2020年5月18日、米マサチューセッツ州ケンブリッジにあるモデルナの建物の入り口に掲げられた看板。Bill Sikes/AP Photo

プレスリリースで作られる「科学」

論評

私たちは今、金融と医療産業が一体化した異例の光景を目の当たりにしている。それは、一本の報道発表(プレスリリース)という形で現れた。この発表以外に何の根拠も示されていないにもかかわらず、企業価値540億ドルの同社の株価は170%も急騰した。これは、他のどの業界にもまねのできないほど強力なマーケティング力である。

その企業とは、製薬会社モデルナである。同社はmRNA技術を専門としており、この技術は何十年にもわたり、多くの人々から「医療の未来を担うもの」と言われてきた。mRNA技術が初めて実際に使用されたのは、2020年に新型コロナワクチンが投入されたときだった。それは同時に、モデルナが初めて世に送り出した製品でもあった。

▶ 続きを読む
関連記事
米中首脳会談は中国優勢との見方を覆し、米国の圧倒的勝利と分析。OpenAIの暴走騒動や米中AI開発競争の激化、米「AI軍」創設宣言が力関係を一変させ、中国を交渉の場へ追い込んだ舞台裏に迫る
国家は永遠ではなくとも、先人から受け継いだ伝統文化や祈りを次代へ手渡す責務は残る。東西の古典や思想を手がかりに、国家崇拝や排外主義に陥らない健全な祖国愛のあり方と、私たちが果たすべき務めを静かに問い直す論考
米中首脳の公式晩餐会には米国の著名経営者が出席した一方、公表名簿に中国企業の経営者は見当たらなかった。筆者は米中対立や党の統制、経営者を取り巻くリスクから、その背景を読み解く
米中首脳会談後、双方が公表した文書には関税やAIを巡る説明に違いが残った。米側だけが記した事項もあり、台湾問題については双方とも言及していない
トランプ大統領が習近平を空港で出迎えた異例の対応。厚遇の一方、米軍基地では軍用機も並んだ。交渉の場づくりから国力の誇示、過去の歓迎への返礼まで、その狙いを五つの側面から読み解く