複数の言語を話す人の脳は、実年齢よりも何年も若い状態にある可能性があります。新たな研究によると、その差は最大で13年にも及ぶことが分かりました。
この研究結果は、2026年に開催された欧州神経科学学会連合フォーラムで発表されました。話せる言語の数が多いほど、脳はより若い状態に見えることが示されています。
今回の研究結果は、生涯にわたって複数の言語を使うことが「認知予備力(加齢や病気による脳の変化に対抗する脳の余力)」を高め、加齢に伴う脳の衰えに対する抵抗力を維持する可能性があることを示す神経科学研究の蓄積と一致していると、研究には関与していないアリゾナ大学医学部の神経学臨床教授であり、BrainSavers Inc.の最高医療責任者を務めるポール・E・ベンドハイム博士はエポックタイムズに語りました。BrainSavers Inc.は、アルツハイマー病のリスクがある健康な高齢者を対象に教育や指導を行っている企業です。
「しかし、より重要なメッセージは言語そのものを超えたところにあります。脳が最も恩恵を受けるのは、継続的で努力を伴う学習なのです」とベンドハイム博士は述べています。
言語学習が加齢する脳に与える影響
研究結果によると、「話せる言語が増えるほど脳の老化はゆっくり進む」という段階的な効果が確認されました。スペイン・サン・セバスティアンにあるバスク認知・脳・言語センターの研究者で、本研究の著者であるルシア・アモルーソ氏は声明で、「言語能力の高さや、何歳で言語を習得したかも影響しているようです」と説明しています。
2つの言語を話す人の脳は、実年齢より約6歳若く見えました。3つの言語を話す人では約7歳若く、4つの言語を流暢に話せる参加者では、脳は実年齢より約13歳若い状態であることが新たな研究で明らかになりました。
この研究は、スペイン、チリ、アルゼンチン、アイルランドの研究機関による共同研究です。対象となったのはスペイン・バスク地方に住む728人で、スペイン語、バスク語、フランス語、英語を含む1~4言語を話す人々でした。
研究チームは、活動中の脳細胞が発する微弱な磁場を測定することで脳の健康状態を評価しました。そのデータを人工知能(AI)が解析し、各年齢で一般的とされる脳活動を基準とした「脳の老化時計」を作成しました。
「多言語を使う経験には段階的な意味があります。単にバイリンガル(2言語を話す人)かどうかではなく、言語経験の深さや長さが重要なのです」とアモルーソ氏は述べています。
言語学習は特に脳を鍛える
脳に負荷をかける認知活動(考える力を使う活動)はどれも神経可塑性(脳が新しい経験に応じて変化・適応する能力)を促します。しかし、言語学習は聴覚、意味理解、運動、感情という複数のシステムを同時に働かせ、「言語コード(異なる言語)の間で絶えず切り替えたり抑制したりする必要がある」と、研究には関与していない神経科学者で、神経疾患の治療薬開発を行うバイオ医薬品企業Anavexの元社長兼CEOであるクリストファー・U・ミスリング氏は説明しています。
「要するに、努力を伴う学習そのものが重要ですが、言語学習は脳の制御機能、記憶、社会的な回路を同時に鍛えるため、特に強力な学習方法だと言えます」とミスリング氏は述べています。
また、ダンスや音楽、運動、さらには瞑想など、身体の動き、新しい刺激、人との交流を組み合わせた活動も、脳の健康維持に役立つと指摘しています。
「瞑想やマインドフルネスは注意力に関わる神経ネットワークを改善します」とミスリング氏は述べています。「一方で、筋力トレーニングや有酸素運動は血流を促進し、新しい神経細胞が作られることを高めます」
また、人生の後半になってからでも、楽器を始めたり新しいスポーツに挑戦したりすることで、シナプス(神経細胞同士の接続部)の再構築を促す効果が期待できるといいます。
「脳は成人後も生涯にわたって変化する能力を持っています。新しく挑戦的な経験で脳を刺激し始めるのに、遅すぎるということは決してありません」と同氏は述べています。
言語学習の重要性は脳の健康だけではない
今後、アモルーソ氏らの研究チームは、アルツハイマー病などの神経変性疾患(神経細胞が徐々に障害を受ける病気)の患者にも同様の効果が見られるかどうかを調べたいと考えています。また、互いによく似た言語を使い分けることは、より高度な認知的制御を必要とするため、さらに大きな効果をもたらすかどうかも検証する予定です。
研究には関与していないギリシャ国立アテネ・カポディストリア大学の教授で、神経精神薬理学(脳や神経に作用する薬を研究する学問)の博士号を持つクリスティーナ・ダラ氏は声明の中で、「今回の結果はまだ予備的なものですが、人生のあらゆる段階で言語教育を支援する重要性を裏付けるものです」とコメントしました。
「この研究は、第2、第3、第4言語を学ぶことが脳をより長く若々しく保つ助けになる可能性を示しています。そして、始めるのは早ければ早いほどよいでしょう」とダラ氏は述べています。
ベンドハイム博士は、新しいことに挑戦し、何カ月、あるいは何年にもわたって集中して取り組む活動であれば、新しい言語の習得に限らず、音楽、美術、歴史、その他の複雑な分野を学ぶことでも「認知予備力を高めることができます」と述べています。
「言語学習は特に効果が高い可能性があります。なぜなら、記憶力、注意力、実行機能(計画・判断・行動をコントロールする能力)、問題解決能力、コミュニケーション能力、社会的交流を同時に働かせ、互いに連携する複数の脳ネットワークを活性化させるからです」と同博士は述べています。
(翻訳編集 井田千景)
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