古の医学書の一つ『黄帝内経』には、「五臓六腑の精気は上って目を養う」と記されており、気(生命エネルギー)と血液の巡りが良いことが、良好な視力を支えるという伝統的な考え方が示されています。

胡氏は、目の周囲にある5つのツボをやさしく刺激することで、眼精疲労を和らげ、血流を促すことを勧めています。

人差し指の第二関節を使い、それぞれのツボを軽く押し、少し心地よい痛みを感じる程度までマッサージします。

5つのツボは次のとおりです。

1. 攅竹(さんちく):眉頭の内側

2. 魚腰(ぎょよう):眉の中央

 

3. 瞳子髎(どうしりょう):目尻の外側

4. 承泣(しょうきゅう):黒目の真下

5. 睛明(せいめい):目頭のすぐ脇、鼻の付け根に近い部分

全体で約1~3分かけて行います。

胡氏によると、このマッサージは勉強後の学生、長時間パソコンを使った後のオフィスワーカー、老眼による眼精疲労を感じる高齢者にも役立つ可能性があります。
 

体の内側から目を養う

栄養も、生涯にわたる目の健康維持に重要な役割を果たします。

『American Journal of Ophthalmology』に掲載された研究では、米国では約1,600万人がドライアイを抱えていると推定されています。

視力を支える伝統的な食品の中でも、クコの実は近年、科学的な注目を集めています。学術誌『Nutrients』に掲載された研究では、健康な中高年が90日間、週5回少量のクコの実を摂取したところ、黄斑色素(網膜の中心部を保護する色素)の密度が増加し、網膜を保護する効果が示唆されました。

クコの実にはゼアキサンチン(黄斑部に多く存在し、有害なブルーライトを吸収するカロテノイド〔天然色素〕)が豊富に含まれています。

動物実験では、クコの実が涙の分泌を増やし、角膜を保護する可能性も示されていますが、人を対象としたさらなる研究が必要です。

胡氏は、おやつとして乾燥したクコの実を1日10~20粒ほど食べることを勧めています。
 

目にやさしい薬膳茶

胡氏は、次のような伝統的な薬膳茶も勧めています。

材料

  • 乾燥クコの実 大さじ2
  • 乾燥菊花 大さじ1
  • 決明子 大さじ2

作り方

  1. カップにクコの実、菊花、決明子を入れます。
  2. 約300~480mlの熱湯を注ぎ、15分ほど蒸らします。
  3. 温かいうちにいただきます。

専門家からのアドバイス

中医学では、菊花と決明子は「熱を取り除く」働きがあり、目の不快感を和らげるために古くから利用されてきました。胡氏は、生の決明子と炒った決明子を同量ずつ使うことで、それぞれの性質のバランスが取れるとしています。

クコの実を購入する際は、できるだけ有機栽培のものを選ぶことを勧めています。自然乾燥されたものは、ヘタの部分が鮮やかな赤ではなく淡い色をしています。不自然なほど光沢があるもの、鮮やかすぎる赤色のもの、酸っぱい臭いがするものは、人工的な加工が施されている可能性があるため避けたほうがよいとしています。
 

目の健康を支える食品と避けたい食品

胡氏は伝統的な食養生に加え、目の健康を支える栄養素を豊富に含むバランスの良い食事を重視しています。

特に重要な栄養素は次のとおりです。

  • ルテインとゼアキサンチン:ほうれん草、ケール、ブロッコリーなどの葉物野菜に多く含まれ、ブルーライトを吸収して黄斑部を保護します。
     
  • アスタキサンチン:サケ、エビ、マスなどの魚介類に多く含まれ、抗酸化作用があり、眼精疲労の軽減に役立つ可能性があります。
     
  • オメガ3脂肪酸:青魚に豊富に含まれ、涙の分泌を促し、ドライアイの改善に役立つ可能性があります。

また胡氏は、砂糖の過剰摂取や高度に加工された食品は、慢性的な炎症や血管障害を引き起こす可能性があるため、控えめにするよう勧めています。

中医学の観点からは、血行不良になりやすい人は、アイスクリームや冷たい飲み物など、体を強く冷やす食品の摂りすぎを避けることも推奨しています。

最近の研究では、インスタントコーヒーを習慣的に飲むことと、加齢黄斑変性のリスク増加との関連が示唆されています。その理由の一つとして、高温加工によって酸化ストレスを促進する化合物が生成される可能性が考えられています。

ただし、この研究は観察研究であり、インスタントコーヒーが直接目の病気を引き起こすことを証明したものではありません。この関係を確認するには、さらなる研究が必要です。
 

毎日の小さな習慣が大きな違いを生む

目を守るためには、単にスクリーンを見る時間を減らすだけでは十分ではありません。近くを見る作業の合間に定期的に休憩を取ること、適切な読書距離を保つこと、屋外で過ごす時間を確保すること、栄養豊富な食事を摂ること、そしてピント調節運動やツボ押しといった簡単な方法を取り入れることは、いずれも目の健康維持に役立つ可能性があります。

子どもの近視予防に取り組む場合でも、仕事後の画面による目の疲れを和らげたい場合でも、あるいは加齢による視力の変化とうまく付き合いたい場合でも、毎日の健康的な習慣は、これから何年にもわたって目をより快適で丈夫な状態に保つ助けとなるでしょう。

(翻訳編集 井田千景)

Ben Lam