【季節のテーブル】十月の花札「鹿ともみじ」

奥山に 紅葉(モミジ)踏み分け 鳴く鹿の 声聞くときぞ 秋はかなしき

「古今集(猿丸大夫)」

【大紀元日本10月3日】一千億夜の昼の静けさを包んで、深山(みやま)を引き裂くように鹿の声が走ります。白鹿のその声は山を踏みしだく足元に、秋の気配を立ち昇らせるのです。

芭蕉の一句に「秋深し 隣はなにを する人ぞ」があります。芭蕉はこの時すでに病に伏し、死出の旅に赴きつつあったのです。芭蕉が吟じたトナリの人は、漂白する自画像のドッペルゲンガーでした。秋の奥山には、彼岸を問いかけるセンスがあるのかも知れません。

10月の花札には、「鹿ともみじ」が配されています。鹿は神の使いです。もみじ=紅葉は秋の季節の女神が纏(まと)う衣装です。秋の女神に抱かれた鹿が、紅葉狩りの宴を開始する時の声を告げ、鹿鳴の杜で仮面舞踏会が開かれます。神無月(陰暦10月)の神々は都会を去って秋の奥山に参集して、千秋の実りをもたらす謀(はかりごと)を巡らすのです。

天高く馬肥ゆる秋にコスモスが回復し、秋鮭(あきあじ)は産卵の棲家を求めて原郷へと川を遡ります。白鹿の角はそのまま枝別れして天に達するなら、咆哮する雷鳴の稲光を描き切るに違いありません。奈良公園(奈良市)では、今年も恒例の「鹿の角きり」(10月6日から3日間)が行われます。天の雷(いかずち)の怒りを鎮めて、千秋の豊作を予祝する儀礼なのです。

(洸)

関連記事
都市開発で失われた故郷の村を、母と息子が裏庭に再現。20年以上かけて築かれた小さな村は、今や訪れる人々に安らぎをもたらす癒しの空間となっている。
コレステロールは健康維持に不可欠な物質であり、摂取量よりも体内での処理と管理が重要です。炎症や肝機能、生活習慣の改善が鍵を握ります。
糖尿病の方や低糖質食実践者でも楽しめる、血糖値に優しい7種のおやつを紹介。食べ方や選び方のコツを押さえれば、おやつは我慢せず賢く楽しめます。
印刷物の読書は、スクリーン読書と異なり、脳の深い処理を促進し、記憶力や理解力、情緒や社会性の発達に良い影響を与えることが、神経科学の研究で明らかになっています。
薬を使わずに血糖値を正常化――著者であり神学校学長の劉志信博士が、ケトン食、断食、運動、そして信念の力によって糖尿病を克服した方法を語ります。