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種子油の意外な真実

種子油の危険性とは? 健康に良い油の選び方

どの時代にも食品の敵は続々と現れてます。最初は脂肪、次に砂糖でした。そして今、種子油が肥満や慢性疾患の原因として非難の的となっています。

実際、種子油を避けることは不可能です。種子油はあらゆる食品に含まれています。サラダドレッシングやファストフードからプロテインバー、さらにはベビーフードにまで使用されています。批判派は有害であると主張し、擁護派は安全で手頃な価格であり、体に良いと主張しています。

しかし、実際はもっと複雑です。この議論は往々にして単純化され過ぎています。「シードオイル(種子油)」という用語でさえ、誤解を招くものです。何世紀にもわたって伝統的な食生活の一部であったオイルと、大規模な食品生産のために作られたオイルをひとまとめにしてしまっているからです。

この論争の核心は、シードオイルが本質的に良いか悪いかという問題だけではありません。その加工方法や摂取方法についても論じられています。

種子油とは実際何なのか?

健康に関するトレンドに注目している方であれば、おそらく「種子油は有毒であり、避けるべきである」という主張を耳にしたことがあるでしょう。種子油とは一体何なのでしょうか? なぜ一部の人々はそれを有害であると考えるのでしょうか?

最も基本的な定義では、種子油は種子から抽出されます。オリーブオイルはオリーブから、ココナッツオイルはココナッツから作られているので、一見無害のように思えます。

しかし、すべての種子油が同じというわけではありません。 ごま油や亜麻仁油のように、何世紀にもわたって伝統的な食生活に欠かせないものとなっているものもあり、それらは栄養素や抗酸化物質を損なわないよう、自然な低温圧搾法で抽出されています。

しかし、その一方で高度に加工された油があります。 それらは、大豆油、コーン油、キャノーラ油、ヒマワリ油、サフラワー油、綿実油、グレープシード油、米ぬか油などの工業用シードオイルで、高温抽出と化学精製により大量生産されています。

メーカーは、最大限の油分を抽出するためにヘキサンなどの溶剤を頻繁に使用します。これらの油は精製、漂白、脱臭され、「RBD」油というラベルが付けられます。このプロセスにより、風味がニュートラルになり、より長期間の保存が可能になる反面、ビタミンEや抗酸化物質などの有益な化合物は除去されてしまいます。

多くの工業用種子油は、もともと食用として開発されたものではありません。 キャノーラ油は、菜種油として、主に機械の潤滑油として使用されていましたが、1970年代にカナダの科学者たちが有毒成分を除去するために品種改良を行い、食用として安全な油として利用されるようになりました。

カナダ(Canada)と油(oil)を組み合わせた名称自体が、マーケティング上の創作です。 「植物油」という用語も誤解を招くものです。 多くの場合、工業用種子油をブレンドしたもので、より健康的なイメージで販売されています。

食事性脂肪の専門家であり、コーネル大学で学んだ医師兼科学者のケイト・シャナハン(Cate Shanahan)氏は、工業用種子油が栄養面を考慮して開発されたものではないと説明しています。

「これらの種子から採れる原油は食用には適していません。大豆やキャノーラは栄養のために品種改良されたわけではありません。高収量と工業用としての耐久性を求めて品種改良されたのです」と、同氏は本紙に語りました。

アメリカで生産される大豆のほとんどは、食用として生産されていません。米国農務省の発表によると、アメリカ産大豆の70%以上は家畜の飼料として使用され、さらに5%はバイオディーゼルに加工されています。残りの大豆は主に大豆油として精製されますが、その油は大豆の持つ栄養価のほとんどが失われた製品です。

さらに、アメリカ産大豆の90%以上はグリフォサートなどの除草剤に耐えるよう遺伝子組み換えされており、農家は作物に害を与えずに畑全体に除草剤を散布することができます。この高強度農業と大規模な工業的加工を組み合わせることで、本来の形とはかけ離れた油が生まれました。

天然の抗酸化物質を保持するオリーブやゴマなどの伝統的な油とは異なり、工業用種子油は長期保存可能な製品にするために広範囲にわたる精製が必要です。シャナハン氏は、このプロセスによって有益な化合物が除去されてしまうため、酸化や劣化が起こりやすくなると主張しています。

「機械に適した油を人間に用いるとは全くあり得ないことです」とシャナハン氏は述べています。
 

種子油は健康に良いのか、悪いのか?

種子油の健康への影響については、激しい議論が交わされています。ある専門家は、種子油は心臓に良いバターやその他の動物性脂肪の代替品であると主張していますが、一方で、種子油が炎症や病気の原因となる可能性があると考える専門家もいます。
 

種子油が心臓に良い代替品であるという主張

何十年もの間、科学者たちは心臓の健康におけるさまざまな脂肪の役割について議論してきました。研究によると、バターや赤身肉に含まれる飽和脂肪酸を種子油に含まれる多価不飽和脂肪(PUFA)に置き換えることで、心血管に良い効果をもたらす可能性があることが示唆されています。

支持者たちは、科学的に十分、確立されていると主張しています。

「種子油に関する研究は一貫してポジティブな結果を示しています。無作為化比較試験の数多くのメタ分析が、飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸を豊富に含む種子油に置き換えることで、アメリカの死因トップである心血管疾患のリスクを明確に悪影響なしに低下させることができることを示しています」と、自然療法医のマシュー・ナグラ(Matthew Nagra)氏は本紙に語りました。

大規模な研究もこの主張を裏付けています。2021年の50万人以上を対象とした研究では、飽和脂肪酸をキャノーラ油、コーン油、オリーブオイルなどの油に置き換えた人々は、心臓病や早期死亡のリスクが低いことが分かりました。

「私たちの研究結果は、心臓代謝の健康と長寿のために、固形脂肪の摂取を非水素化植物油に置き換えることを支持しています」と著者は書いています。固形脂肪の例として、バターやラードなどが挙げられます。

2025年のJAMA 内科の研究結果は、これらの調査を裏付けるもので、オリーブ、大豆、キャノーラなどの植物油を多く摂取する人々は長生きし、心臓病や癌の発症率が低いことが分かりました。一方、バターを多く摂取する人々は早期死亡のリスクが高いことが分かりました。研究者らは、バターを植物油に置き換えることで、癌関連死を17%減少させるなど、全体的な死亡率を17%減少させることができると推定しています。

こうした証拠が増えているため、米国心臓協会(AHA)は、心臓に良い食事の一部として種子油を推奨し続けているのです。
 

種子油に対する反対意見:酸化と炎症

米国心臓協会による種子油推奨に誰もが同意しているわけではなく、その裏付けとなる研究に疑問を呈する専門家もいます。

「この研究は質が低いと思います。エキストラバージンオリーブオイルを大豆油やベニバナ油とひとくくりにしているのは馬鹿げている」と、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の血液腫瘍内科医で疫学・生物統計学教授のヴィネイ・プラサド(Vinay Prasad)博士は本紙に述べました。

また、同氏は研究方法についても批判し、バターの摂取量を正確に測定できておらず、代わりに不正確な推定方法に頼っている」と主張し、又、「この種の栄養疫学は、明確な答えを導くのではなく、むしろ教義を煽っている」と述べました。

研究方法に関する懸念に加え、批判派は、種子油の真の問題は酸化であると主張しています。

精製により種子油は腐敗しにくくなり、店頭で長持ちするようになります。しかし、熱や空気、光にさらされると、特に調理中に化学構造が分解し始めます。

オリーブオイルやごま油などの伝統的な油には、劣化を防ぐ抗酸化物質が自然に含まれていますが、工業用種子油は加工中にこれらの安定化化合物を失います。その結果、酸化に対してより脆弱になりアルデヒドやフリーラジカルなどの副産物が発生します。これらの化合物は細胞を傷つけ、炎症を促進し、慢性疾患の原因となります。

熱は、このプロセスを加速させます。研究によると、レストランのフライヤーで使用されるような植物油を繰り返し加熱すると、組織の損傷やコレステロール値の上昇につながる酸化副産物が生成されることが、動物実験で確認されています。

また、一部の研究では、オメガ6脂肪酸の劣化形態である酸化リノール酸が、人間の脂肪組織や動脈プラークに蓄積されることが確認されており、長期的な健康への影響が懸念されています。

しかし、酸化が大きな脅威であると考える専門家ばかりではありません。

「こうしたプロセスには長所と短所があります。油の劣化を防ぐ一方で、有益な成分も失われてしまうのです。」とスタンフォード大学の栄養学教授、クリストファー・ガードナー(Christopher Gardner)氏は言います。

学術誌『サイエンティフィック・ワールド・ジャーナル』の口コミ記事によると、精製によってビタミンEやポリフェノールなどの抗酸化物質は除去されてしまいますが、一方、不純物も取り除かれるため、油はより安定し、腐敗しにくくなります。

それでも、他の油脂よりも種子油の方が酸化は速く進みます。多価不飽和脂肪酸は熱、光、空気にさらされると急速に劣化しますが、一価不飽和脂肪酸(オリーブオイルに含まれる)や飽和脂肪酸(バターや牛脂に含まれる)はより安定しています。
 

加工食品との関連

種子油の批評家と擁護者の意見が一致している点があるとすれば、それは「どこにでもある」ということです。これは偶然ではありません。

安価で豊富にあり、多額の補助金が投入されている種子油は、現代の食品産業の柱となっています。米国政府は大豆、トウモロコシ、綿実などの作物に数十億ドルを投入して支援しており、これらの油はオリーブやアボカドなどの代替品よりもはるかに手頃な価格となっています。

大豆は市場を独占しており、アメリカの種子油生産の約90%を占めています。2016年には、大豆産業だけで16億ドルの補助金を受け取り、生産量を高く維持し、コストを低く抑えるのに役立ちました。

政府の支援は、家庭で調理する人にとって種子油を安価にするだけでなく、現在ではアメリカ人の食生活の60%近くを占める超加工食品(UPF)の基盤となっています。精製穀物や添加糖類とともに、種子油は現代の加工食品の大部分を構成しており、食感を向上させたり、保存期間を延ばしたり、風味を低コストで高めるために使用されています。これらの原料は、シリアルから冷凍食品まであらゆる食品に使用されており、一般的なスーパーマーケットでは、ほぼ避けることは不可能です。

キャノーラ油の1ℓボトルは約870円ですが、同じ量のエキストラバージンオリーブオイルは約2,100円以上します。コスト削減を目指す食品メーカーにとって、選択は明白です。安価で風味がニュートラル、比較的保存が効くため、種子油は食品メーカーにとってまさに夢のような素材です。加工食品の保存期間が延び、風味が良くなり、利益率も維持できるからです。

シャナハンは、平均的なアメリカ人の1日のカロリー摂取量の20~30%が種子油であると推定しています。種子油はカテゴリーとして追跡されていないため、この数値を算出するのは容易ではありませんでした。シャナハンは、大豆やキャノーラなどの作物の数十年にわたる生産データを分析し、政府や業界の報告書を利用して、現代の食生活における種子油の存在の度合いを明らかにしました。

「人間はこれまで、これほど多量の多価不飽和脂肪酸を摂取したことはありません。歴史的に見ても、食事は主に動物性脂肪に頼っており、多価不飽和脂肪酸を豊富に含む油ではありませんでした。それを避ける方法を知らなければ、大量に摂取してしまうことになります」と彼女は警告します。

ガードナー氏も同意見ですが、問題が種子油だけにあるわけではないと言います。種子油の消費量が増加しているのは、自家製サラダドレッシングを作る人が増えているからではありません。それは、これらの油が大量に使用される超加工食品が、今やアメリカの食生活を支配しているからです。

ガードナー氏は、たとえ明日種子油が食料供給から排除されたとしても、超加工食品が消えることはなく、ただ再加工されるだけだと強調しました。

同じUPFがバター、牛脂、ラード、ココナッツ脂肪などの別の油で製造されたとしても、それらの食品が突然ヘルシー食品になるわけではありません。

種子油をめぐる議論の本質は、油そのものだけにとどめてはいけません。 それらを使った加工食品、そしてそもそも私たちはそれらを大量に食べるべきなのか、という事が問題なのです。
 

それでは、何を使って調理すべきなのでしょうか?

種子油を完全に排除することに固執するのではなく、専門家は、加工度の高い食品を減らし、家庭で調理する際には高品質で安定した油でとることがより大きな選択であると指摘しています。

「種子油の摂取を控えて健康状態を改善したいのであれば、最も良い方法は、加工度の高い食品を減らすことです。砂糖や精製穀物、ナトリウムの摂取量を減らすことにもつながり、さまざまな面で良い結果をもたらします」とガードナー氏は助言します。

台所でのより良い選択を求める人々に対して、専門家は酸化しにくい安定した、加工度の低い油の使用を推奨しています。

⚫︎調理に適したより良い油

  • アボカド:一価不飽和脂肪酸を多く含み、熱に強い
  • エクストラバージンオリーブオイル:抗酸化物質が豊富で、ドレッシングや軽い調理に最適
  • バターとギー:熱に強く、自然に安定している
  • ココナッツ:飽和脂肪酸を多く含み、酸化しにくい
     

⚫︎冷たい状態で使用するのが最適な油

  • 亜麻仁:オメガ3脂肪酸を多く含み、ドレッシングに最適
  • クルミ:抗酸化物質が豊富で、サラダに風味を添える
  • ゴマ:香り高く、熱に比較的強い
     

⚫︎工業的に精製された油

  • 大豆
  • トウモロコシ
  • キャノーラ
  • 綿実
  • ヒマワリ
  • グレープシード
  • サフラワー
  • 米ぬか

コールドプレス(低温圧搾)の専門品種もありますが、大量生産され高度に加工された油に比べると、はるかに一般的ではありません。
 

結論

種子油をめぐる議論はまだ終わっていませんが、1つだけ明らかなことがあります。それは、油の摂取方法が重要だということです。

自家製サラダにキャノーラ油を数滴たらすのと、古い油で揚げたフライドポテトを食べるのとでは意味が違います。安価な油や砂糖、添加物でいっぱいの超加工食品に頼ることが、より大きな問題の原因なのです。

ガーダー氏によれば、ほとんどの人にとって、食生活を改善する最善の方法は、種子油の成分をいちいち心配することではなく、新鮮な未加工食品を多く摂取することであり、「植物油を責めるのはおかしい。それらが含まれている食品を責めるべきだ」と述べています。
 

(翻訳編集 呉安誠)

10年にわたる執筆キャリアを持つベテラン看護師。ミドルべリー大学とジョンズ・ホプキンス大学を卒業。専門知識を取り入れたインパクトのある記事を執筆している。バーモント州在住。3人の子を持つ親でもある。