黒ごまは、何世紀にもわたってアジア料理に欠かせない食材として使われてきました。そして現在では西洋でも人気が高まり、印象的な見た目のラテから美しい焼き菓子まで、さまざまな食品に使われるようになっています。しかし黒ごまの魅力は見た目だけではありません。慢性疾患から老化の進行に至るまで、幅広い健康問題に役立つ栄養成分構成を備えています。
ごまは世界で最も価値の高い油を採るための農作物の一つであり、最大63%もの油分を含んでいます。古代メソポタミアの神話によれば、神々は地球を創造する前にごま酒を飲んでいたと言い伝えられています。中医学では、黒ごまは肝臓や腎臓を養い、肌や髪を美しく保ち、健やかに年齢を重ねるための長寿の滋養食として古くから用いられてきました。
「黒ごまは、長寿、消化、そして全体的な健康を支える、栄養価の高い伝統食品へ人々が再び目を向ける中で、ますます人気が高まっています」と、栄養療法および回復ウェルネス実践者のニコール・フリン氏はエポックタイムズに語りました。「これは、先人たちの知恵や、大地が与えてくれる癒やしの恵みと再びつながりたいという欲求の高まりを反映しています」
小さな粒に詰まった栄養の宝庫
黒ごまは、ラテやドーナツに彩りを添えるだけではありません。非常に栄養価が高く、手軽に持ち運べて、食事全体の健康価値を高める簡単な方法でもあります。
黒ごまは、たんぱく質、リグナン(植物由来の抗酸化成分)、食物繊維、一価不飽和脂肪酸、ビタミンB群、さらに銅、マグネシウム、鉄、亜鉛、カルシウムなどのミネラルを豊富に含む優れた食品です。
黒ごまと白ごまは同じ植物から採れますが、黒ごまは外皮が残されているため、より香ばしく濃厚な風味があり、栄養面でもやや優れています。白ごまは加工の過程で部分的または完全に皮を取り除かれることが多く、その際に天然成分の一部が失われます。
「皮付きのごまは、外皮が保護コーティングの役割を果たし、酸化による劣化を防いで油分を安定させるため、より有益です」とフリン氏は述べています。黒ごまは一般的に、白ごまよりも抗酸化物質をやや多く含み、加工も少ない傾向があります。
心臓の健康
黒ごまにはリグナンが含まれており、特に心臓に対する健康効果に寄与しています。
「ごまに含まれるリグナンは“セサミン”と呼ばれ、抗酸化作用を示しています」とフリン氏は語ります。「動物実験では、セサミンがコレステロール値を大幅に低下させる可能性が示唆されています」
近年のヒトを対象とした試験でも、これらの結果が裏付けられています。2024年の系統的レビューおよびメタ解析では、ごまの摂取によって、2型糖尿病患者の中性脂肪、総コレステロール、悪玉(LDL)コレステロールが有意に減少したと報告されました。また、2025年の系統的レビューでは、調査対象となった13件の研究のうち、ごまの摂取が成人の心血管疾患リスク要因の一部を減少させたと結論づけています。
黒ごまには、フィトステロール(植物ステロール)も豊富に含まれています。これはコレステロールと構造が似た植物化合物で、腸でのコレステロール吸収を抑える働きがあります。フィトステロールを多く含む食品を定期的に摂取すると、悪玉コレステロールを低下させ、心臓の健康を支えることが研究で示されています。
また、黒ごまはオメガ6脂肪酸(特にリノール酸)などの不飽和脂肪酸も豊富に含んでいます。これらは、特に植物由来で摂取した場合、悪玉コレステロールを下げる働きがあります。研究では、健康的な食事の一環として飽和脂肪酸をオメガ6脂肪酸に置き換えることで、心疾患リスクを減らせることが示されています。
丈夫な骨
黒ごまは、カルシウム、マグネシウム、リンを豊富に含んでおり、これらは丈夫な骨を維持し、骨粗しょう症を予防するために必要なミネラルです。実際、黒ごま4分の1カップ(約30g)には、牛乳1カップ以上のカルシウムが含まれており、大さじ1杯あたり約88mgのカルシウムを摂取できます。カルシウムの推奨摂取量は、ほとんどの成人で1日1,000〜1,200mgとされています。
皮付きごま大さじ1杯には約90mgのカルシウムが含まれており、丸ごとの炒りごま4分の1カップ(約30g)には牛乳1カップ以上のカルシウムが含まれています。そのため、ごまは乳製品以外では最も濃縮されたカルシウム源の一つとされています。
ただし、ごま由来のカルシウムの吸収率は中程度であり、一部の研究ではラットにおける体内で利用される割合は約65%と報告されています。吸収率が低めなのは、ごまに含まれるシュウ酸塩やフィチン酸などの栄養吸収を妨げる成分が、ミネラルの吸収を阻害するためです。種子をすりつぶす、炒る、水に浸す、発芽させるといった方法によって、栄養吸収を高め、抗栄養素を減らし、消化性を向上させることができます。
黒ごまにはさらに、銅、亜鉛、鉄といった必須微量ミネラルも含まれています。これらは骨の石灰化、コラーゲン生成、骨の再構築に必要であり、丈夫な骨を維持し、長期的な骨の健康を支える上で重要な役割を果たします。
腸内バランスを整える働き
フリン氏によると、黒ごまに含まれる食物繊維や抗炎症化合物は、腸内バランスを整え、健康的な腸の動きを促進するのに役立ちます。
黒ごまは有益な腸内細菌のエサになります。また、水溶性・不溶性の両方の食物繊維を含んでいるため、消化を助け、便秘の緩和にも役立ちます。さらに、抗酸化作用を持つリグナンは、腸内フローラ全体を幅広くサポートします。
ごまには、免疫機能を強化・維持する亜鉛、セレン、鉄も含まれています。免疫系と腸は密接に関係しており、免疫細胞の70〜80%は腸に存在しているためです。
黒ごまを食生活に取り入れる方法
黒ごまの大きな魅力の一つは、その汎用性の高さです。1日小さじ1〜2杯程度でも、さまざまな料理に栄養を加えることができます。

「黒ごまは、オートミール、ヨーグルト、サラダ、ロースト野菜に振りかけたり、ドレッシングに混ぜたり、焼き菓子に加えたり、ほうれん草とアーティチョークのディップに混ぜたりできます。また、ペースト状にして、甘い料理にも塩味の料理にも使える栄養豊富なピーナッツバター代替品として利用することもできます」とフリン氏は語っています。
また、黒ごまを使ったおいしいアジアのデザートも数多く存在します。たとえば、黒ごまスープ、プリン、湯圓(タンユエン)、ごま団子、蒸しパン、餅などがあります。

ただし、ごまはアメリカでは9番目に多い食物アレルゲンとされており、反応は軽度から重度までさまざまです。アメリカ食品医薬品局(FDA)の規制では、包装食品にごまが含まれている場合、原材料として明確に表示することが義務づけられています。ごまを含む一般的な食品には、タヒニ(ごまペースト)、フムス(ひよこ豆のペースト料理)、一部のソースやドレッシング、加工食品などがあります。
ごまは一般的に安全と考えられていますが、健康上の問題がある場合や、特に糖尿病や高血圧の薬を服用している場合は、安全に摂取するためにも、ごまを積極的に取り入れる前に医療従事者へ相談してください。
「開けゴマ」という言葉は、ごまのさやが熟すと自然にはじけて種をまき散らす性質に由来しています。これは、食の歴史において長く愛され続けてきた食材にまつわる、小さいながらも興味深い逸話です。
(翻訳編集 井田千景)
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