60歳を過ぎたら健康づくりの重点も変わる 体が健康なら心もより軽やかに

「私たちはもう年齢を重ねているので、一時的な楽しさを追い求めるのではなく、持続する幸せと心地よさを大切にしています」。60代の中医師・呉宏乾氏は、年齢を重ねるにつれて、健康づくりの重点も変わってきたと感じています。高血圧・高血糖・高脂血症などの「生活習慣病」や筋肉量の減少を防ぐだけでなく、ゆっくりとした生活を楽しむことも大切だといいます。

宜陞中医クリニック院長の呉宏乾氏はエポックタイムズの取材に対し、食事、運動、睡眠から仕事や付き合いを減らすことまで、少しずつ生活スタイルを見直し、健康や家族、そして自分自身のために時間を使うようになったと話しています。60歳を過ぎた現在も、健康診断の各項目は正常範囲内で、老眼もないといいます。
 

五色の食事で五臓をいたわる

20年以上前、呉氏も多くの会社員と変わらず、食事は手軽さや速さを重視していました。ハンバーガーやパンを手軽に買い、フライドポテトや揚げ物を一緒に食べることもよくありました。「すると、朝食に血糖値を上げやすいものを食べると、診療所に着いて脈を診ているうちに、こちらが眠くなってしまうほどでした」と話しています。

呉氏は診療する中で、回復が比較的順調な腎臓病患者の中には、加工食品を一生懸命に避けている人が多いことに気づきました。そこで近年は、家族とともに加工食品を少しずつ減らし、自然な形に近い食品を多く食べるようにしています。また、中医学の「青・赤・黄・白・黒」という五色の食事の考え方を取り入れ、さまざまな色の食品を食べることを心がけています。

中医学では、五色の食品は五臓に対応すると考えられています。

青色は肝に入る:アボカド、緑色の野菜など。

赤色は心に入る:ニンジンなど。

黄色は脾に入る:カボチャ、黄色いサツマイモなど。

白色は肺に入る:ジャガイモ、ヤマイモなど。

黒色は腎に入る:黒ゴマ、ブルーベリー、ブドウなど。

同氏は妻と一緒に「五行朝食」を考案し、さまざまな色の根菜類を中心に、卵1~2個、ヨーグルトまたはナッツ、そして旬の果物を組み合わせています。五色の組み合わせも季節に応じて増減させ、例えば春には緑色の食品を多く食べて肝を養い、夏には赤色の食品を多く食べて心を養い、秋には白色の食品を多く食べて肺を養い、冬には黒色の食品を多く食べて腎を養うようにしています。
 

「生活習慣病」を防ぎ、筋肉の減少にも注意

父親に高血圧があり、90歳を過ぎてから血糖値もやや高くなり、母親にも高血圧と高脂血症があったことから、呉氏は「生活習慣病」の予防を特に重視しています。加工食品を減らすほか、地中海食の原則も参考にし、調理にはオリーブオイルやツバキ油などの良質な油を選び、油、塩、砂糖はできるだけ控えています。

また、1日3食を決まった時間と量で食べることも重視し、食事の時間が不規則になったり、暴飲暴食したりして、胃腸や代謝のリズムを乱さないようにしています。

現在60代の同氏は、自身の血圧、血糖値、血中脂質はいずれも正常範囲内に保たれていると話しています。

「生活習慣病」の予防だけでなく、呉氏がより重視しているのが、たんぱく質の摂取です。「年齢を重ねたら、筋肉が減らないように、ある程度たんぱく質を補うことが大切です」と強調しています。

昼食と夕食は、五穀米にさまざまな野菜を組み合わせ、サケ、鶏肉、豚肉などのたんぱく質を含む食品を食べることが多いといいます。50~60歳以上の人には、1食につき手のひら1~1.5枚分ほどのたんぱく質を含む食品に、野菜を1杯、全粒穀物や雑穀を半杯~1杯程度組み合わせることを勧めています。

飲み物については、現在、市販のジュースやミルクティーはほとんど飲まず、主に水、いれたお茶、浅煎りのブラックコーヒーを選んでいます。時には、娘が作ってくれたレモンはちみつ水を飲むこともあります。
 

激しい運動から歩く力を守る運動へ

若い頃、呉氏はさまざまなスポーツが好きで、バスケットボール、バレーボール、野球チームのキャプテンを務めたこともあり、よく水泳もしていました。60代になった現在は、運動のスタイルも少しずつ変わり、高強度の運動を追い求めるのではなく、下半身の筋力、持久力、バランスを維持し、年齢を重ねても歩いて自立した生活を送る力を保つことに重点を置いています。

「年齢を重ねて、自由に歩けなくなったら、とても大変です。人に頼らなければならなくなりますから」と話しています。

その方法は決して複雑ではなく、日常のちょっとした時間を利用しています。例えば、学校と診療所の往復では速歩きをし、診療所で患者が少ないときには、スクワットやつま先立ち、スロージョギングを数セット行います。速歩きやスロージョギングでは持久力を、スクワットやつま先立ちでは下半身の筋力を鍛えられるといいます。「これらは広い場所も必要ありませんし、長い時間をかける必要もありません」と話しています。

呉氏はまた、筋力とバランスの両方を鍛えられる「無重力ウォーク」も考案しています。

無重力ウォークの方法

  1. 準備姿勢:背筋を伸ばして立ち、右足を前、左足を後ろにして、両足を前後に置きます。
     
  2. つま先立ちで前傾:両足を動かさず、まず右足のかかとを上げてつま先を床につけ、続いて左足のかかとを上げてつま先を床につけます。体を少し前に傾けながら、左手を自然に前へ振り、右手を後ろへ振ります。
     
  3. つま先を上げる:両足のかかとを床に戻すと同時に、つま先を上げ、右手を上げて左手を後ろへ振ります。

5分後に前後の足を入れ替え、同じ手順を5分間繰り返します。慣れてきたら、両手に小さなダンベルを1つずつ持って負荷を加え、トレーニング効果を高めることを勧めています。

同氏は、ふくらはぎと太ももの筋肉を繰り返し収縮させ、つま先とかかとを交互に上げ下げすることで、足にある6本の経絡を刺激し、エネルギーの流れや血液循環を促すと説明しています。

研究でも、異なる種類の運動を組み合わせることで、虚弱な高齢者の筋力やバランス能力を高め、転倒予防に役立つ可能性が示されています。
 

7時間しっかり眠り、寝る前は心を落ち着かせる

食事や運動に加えて、呉氏は、中高年の「生活習慣病」の管理には規則正しい睡眠が非常に重要だと強調しています。

中医学では「子午覚」という考え方があり、夜間の睡眠を重視するとともに、昼間も適度に休むことで体の回復を助けることを勧めています。呉氏はできるだけ夜11時までに就寝するようにしており、夜に診療することがあるため、時には11時を過ぎることもありますが、午前0時を過ぎることはほとんどありません。毎日できるだけ7時間は睡眠を取るようにしています。

寝る前には、自分をリラックスさせる習慣もあります。それは「感謝」です。眠りにつく前に、周囲の人や出来事に感謝することで、心がすぐに落ち着いて眠れるといいます。
 

感謝を習慣にして、今を楽しむ

寝る前だけでなく、呉氏は毎日の食事の際にも、感謝の気持ちを持って食事を楽しんでいます。両親が育ててくれたこと、妻が食事を用意してくれること、子どもたちが思いやりを持って成長してくれたこと、農家が食べ物を育ててくれたこと、そして自分が一生懸命働いて家族とこの食事を楽しめることに感謝します。こうした感謝すべき人や出来事を思い浮かべると、時には感動して涙が出ることもあります。

食事の際には、食べる速度も落とし、一口一口をよく噛み、食べ物の味や食感をじっくり味わうことで、今この瞬間をより楽しむようにしています。

このような心構えは、日常生活にも広がっています。家族や友人との間で誤解が生じたときには、自分から話し合い、解決できることはできるだけ解決するようにしています。それでも力を尽くしても変えられないことについては、感謝の気持ちを持って手放すようにし、ネガティブな感情に長く影響されないようにしています。

感謝の気持ちを持つことは、長寿につながる可能性もあります。アメリカの女性看護師約5万人を対象とした研究では、感謝の程度が最も高いグループは、最も低いグループと比べて、全死因死亡のリスクが9%低く、心血管疾患による死亡リスクが15%低かったと報告されています。
 

趣味もゆっくりと ロックからクラシックへ

年齢を重ねるにつれ、呉氏の趣味も少しずつ「ゆっくり」したものになっていきました。若い頃はにぎやかで動きのある活動が好きで、スポーツや映画鑑賞のほか、バンドのボーカルを務めていたこともあり、ロックやポップスも好んでいました。健康づくりを意識するようになってからは、読書やオーディオブック、より穏やかな音楽へと徐々に好みが変わっていきました。

近年では、オーディオブックを聴くことが主な趣味の一つになっています。「一冊の本には著者の経験が凝縮されています。1~2日かけるだけで、他の人が積み重ねてきた多くの経験を得ることができます」と話しています。

音楽は今でも若い頃と同じように好きですが、好みはロックから、穏やかなフレンチ・シャンソンやクラシックピアノへと変わりました。時には、自然の風景と音楽を組み合わせた映像を楽しみ、静かなリズムの中で自分をリラックスさせることもあります。
 

生活から余分なものを減らし、家族と自分のために時間を使う

年齢を重ねるにつれて、呉氏は生活の優先順位を改めて考えるようになり、予定をぎっしり詰め込まなくなりました。

近年は、講演の依頼を次々と断ったり、医学会の理事や医療機関の顧問などの仕事を辞めたりし、会食にもほとんど参加しなくなりました。今は、本当に楽しんでいる診療の仕事だけを残しています。「いろいろな雑務を手放してからは、診療に集中しています。それ以外の時間は家族と一緒に過ごし、自分の時間もたくさんあります」と話しています。

仕事や付き合いを減らすだけでなく、画面や情報によって消耗することにも注意し、本当に大切な人や物事に意識を向けるようにしています。1日にスマートフォンを見る時間は1時間以内で、主にオーディオブックや音楽を聴くために使っています。テレビもほとんど見ません。「政治討論番組は毎日けんかばかりしているので、もう長い間そういう番組は見ていません」と話しています。

増えた時間は、家族との時間や旅行に使うほか、一人で過ごすこともますます楽しむようになりました。「一人で過ごす方法を身につけました。友人や家族がそばにいなくても、一人でPodcastを聴いたり、本を聴いたり読んだりするだけで、とても心地よく楽しいと感じます」と話しています。

60代になった今、同氏がより大切にしているのは、外へ向かって追い求めたり、生活を予定で埋め尽くしたりすることではなく、自由に歩ける体、穏やかな心、そして自分で自由に使える時間です。「こうした健康的な習慣を規則正しく続けるようになると、心の平穏がとても大きなものになると感じます」と話しています。

(翻訳編集 華山律)

王佳宜