がんはアメリカにおける死因の第2位で、心臓病に次いで多くの命を奪っています。研究によると、がんによる死亡の約30〜35%は食生活と関係があるとされています。そのため、がん予防の効果が期待される成分(フィトケミカル)を含む果物や野菜を意識的に多く摂る人が増えています。
ハーバード大学が行った大規模な研究では、9万人以上の閉経前女性の食生活を分析。その結果、思春期に果物をよく食べていた女性(1日約3回)が、ほとんど食べなかった女性(1日約0.5回)に比べて、乳がんの発症リスクが25%低いことがわかりました。
また、オックスフォード大学の研究では、果物を多く食べるほど、大腸がんや肺がんなどの消化器系のがんのリスクが低くなる傾向があることが確認されています。つまり、果物を積極的に食べることが、こうしたがんの予防につながる可能性があるのです。
果物には、健康をサポートするさまざまな栄養素が含まれています。例えば、食物繊維が豊富で、腸内環境を整えるのに役立ちます。研究によると、思春期に食物繊維を多く摂取すると、乳がんのリスクが低下する可能性があることがわかっています。
さらに、果物には抗酸化作用のある成分が多く含まれており、DNAがダメージを受けるのを防ぐ働きがあります。これにより、がんの発症リスクを抑えられる可能性があるのです。
がん予防に役立つ果物
果物には、抗酸化作用のある成分やビタミン、フィトケミカル(植物由来の有益な成分)が豊富に含まれており、体の酸化ストレスを軽減し、健康をサポートする働きがあります。以下に、がん予防に効果が期待される代表的な果物と、それぞれの健康効果を紹介します。
ブドウ
ブドウには、特に抗酸化作用が強いレスベラトロールというフィトケミカルが含まれています。研究によると、レスベラトロールは乳がん、子宮がん、肝臓がん、眼がん、肺がんなど、さまざまながんのリスクを低下させる可能性があるとされています。
また、紫ブドウの皮にはアントシアニンという色素成分が含まれており、乳がん、大腸がん、肝臓がんのがん細胞の増殖を抑制する効果があると報告されています。
イチゴ
イチゴに含まれるエラグ酸には、細胞の異常な増殖を抑える働きがあり、がんの発症を防ぐ可能性があることが研究で示されています。また、イチゴはフェルラ酸やアントシアニンなどの抗酸化成分も豊富に含んでおり、細胞を酸化ダメージから守るのに役立ちます。
キウイフルーツ
キウイフルーツはビタミンCが豊富で、強い抗酸化作用と抗がん作用を持つとされています。2019年に発表された研究では、キウイに含まれる高濃度のビタミンCがDNAを保護し、酸化ダメージを軽減する可能性があることが示されました。さらに、キウイに含まれるフィトケミカルには、がん細胞の自然死(アポトーシス)を促す働きがあることも報告されています。
また、キウイに含まれる食物繊維やペクチンには腸内環境を整える効果があり、便通を促進し、腸内の善玉菌を増やすことで、大腸がんのリスクを低下させる可能性があります。
ブルーベリー
ブルーベリーには、アントシアニン、エラグ酸、カテキンなどの健康成分が豊富に含まれています。特にプテロスチルベンという抗酸化成分は、大腸がん、肝臓がん、前立腺がんの細胞増殖を抑制する働きがあることが分かっています。
ハーバード大学の研究によると、毎週ブルーベリーを食べる女性は、まったく食べない女性に比べて、エストロゲン受容体陰性乳がん(比較的進行が早いタイプの乳がん)の発症リスクが30%低いことが示されました。このタイプの乳がんは特に若い女性に多くみられるため、ブルーベリーの摂取が予防につながる可能性があります。
グアバ
グアバはビタミンCやレスベラトロールなどの抗酸化成分が豊富に含まれています。特に赤いグアバにはリコピンが含まれており、がん細胞の自然死(アポトーシス)を誘導する働きがあるとされています。動物実験では、グアバの抽出物がさまざまながん細胞の成長や転移を抑制する効果があることが報告されています。
ザクロ
ザクロには強い抗酸化作用、抗炎症作用、抗腫瘍作用があります。特にプニカラギンというポリフェノールが含まれており、子宮頸がん、卵巣がん、大腸がん、甲状腺がん、肺がんなどの細胞増殖を抑える働きがあるとされています。
カシス
カシスはアントシアニンとビタミンCを豊富に含んでいます。50gのカシスには90mgのビタミンCが含まれており、これは成人の推奨摂取量とほぼ同じです。
研究では、カシスの抽出物を摂取すると、腸内の善玉菌(ビフィズス菌や乳酸菌)が増え、大腸がんの原因となる酵素の働きを抑制する可能性があることが分かっています。
イチジク
『Pharmacological Research(薬理学研究)』に掲載された研究によると、イチジク(フィカス・カリカ)はがん細胞の自然死(アポトーシス)を促し、免疫機能を高めることでがんの予防に貢献する可能性があります。また、化学療法に使われる薬剤と比べて、健康な細胞への毒性が低いことも確認されています。
ラズベリー
ラズベリーにはビタミンC、エラグ酸、アントシアニンなどの抗酸化成分が含まれています。複数の研究で、ラズベリーやその抽出物が口腔がん、食道がん、大腸がん、子宮頸がんの予防に役立つ可能性が示されています。
ある研究では、口腔内に前がん病変がある27人の患者に、フリーズドライしたブラックラズベリーのジェルを患部に塗布する治療を実施。その結果、41%の患者は病変が縮小し、35%は進行が止まり、23%は悪化しました。化学療法の薬を使った場合よりも良い結果が得られたことから、ラズベリーは前がん病変の悪化を防ぐのに役立つ可能性があります。
柑橘類(オレンジ、グレープフルーツ、レモンなど)
柑橘類にはビタミンCやフラボノイドが豊富に含まれています。研究によると、柑橘類に含まれるフラボノイドには抗がん作用があり、鼻咽頭がん、口腔がん、胃がん、乳がん、膵臓がん、肺がんの予防に役立つ可能性があります。
レインボーダイエット:バランスの取れた食生活を
果物には、それぞれ異なる色素が含まれており、色ごとに異なる抗酸化成分を持っています。そのため、一種類の果物だけを食べるのではなく、さまざまな色の果物をバランスよく摂取する「レインボーダイエット」が推奨されます。これにより、健康全般の維持やがん予防に効果が期待できます。
(翻訳編集 華山律)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。