忍び寄る甲状腺機能の低下「10種の予兆を見落とさないで!」

甲状腺機能低下症は、世界で最もよく見られる疾患の一つです。

この病気により、甲状腺が分泌するホルモンが不足すると、体にさまざまな症状が現れて、心臓病や不妊、子供の脳の発達不良など、深刻な結果を招くのです。

甲状腺は首の付け根に位置する、1対の蝶形の小さな腺です。
小型でありながらその機能は強力で、甲状腺が分泌するホルモンは、人の健康、特に体のエネルギー代謝をコントロールする重要な役割を果たしています。

エネルギー代謝とは、摂取した食物の栄養を身体用のエネルギーに転化し、体内の各系統、各部位に供給することです。

甲状腺が分泌するホルモンは、心拍数、体重、炎症、脳の機能、心臓の健康、情緒、免疫系、消化器系など、体の多くのシステムに影響を与えます。

さて、甲状腺機能の低下とは何でしょうか。それは「代謝エネルギーの不足」です
これに対して、甲状腺機能亢進症は、「代謝されるエネルギーが多すぎる」ことを指します。

甲状腺機能が低下すると、体の代謝が滞るため、体がエネルギー不足で、だるさを感じ、体重が増えます。
逆に、甲状腺機能亢進症は、体がエネルギーの過剰を感じることにより、理由のない不安などの情緒不安定を生じることがあります。

米国では、甲状腺機能低下症は、甲状腺機能亢進症よりも多くみられます。
いずれにしても、このような問題がある人は、内分泌の専門医に相談して適切な治療を受けることをお勧めします。

以下は、甲状腺機能低下症でみられる「10の症状」です。

1、疲労感がひどい
甲状腺機能の低下でよくみられる症状は、極度の疲労感です。
甲状腺ホルモンの分泌量が不足している最も典型的な徴候は、午後になると「机にうつ伏せになるほどの疲れ」を感じることです。

2、体重の増加
甲状腺機能の低下は、体重増加にもつながります。
それは、体がより多くのエネルギーを蓄えようとし、エネルギー消費量を減らし、より多くの食事をとるよう脳に指示する信号を送るからです。

3、便秘しやすい
基礎代謝の低下は、腸の正常な運動を鈍らせます。
便秘はさまざまな原因で起こりますが、便秘に悩む人の多くは「甲状腺機能の低下が原因」とは、なかなか気づかない場合が多いのです。

しかし、便秘をふくめ、この記事で紹介しているような症状が体に現れている場合は、医療機関の検査を受けて、甲状腺機能に問題がないか確認すると良いでしょう。

4、冷え性
正常な体には、基礎代謝率という、体が動かない状態で消費するカロリー数があります。甲状腺機能が低下している人では、基礎代謝率が低下するため、体のカロリー産生量が少なくなり、その結果、手足が冷えるなど「寒さに弱く」なるのです。

5、毛髪の減少
甲状腺の健康状態が髪の毛に影響するとは、あなたは思わないかもしれません。しかし、毛包細胞の成長速度も、甲状腺から分泌されるホルモンによって制御されています。

甲状腺機能が低下すると、毛包細胞も成長しなくなり、毛髪が薄くなります。

6、むくみと関節痛
甲状腺機能が低下すると、体内の水分を正常に代謝できなくなり、顔がむくみ、関節も腫れて痛みやすくなります。

7、抑うつ症状
出産後の女性は体内のホルモンのバランスが変わるため、甲状腺機能低下症を引き起こし、産後うつ病の一因になることがあります。

うつ病の発症には、必ずしも甲状腺が関与しているとは限りませんが、症状が重いかどうかにかかわらず、一人で悩まず、専門の医師に助けを求めてください。

ヨガや瞑想などのエクササイズは、うつ病の緩和に役立ちます。たとえ一時でも、ストレスの多い生活や混乱した思考から離れ、リラックスできる時間を見つけましょう。

8、皮膚が乾燥する
肌が荒れたり、皮膚が乾燥したりするのは、いろいろな要因が考えられますが、甲状腺機能の低下が影響することもあります。

9、筋肉量の減退
体がエネルギーを要求するために、筋肉のような重要組織を分解することがあります。この過程を、医学用語で異化といいます。

甲状腺機能が低下して体の新陳代謝が遅くなると、体は異化によって、筋肉を減らしてエネルギーを得ようとします。このプロセスは、筋肉痛が起こるなどの苦痛がともなうだけでなく、全身の健康状態が悪くなります。

10、脳の霧(ブレインフォグ)
まるで脳のなかに霧がかかったように、頭がぼんやりし、集中力が低下します。
この2つの自覚症状だけでは、原因を把握するのは難しいですが、これは甲状腺機能低下症の患者によくみられる症状でもあります。

以上のような、甲状腺機能の低下にみられるこれらの症状は、病気の重症度によって異なります。
多くの人は、これらの症状を最初に自覚したとき、日常的なストレスや単なる「自然老化」のせいにしてしまいます。

しかし、もしも甲状腺機能の低下を原因とする症状であったとすれば、それに対する治療法や改善法がありますので、重症化する前に、医療機関で相談や検査をするようにしてください。

(翻訳編集・鳥飼聡)